• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

農業の限界を突破するドローン、GPS技術

コニカミノルタとヤンマーが画像撮影に利用

農業人口の減少、生産者の高齢化、収量の増大と生産性向上など日本の農業が直面する課題は多い。これらの課題解決にはICTや先端技術の活用が欠かせない。なかでもドローンが実用化に向けて動き始めている。ドローンは監視用や測量用など幅広い用途に需要が拡大しており、農業分野でも活躍しそうだ。コニカミノルタは、センサーを使った画像分析技術をドローン活用と組み合わせた。一方、GPS技術の活用にも注目が集まっている。トラクター作業の効率化など、農機制御に導入したケースが出ている。

 2030年までに1000億円市場に成長――。日経BPクリーンテック研究所が2015年に発行した『世界ドローン総覧』では、ドローン(小型無人飛行機)の市場規模をこのように予測している。現在、ドローンを活用したビジネスがさまざまな分野で広がっている。

 ドローンの活用用途は幅広い。撮影や観測などに使われるだけでなく、災害時の監視、危険区域での作業、輸送・配達などの物流分野など、様々な場面でドローン技術を応用できる。

 建設業界では、ドローンを使ったマンション建築の不正をチェックするサービスが始まった。基礎工事や鉄筋による骨組みが完成した段階でドローンを飛ばして建築現場を撮影し、その画像から3次元モデルを作成して設計図と照らし合わせることで施工の不正がないかを確認する。

 自治体でも活用が進んでいる。茨城県ではドローンを使って産業廃棄物の不法投棄の監視を行っており、すでに成果が出ているという。また、埼玉県秩父市では、災害時に被災状況の確認や孤立集落への物資輸送をドローンを使って行う契約を企業と締結。兵庫県養父市はドローンによる医薬品の配送を目指しており、山間地などの住民の利用を想定し、国に対して規制緩和を求めていく。

コニカミノルタのセンシングとヤンマーのヘリを組み合わせた技術

 農業分野での実用化も著しい。生育調査や農薬散布、害虫調査などの分野で活躍が期待されている。稲の生育については、山形で進んでいるプロジェクトで、追肥(ついひ:作物の生育途中に追加で肥料を施すこと)のタイミングや量を測るためにドローンを活用したケースがある。コニカミノルタのセンシング技術にドローンを活用し、さらにヤンマーの農業用ヘリの技術も組み合わせた取り組みだ。

農業分野での活用が進むドローン
(写真:コニカミノルタ、ヤンマーヘリ&アグリ)
おすすめ記事

農業の未来を左右する新しい農薬づくり

農業界にも押し寄せるコスト削減の波。カギを握るジェネリック農薬に迫る!

 これは、2014年度にスタートした農林水産省の先端モデル農業の実施プロジェクトの1つ。農業界と経済界の連携により、低コスト生産技術やICT利用による効率的な農業生産を目的とするプロジェクトで、コニカミノルタ、ヤンマーヘリ&アグリ、鶴岡グリーンファーム、山形大学農学部、伊藤電子工業による「マルチスペクトラムカメラ等のセンシング技術を活用した作物の生育状況評価システムの開発」(通称=ISSA山形、イメージングシステム・フォア・スマートアグリカルチャー・フロム・ヤマガタ)も採択された。この取り組みではドローンをはじめ、センシングなど様々な先端技術を農業に活用していく。

 そもそも、コニカミノルタのセンシング技術は、稲作では事実上の標準となっている。同社が商品化している端末装置「SPAD-502Plus」は、稲の葉の色から生育状況を把握するもの。葉の色は窒素の吸収量で変化し、十分に窒素を吸収した葉は色が濃くなる。「SPAD」を使った生育状況の把握は各地で行われ、「SPAD」の計測値が窒素吸収量の標準となっているほどだ。

 その実績をベースに、ISSA山形プロジェクトでは、ドローンを使って水田の画像を撮影し、葉の色を計測することで追肥のタイミングや量、場所を特定する。肥料の散布は農業用の遠隔操縦ヘリコプターを使用することで、作業負荷の軽減を狙った。

水田の上空から稲の生育状況を撮影するドローン
(写真:コニカミノルタ、ヤンマーヘリ&アグリ)
コニカミノルタ
事業開発本部 事業推進部
第3推進グループ
星野 康 氏

 ただ、こうしたセンシング技術は、正確なデータを収集・把握することが必要だ。追肥は稲が花をつける前に行うが、水田のどの場所の生育が悪いかなどについて、実際に水田に入って調べなければならない。

 生産者はどの場所の生育が悪いかを長年の経験と勘で把握しているのが実情だ。「そうした経験と勘をデータ化し、標準化することが生産性向上と収量アップには不可欠です」とコニカミノルタ事業開発本部事業推進部第3推進グループの星野康氏は話す。ただ、実際、農業の現場では「SPAD」を使った計測でも、数カ所をサンプリングする程度。本来は、水田全体のデータを取得することで適切に対応できる。

データに必要な画像撮影にドローンが適していた

 プロジェクト初年度は、対象とした水田でスペクトラムカメラの画像による葉の色の評価と「SPAD」での評価値をもとに、独自のアルゴリズムを開発。画像データから正しい生育状況を導き出すことに成功した。

 ただ当初は、データを集める画像撮影に農業用ヘリを使った。しかし、4~5mの低高度ではローターの風で稲が倒れてしまい、葉の色が正確に撮影できない。そこで画像撮影にドローンを活用することにした。「ドローンだと、ほとんど風が起きないので葉を正確に撮影することができます。しかもドローンを使うことで飛行が安定するので、低高度だけではなく30mの高度から一括で水田を撮影でき、作業の効率アップも図ることができます」(星野氏)。

ヤンマーヘリ&アグリ
常務取締役 営業部 技術サービス部担当
長田 真陽 氏

 ドローンによる撮影で正確な画像データが収集できたことで、プロジェクトの2年目からは、追肥の精度を高め、5m幅での散布を行うとともに、ヘリコプターが1m進むごとに散布量を変えて飛行する技術も開発投入した。「プロジェクトが目指す肥料散布の精度はたいへん高かったのですが、狙ったところに狙った量の散布が可能になりました」とヤンマーヘリ&アグリの常務取締役営業部技術サービス部担当の長田真陽氏も、カギとなる精度向上に自信を見せる。

 その結果、収穫された稲の各品種でたんぱく質量、収量とも良好な値を示した。普及米の「はえぬき」の場合で1反あたり1万5000円(14.5%増)、ブランド米の「つや姫」では1反あたり3万3000円(33%増)の増収を実現した。

 最終年度となる今年度は、全国規模で実証実験を実施。「経験と勘に頼っていた追肥を“見える化”できます。この実験を通じて品質と収量アップの効果を確実にしたい」と星野氏は意欲的。その評価が固まれば、「来年度からは場所ごとに肥料の量を変えて散布する請負事業も始められるだろう」(長田常務)とビジネス化も視野に入れる。

細かい散布を可能にしたヤンマーヘリ&アグリの肥料散布装置
(写真:コニカミノルタ、ヤンマーヘリ&アグリ)

 また、現在は実証実験であるためデータを集約して評価している段階だが、コニカミノルタ事業開発本部 事業推進部 第3推進グループの速水俊一氏は、「将来は生産者がパソコンで生育状況を把握して、追肥の実施を判断できるようなサービスも提供したい」と、農業分野が直面する課題解決に向けて前進していきたいと語っている。

コニカミノルタ
事業開発本部 事業推進部
第3推進グループ マネージャー
速水 俊一 氏

 さらに速水氏は「ドローンの長時間飛行が可能になれば、撮影と肥料散布の両方を行うことができる」と指摘している。ドローン活用において稲の生育調査のほかに期待がかかっている農薬散布では、これまで産業用無人ヘリコプターが主流だったが将来はドローンがとってかわる可能性がある。

 ドローンによる農薬散布については、農林水産省が定める、「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」(農林水産省、2015年12月3日公表)にもとづき、農薬散布を行うドローンの機種の性能確認やオペレーターの技能認定などが始まっている。まずはヘリの利用が難しかった狭小地などで、小回りの利くドローン活用の期待が高まっている。

 このほか、ドローンで農場や牧草地を測量し、牧草地の草が家畜が好む牧草か雑草かを見分けたり、生産者が除草剤や農薬を散布する時期にドローンを数週間貸し出すレンタルサービスを開始したりするケースも出ている。ドローンの技術がさらに進化すれば、実用化の分野がさらに広まり、農業の生産性アップに向けたビジネスチャンスも大きく拡大するといえるだろう。