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都市型市民農園がレジャーとして拡大

手ぶらでOK!サポート付きが人気のヒミツ

「市民農園」が注目されている。市民農園とは、都市の住民たちが趣味として自家用の野菜や花を栽培する小さな農園を指す。1990年代から右肩上がりで数や面積を拡大させている。近年はより手軽に野菜作りを楽しめる「サポート付農園」が利用者ニーズを捉え、加速度的に増加。結婚式や企業研修にも利用されるなど、市民農園は新しい局面を見せている。

 市民農園は1990年前後に特定農地貸付法や市民農園整備促進法が制定されて以来、右肩上がりで農園数や面積を伸ばしてきた。その規模は、2016年3月末現在で全国に4223農園、面積にして1381ヘクタール。20年前に比べ農園数は約2.8倍、面積は約3倍にもなった。

 市民農園を運営するのは、主に地方自治体だ。しかし、自治体が運営する農園は、利用者がすべて自分の裁量で管理する必要がある。そのため手間がかかり、利用者は時間に余裕のある中高年層に偏りがちだった。農園を管理しきれないケースもあるなどの問題もあった。そうした中、近年、利用者を伸ばしているのは、農作業のサポートを受けられる農園だ。

 サポート付き農園とは、作付計画をはじめ、種苗や農具、肥料などを園主が用意し、利用者は手ぶらで来園できる農園のこと。2005年には、企業やNPO法人などでも農地を借り受けた上で開設できるようになった。サポート付き農園は、ベンチャー企業なども参入し、次々と農園を広げ利用者を集めている。

年間使用料10万円のサポート付き農園も

 その1つ、アグリメディア(東京・新宿)は12年からサポート付き貸し農園「シェア畑」の運営を開始。16年11月末現在で、東京、千葉、埼玉、神奈川を中心に60カ所に展開。約4000世帯が利用している。各農園には野菜作りのアドバイスを行うスタッフも置く体制で、年間使用料は約10万円(立地や畑の大きさによる)だ。東京でも自治体運営の市民農園は年1万円未満が太宗を占める中で高額だが、「月額1万円以下であれば新しい趣味としてライフスタイルに組み込めるサービスになり、多くの人にアピールできる事業になると考えた」(アグリメディア社長・諸藤貴志氏)という。

野菜の生育状況を見て、菜園アドバイザー(オレンジ色の制服の人物)が指導する

 同社が展開する「シェア畑」は、東京であれば1区画6平方メートル程度の畑が多い。10~15平方メートル程度という一般的な都内の市民農園のサイズより小さく、農業初心者には扱いやすいのが特徴だ。「東京の農園区画が小規模なのは事業性の関係もあるが、最初1区画13平方メートルで始めたところ、大きすぎるとの声が多かった」(諸藤氏)。週1回30分程度の作業にとどめたい利用者が多いからだった。同社農園の利用者は、近隣の住人が多く、利用者の年齢層は30代から60、70代までと幅広い。アグリメディアは16年9月、関西に初めて農園を開設。今後地方にもシェア畑を広げていく方針だ。

 実は、サポート付き農園は、企業による市民農園の開設が可能になる以前、農家によるカルチャースクールのような「農業体験農園」がはしりだ。これは、農園を利用者に貸し付けるのではなく、農家が定期的に講習会を開いて利用者を指導し、自身の農園で農業体験を行ってもらうもの。1996年に初めて東京・練馬区に「緑と農の体験塾」が開園して以来、都内を中心に体験農園数は伸び、15年3月現在で都内に103の農園がある。体験農園の利用料金(入園料と収穫物の代金という形で支払う)は年間で数万円のところが多い。やはり自治体運営の市民農園より高いものの、手ぶらで来園できる手軽さと農業のプロが教える野菜作りに満足感を覚える利用者が多いようだ。

座学の時間の一方で、畑でも指導が行われる

法の後押しで体験農園の普及促進に乗り出すJA

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 こうした中、耕作放棄地解消に加え、農業者の所得増大や新規就農者育成、食農教育などもにらみ、農業協同組合(JAグループ)では、体験農園の普及促進に力を入れ始めた。組合員である農家の体験農園開設・運営のための情報提供などの支援を行うほか、高齢化によって農園の運営ができない場合は、JAが主体となり農園の運営を行うという。特に、JA東京グループでは、島しょ部を除く都下14JAすべてで開園に向けた検討を開始した他、民間企業が進出していない岐阜市などの地方都市でも、地元JAが開園を進めているなど、首都圏以外でも体験農園への期待が広がっている。

 15年には都市農業振興基本法が制定。昨年はこれに基づく都市農業振興基本計画が閣議決定され、都市農地を宅地化すべきものから、農地として活用すべきという方向性が政府によって明確に打ち出された。そのため、地方自治体も都市部の農業振興に力を入れ始めた。アグリメディアにも「この1年ほど、週に1、2件新しい自治体からの相談がある」(諸藤氏)という。同社は16年4月には神奈川県伊勢原市と組んで、バーベキュー施設のある貸し農園を展開し人気を集めるなど、シェア畑にとどまらない新しい展開も見せている。

結婚式や企業研修を行う農園も

 新しい形の市民農園としてユニークなのは、子供向け職業体験施設「キッザニア」を運営するKCJグループ(東京・中央)が、11年9月に千葉県柏市にオープンした「オークビレッジ柏の葉」だ。約6000平方メートルのサポート付貸し農園を抱える同施設は、12年春に披露宴にも対応できるレストランなどの付帯施設を開設。ここで結婚式を挙げるカップルは、披露宴で自分が育てた野菜を使った料理を来賓に出せる。

 「式の打ち合わせのタイミングで農作業をしてもらい、3カ月ほどで5、6種程度の野菜を育てる。利用者には、会社を辞め新規就農を考えている方もいた」(KCJグループ、オークビレッジ柏の葉農園部部長・奥村邦彦氏)。披露宴ではシェフがメニューを説明する際、料理に使われた野菜は新郎新婦が育てたと紹介するため、列席者へのサプライズ演出になる。現在30代前後を中心に、年間約50組が同施設で式を挙げるという。

新郎新婦が収穫した野菜を、披露宴の料理に使うといったしかけも

 さらにオークビレッジ柏の葉の貸し農園は、子供の農業体験プログラムや企業の福利厚生、研修にも利用されている。「新人研修などでは、オフィスを出て共同作業を体験することで、コミュニケーション能力を高める効果がある」(奥村氏)。同農園には法人利用のための区画があり、現在バンダイなど10社が年間契約で利用しているという。

 「05年から12年の7年間にホームセンターの苗や種の売り上げは2倍に増えた。何らかの形でプランターや庭先で家庭菜園を手がけている人は、2000万人ほどいると考えられる」とアグリメディア社長・諸藤貴志氏は指摘する。より本格的な農作業を体験できる市民農園の潜在ニーズは極めて大きいというわけだ。サポート付き貸し農園の広がりをきっかけに、市民農園はさらにさまざまな形で全国に広がりそうだ。