廃棄される野菜から生まれた「着る野菜Tシャツ」

専門商社の豊島が農業女子と連携

廃棄される野菜を扱うことの難しさ、見えてきた課題

豊島・営業企画室広報の加藤美月氏

 しかし、クラウドファンディングでは目標額には届かなかった。豊島としては企業のユニフォームなどのコマーシャルな展開に力を入れていきたいが、実際は10枚〜20枚程度の小口のニーズが多く、まとまった量を求めるニーズはまだアプローチができていない。

 加工するうえでの課題もある。廃棄される野菜は豊作の年や旬の時期は大量に出るが、季節によってはまったく出ないなど、供給にバラつきが出てしまう。また、ニンジンなどの地中に埋まっている野菜は、野菜に付いた土が染料の抽出の妨げになるため、きれいに洗浄するなどの手間がかかるものも多い。長期保存も難しく、乾燥や冷凍などの加工が必要になり、そのための流通、保管などの仕組みづくりや新たな投資も必要になる。これらは「FOOD TEXTILE」の課題と重なっている部分もある。

 平沢さんも、野菜を扱うことの難しさをこう語る。

 「FOOD TEXTILEでも、やってみて分かったことがたくさんあります。野菜なら何でも染料にできるわけではなく、水分の多いトマトなどは色が出にくいため、残渣が大量に出ても使えないものもあります。一方で紫キャベツなどは、一つの野菜から多彩な色を抽出できます。また、野菜よりも乾燥させることができるハーブ、コーヒー、茶葉などは、長期保存が可能で、安定供給しやすいことも分かりました」

 さらに、「FOOD TEXTILE」「着る野菜Tシャツ」に使われている高度な技術を扱える職人が不足しているという問題もある。たとえ需要があったとしても、新たな野菜を用いて安定的に商品を展開できるようになるまでには大変な時間と労力がかかるため、新しい商品やプロジェクトを立ち上げることは簡単ではない。

地域活性のために「FOOD TEXTILE」の技術を活用

 現在「FOOD TEXTILE」では、これまでの実績や課題などを踏まえた結果として、オリジナルのカタログを製作。通年で展開するレギュラー製品のラインナップを絞り込み、安定的に製品を展開する土台が完成しつつある。今後は、これらの商品を広めていくことを目指している。「着る野菜Tシャツ」も企業や農業者などへのニーズがあるところへのダイレクトなアプローチを広げたり、コースターなどの購入しやすい価格の商品を検討したりするなど、事業として継続させていくための展開を模索中だ。

 最近では、地域活性化のために「FOOD TEXTILE」の技術を使いたいという声が挙がってきているという状況もある。それぞれの地域の特産品の野菜を使い、Tシャツやタオルなどをつくって、お土産として展開するなどのニーズは確実にありそうだ。実際に、兵庫県朝来市のバッグメーカーが中心となり、地元の茶園から出るほうじ茶の残渣を使った生地で、トートバックを製作し、地元のお土産品として採用されたという実績も生まれている。

 豊島が取り組んできた「FOOD TEXTILE」、農業女子とコラボレーションした「着る野菜Tシャツ」などのプロジェクトで活用できる野菜は、廃棄される野菜の全体に比べると微々たるものだ。しかし、フードロスの問題について、今までアプローチできていなかった層への気づきを促す、一つのきっかけになり得ると言えそうだ。培ってきた仕組みやノウハウを活かし、地域活性化の動きと連携することで、こうした動きをさらに大きなうねりにすることもできるのではないだろうか。

「着る野菜Tシャツ」を手にする豊島の担当者たち