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年間27億円の売り上げで地域を潤す!

大型直売所の先駆け「めっけもん広場」

和歌山県紀の川市にある「めっけもん広場」は、年間約27億円の売り上げを誇る巨大直売所だ。その成功は話題を集め、大型直売所ブームの先駆けとなった。今も他の地域のJAから視察や研修と、引っ張りだこだ。運営するJA紀の里では、直売事業を農産物販売のコア事業としてだけでなく、農業振興や地域活性化の中心としても位置づけ、様々な施策を展開している。

開店前の店内には、出荷者によって野菜や果物が山のように詰まれる(写真=水野浩志)

 「ファーマーズマーケット」という言葉をご存じだろうか。生産者が自ら作った農産物を、市場を通さずに直接販売する施設のことだ。一般には農産物直売所などと呼ばれる。このうち、各地の農業協同組合(JA)が運営しているものが「JAファーマーズマーケット」だ。その数は全国で約1700カ所。ここ数年、各地で大型の直売所がオープンし注目を集めている。これらの大型直売所には、近隣だけでなく県境を越えて広い地域から購買客が訪れる。地域の観光スポットとして集客の目玉となっているところも多い。

 そんな大型直売所の先駆けとも言える存在が、和歌山県北部、紀の川市にある「めっけもん広場」だ。紀の川市と岩出市を中心とする県北の大型地域農協「JA紀の里」※1が運営している。

 これまでJAは市場を通じて大量・安定に農産物を供給することが求められてきたが、高齢化等により少量多品目の生産を行う農家が増える中で、多様化した消費者ニーズに対応することができる直売事業は、JAにとっても重要なビジネスモデルとして成長を続けてきた。農業における効率化の議論は、農地を大規模化してスケールメリットを創出することばかりに注目されがちだが、一見すると効率が悪い小規模な農家でも生産力を結集することで地域農業全体の生産性は向上する。大型直売所の成功事例から、そんな新たな農業の一面を追ってみた。

月曜日だったにもかかわらず賑わいを見せる。駐車場は満杯だ(写真=水野浩志)

※1:JA紀の里は、和歌山県北部農業地帯の中央に位置する紀の川市、岩出市などを管轄する地域JA。1992年10月に那賀郡内の5つのJAが合併し、2008年4月にJA岩出が加わってできた。管区内は桃や柿の生産で知られ、和歌山県内でも農業人口比率が高い。組合員は18985人、職員は351人で本所と6支所4事業所からなる

10年連続で25億円以上の売り上げを維持

 めっけもん広場の年間売り上げは約27億円(平成27年度)と、直売所としては異例の規模を誇る。広場に足を運ぶ来店客数も年間約78万人。名実ともに日本トップクラスの直売所だ。

 オープンしたのは今から16年前、2000年11月のこと。当時は大型直売所などほとんどない状況だった※2。反対の声も多く、ようやく開設にこぎつけたときも「5年で6億円」を目指すという控えめな計画を立てていた。ところが、蓋を開けると驚くほどの人気を呼んだ。2001年の売り上げはいきなり約14億円と、開設前の予想をはるかに上回った。それ以降、14年連続で20億円以上、この10年間は毎年25億円以上の売り上げを記録し続けている。

 この成功に続けと、2011年4月には大阪府岸和田市に「愛彩ランド」(JAいずみの)、2013年4月には奈良県橿原市に「まほろばキッチン」(JAならけん)など、近隣にも大型直売所が鳴り物入りで出店した。その秘訣を学ぼうと、全国の地域JAから視察・研修に訪れる人は後を絶たない。JAグループは、めっけもん広場のような“ロールモデル”のノウハウを組織内で共有し、各地の実情に合わせてさらなるレベルアップを図っているのだ。

めっけもん広場は10年連続で売り上げ25億円以上をキープ
めっけもん広場の売り上げと来店客数の推移。2015年度(2015年4月~2016年3月)の売上高は26億9668万5000円。同年度の来客総数は77万7592人だ
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※2:「めっけもん広場」がオープンした当初、日本で知られていた大型直売所はJAいわて花巻の「母ちゃんハウスだぁすこ」。JA紀の里自身も広場を開設するにあたり研修に行ったのがこの直売所だ。今も姉妹提携をして緊密な関係にある

人気の秘密は「圧倒的なボリューム感」

 「めっけもん広場」の売り場面積は968.2㎡。オープン当初は直売所とは思えない大きな売り場が注目されたものの、1200㎡を超える超大型店が出現した今では突出して大きいとは言えない。また、近畿南部は「農産物直売所の戦国時代」と言われるほど競合店がひしめいている地域。取り巻く状況は決して甘いものではない。それでもなお、めっけもん広場が日本のトップクラスを維持し続けていられるのはなぜか。

冬の果物の主役、みかんの箱を手にする岡田芳和店長(写真=水野浩志)

 めっけもん広場の5代目店長を務める岡田芳和さんは、その理由をこう語る。「オープンして、しばらくは一人勝ちだったと思います。しかし、周りに競合店ができてからは、その影響は否めません。それでもなお、売れ続ける理由は、圧倒的なボリューム感と豊富な品ぞろえでしょう。例えば果物なら、夏は桃、秋は柿、冬はみかんと、四季を通じて強いものがあります。その時期になると文字通り圧倒的なボリューム感が出せます。野菜については、地域性がない半面、なんでもあります。品ぞろえに価値があるのだと思います」

“のれん”ができつつある

 めっけもん広場の売り場を見ると、都会で流行っているような「オシャレなマルシェ」とは決して言えない。あちらこちらに段ボールの裏に野菜の名前と価格が書かれており、天井には手作りの看板がぶら下がる。野菜や果物の横に置かれた料理のレシピの書き方もバラバラだ。しかし、どこか熱気と勢いが漂う。取材当日も月曜日だというのに、朝9時の開店前に来客がずらりと並ぶ。トビラが開くと同時に店になだれ込んで来る様は壮観だ。店の手作りの演出と客の熱気が相まって、“祭り感”が醸し出されている。

9時の開店と同時に行列客が吸い込まれていく(写真=水野浩志)

 岡田店長に聞くと、「段ボールや看板にしてもあえて狙っているわけではありません。でも、そこがいいと言われることはあります。農協職員が対面で売るところも強みです。職員は家で田んぼや畑をやっている人がほとんど。“農家がやっている店”という感覚ですね。それに、16年間やってきて、ある意味“のれん”ができてきているのかなと思っています」と、めっけもん広場の強さを分析してくれた。

 店の入り口近くには、「信頼のブランド紀の里」と書かれた段ボール入りのみかんと柿があふれんばかりに詰まれている。「これらはJA紀の里の選果場で選り抜いたもの。糖度や形などがある水準を確実に超え、『JA紀の里の顔』と言える商品です。また、選果場を通っていないものも、出荷者自らが箱詰めし、自信を持って出しています。だからどれを選んでもらっても、とびきり甘くておいしいんです」と岡田店長は胸を張る。

 言ってみれば、果物や野菜をよく知る農家が、豊富な品ぞろえと圧倒的なボリュームを武器に、毎日特売のような祭り感覚で売る大型の八百屋さん。それがめっけもん広場だ。置かれた商品の中にはJA紀の里の顔とも言える“お墨付き”のものもあれば、手練れの農家が作るとびきり旨い“めっけもん”もある。広場が長年、直売所の雄として君臨している理由はこういった店づくりにもあるではないだろうか。

段ボール紙に、商品名や値段、「本日のめっけもん」などと書かれたものが至る所に見られる。天井からも手作りの看板がぶら下がる(写真=水野浩志)