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オールジャパンで農産物・食品の輸出1兆円を目指す

農林中金とJA全農が全面支援した「香港フード・エキスポ2017」

この8月17~19日の3日間、香港でアジア最大級の食の祭典「香港フード・エキスポ2017」が開催された。「香港フード・エキスポ」は、約50万人もの集客を誇る一大イベントだ。香港市民が多数参加するだけでなく、2万人を超えるバイヤーが“めしの種”を求めて会場に足を運ぶフード・ビジネスの最前線でもある。香港への輸出を考える日本の農業関係者にとっては、消費者に直接アプローチできる機会であり、販売先や提携先などを見つける交渉の場にもなっている。ここでは農林中央金庫(農林中金)と全国農業協同組合連合会(JA全農)がタッグを組み、出展した生産者や事業者を全面的にサポート。実際に輸出につながる取り組みを進めている。

8月17~19日の3日間、香港で開催されたアジア最大級の食の祭典「香港フード・エキスポ2017」。写真はジャパンパビリオンの中でもひときわ注目されたJAグループ関連の出展ブース(写真:佐藤久)

 実は、香港という地域は、日本の農産物・食品の輸出先としては世界の中で最重要と言ってもいい。アジア圏への輸出を考える際のテストマーケティングの地としてはもちろんのこと、深圳や広州に直結する高速鉄道の開通が近い点を考えると中国本土への輸出の窓口として巨大な可能性を秘めているからだ。

 さらに、香港への輸出額そのものが純粋に大きい。その面積は1104平方メートルと東京都のほぼ半分ほどしかないため意外に思うかもしれないが、農林水産省のデータを見ると、香港への日本の農産物・食品の輸出額は国・地域別順位で他を圧倒してダントツの1位なのだ。直近の平成28(2016)年では1853億円にも上り、輸出総額7502億円のうちの実に24.7%を占める。日本からの輸出総額のほぼ4分の1が香港への輸出になる計算だ。931億円(12.4%)の台湾と899億円(12.0%)の中国の約2倍にもなり、2位以下を大きく引き離している。

平成28(2016)年の日本の農産物・食品の輸出額の地域別のデータ。これを見ると香港への輸出額がひときわ大きいことがわかる。(農林水産省 食糧産業局輸出促進課『日本からの食品・農林水産物輸出の状況および香港の位置づけ』より引用)

輸出に直結する香港フード・エキスポ

 この香港の地で開かれる「フード・エキスポ」は、日本の農業関係者にとって輸出の糸口をつかむための大きなチャンスとなっている。自分たちの農産物や商品に対する現地のバイヤーや消費者の反応を確かめることができる上に、うまくいけばその場で契約に至る可能性があるからだ。

 日本政府や日本貿易振興機構(JETRO)などの公的機関も強力なバックアップ体制で事業者をアシストする。農林水産省では「農林水産業の輸出力の強化」を大きな目標に掲げ※1、農林水産物・食品の輸出額を2016年の7502億円から2019年には1兆円の大台に乗せることを目指している。農水省が描くグランドデザインの中で、関係機関が様々な商談会や見本市への出展を支援している仕組みだ。香港フード・エキスポでも、JETROが窓口となり「ジャパンパビリオン」を展開する。今年も会場の中でひときわ目立つ存在となっていた。

農林水産省では、日本の農林水産物・食品の輸出額を2019年に1兆円にまで引き上げることを目指している。2017年1~5月までの実績は3085億円で対前年同期比5.8%増。このまま推移すると2016年が7502億円なので2017年は7937億円。8000億円台に乗る可能性もある(農林水産省 食糧産業局輸出促進課『日本からの食品・農林水産物輸出の状況および香港の位置づけ』より引用)
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※1『平成29年度農林水産予算概算決定の概要』によれば、農林水産省では「農林水産業の輸出力の強化」のために平成29年度(2017年度)には約47億円の予算を付け、平成31年には農林水産物・食品の輸出額を1兆円の大台に乗せることを目指している。この中で日本貿易振興機構(JETRO)が中心となって進める「輸出総合サポートプロジェクト事業」には約16億円と最大の予算が投入される。

 ジャパンパビリオンの中で、特に来場者から熱い視線を集めていたのがJAグループが全面的にサポートする一画だ。毎年JAグループでは、農林中央金庫(以下、農林中金)と全国農業協同組合連合会(以下、JA全農)が中心となって、香港への輸出や商談を考える生産者・事業者の出展を全面的に支援している。生産者・事業者は日頃のJAグループとの付き合いの中でこうしたエキスポの存在を知り、農林中金やJA全農のサポートを受けながら出展を決める。こういった生産者・事業者の出展意図は大きく次の3つに分かれる。

(1)海外での販路拡大を強くイメージし、その場での契約・販売まで目指す
(2)現地での反応を見るために、テストマーケティング的に出展する
(3)既に一定量の輸出をしていて、さらに別の展開を目指す

 ここからは、今回のエキスポにこの3つの意図を持って出展した生産者・事業者の例を具体的に見ていこう。

「世界一」の赤身肉で勝負する

 沖縄の離島、伊江島に本社を構える「農業生産法人 株式会社伊江牛」は、1つ目の海外販路の拡大に積極的に打って出ようとする生産者だ。

 沖縄本島の北西、沖縄美ら海水族館から北西に向かって9キロ離れたところに浮かぶ伊江島は、もともと優良子牛の生産・出荷が盛んな土地としてその名を馳せる。国内で有名な他の地域の黒毛和牛も元をたどれば伊江島の子牛だったというパターンは少なくない。この伊江島では子牛の成育に加えて成牛の肥育にも力を入れ始めている。

「世界一の肉を作り、世界に出る」という目標を語る株式会社伊江牛の沖縄本島飲食店舗統括の大牟禮正文氏(写真:佐藤久)

 株式会社伊江牛では、香港に出荷されている和牛に霜降り肉が多いということを調査した上で、逆張りの赤身の肉で勝負に出ようと出展を決めた。同社 沖縄本島飲食店舗統括の大牟禮正文氏は「自分たちが生産している肉なら太刀打ちできると思って出展を決めました」ときっぱりと語る。

 大牟禮氏は「霜降り肉が旨いと思われているかもしれませんが、赤身の肉で勝負したいと思っています。特に私たちは経産牛の肥育方法を工夫して世界一の肉を作り、世界に出ようという目標があります。その手始めに香港に出ようということになりました」と同社独自の戦略を披瀝してくれた。

 実際に、同社ではJAグループ関連のブース以外にも、一般消費者に試食と販売をするブースを別立てで構えた。「今回のエキスポでは持ってきた肉を全て売り切り、まずは一般消費者にアプローチしたい」と大牟禮氏は強い意欲を見せた。

市場拡大を狙った米の麺で反応を見たい

 米の市場を広げようと自ら開発した米麺製品「周ちゃんのおこめん」(以下、おこめん)を現地に持ち込み、香港での反応を見るために今回初出展した事業者が愛媛県のJA周桑(しゅうそう)だ。JA周桑は、西条市に市町村合併された旧東予市、旧周桑郡丹原町、同小松町を区域とする農業協同組合(単位JA)。周桑平野は四国の名峰石鎚山の麓に広がる水田地帯で、主にヒノヒカリを生産する、愛媛県でも有数の米どころだ。

 今回ブースで陣頭指揮を執り「おこめん」をアピールしていたのが、JA周桑 審議役 生活部長の竹田博之氏。「おこめん」には開発当初から参画し、現在では営業・販売を担当する。JA周桑が今回香港エキスポへの出展を決めたのは、米の販路を広げたいという思いからだと言う。

 「かつて農家は米1俵で約2万円の収入になりましたが、現在はそれが半額になっています。米の生産者にもっと所得を上げてもらいたいと考えて6次産業化に取り組んだのがこの製品です。海外の反応を肌で感じて地元に帰り、組合長や生産者の方々に伝えたい」と竹田氏は期待を込めて語ってくれた。

左は「周ちゃんのおこめん」の平麺と細麺。右はJA周桑 審議役 生活部長の竹田博之氏(写真:佐藤久)