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偶然見つけたりんごが高品質ブランドに

生産者とJA相馬村の連携が生んだ「飛馬ふじ」

特産品を抱える地域にとって目玉となるブランドがあるか否かは、天と地ほどの違いがある。魅力的なブランドがあれば、それが地域と特産品の名前を全国に知らしめる。当然、他の商品にも波及してビジネスの好循環にもつながる。日本一のりんご生産量で知られる青森県弘前市の中で、特にりんごの名産地を管内に抱えるJA相馬村は、こうしたブランド化に成功し、地域のりんごビジネスの拡大に貢献する典型的な事例だ。生産者と農協が一体となって、味と見栄えを高いレベルで両立させた「飛馬ふじ」を産み出した。現在はこのブランドを40億円近くになるJA相馬村のりんご販売の中核に据える。その裏には農協が、大手スーパーや小売と直接交渉し、りんごの売り場を拡大することで培ってきた生産者との深い信頼関係がある。

青森県弘前市にある田沢農園(園主 田澤俊明さん)のりんご畑。赤、黄色の様々なりんごが実を付けている(写真:佐藤久)

 青森県弘前市は、言わずと知れたりんごの生産地である。

 農林水産省が今年5月に公表した統計データ(作況調査)によると、平成28年(2016年)の日本のりんご生産量は合計で76万5000トン。そのうちの約6割、44万7800トンが青森県産だ。そして、青森県の中でも弘前市の生産量は群を抜いている。市町村別の生産量は公表されていないが、国内産りんごの約2割が弘前生まれだと言われている※1。もちろん、市町村別の生産量では他を圧倒してダントツの1位なのだ。

 この弘前市に、りんご生産と高品質りんごのブランド化で全国に名を馳せる農業協同組合(以下、農協と略)がある。それが「相馬村農業協同組合」という組合員数877人のごく小規模な農協だ※2。2006年の市町村合併で弘前市になった旧・中津軽郡相馬村地域を管内としている農協で、一般には「JA相馬村」と呼ばれている。特産はもちろんりんご。JA相馬村が共同販売する農産物の販売額を見ると、平成27年度が全体で38億9119万円、そのうちりんごが38億3304万円と実に98.5%を占めている。つまりJA相馬村は農産物に関しては全国でも類を見ないりんごに特化した農協なのだ。その管内もまた、りんご生産にほぼ特化した地域だと言える。農協も生産地も言わば、“りんごのスペシャリスト”だ。

※1農林水産省では、市町村別のりんご生産量は平成18年(2006年)までしか公表していない。その時のデータでは1位の弘前市が17万6600トンと、2位で3万9143トンの長野市、3位で3万6900トンの青森市など、他の市町村に圧倒的な差を付けている。ちなみに、当時のベスト10のうち、長野市を除く9つが青森県の市町村だ。

※2組合員の数から見ると、JA相馬村の規模は青森県に10ある農協の中でもひときわ小さい。他の農協を見ると、「JA津軽みらい」が17877人、「JAつがる弘前」が12726人とはるかに規模が大きく、他の小さな農協でも2000人以上の組合員を抱えている。

「飛馬ふじ」。糖度は14度以上と高く、色づきや見た目も優れた高級りんごで、贈答用などに使われる(写真:JA相馬村提供)

産地の名をさらに浸透させた「飛馬ふじ」

 この地域は古くからりんごの名産地として知られているが、JA相馬村の名をさらに広く世に浸透させたのが「飛馬ふじ」という、高品質のブランドりんごの存在だ。

 「飛馬ふじ」は、平成21年(2009年)のデビュー以来、贈答用の高級りんごとして人気を博している。品種としては一般的な「サンふじ」と同じだが、生産者とJA相馬村とが協力しながら栽培方法を工夫し、改良を重ねてきた。その中でも特に糖度が高く、高品質なのが「飛馬ふじ」となる。等級の高いものの市場価格は1玉600円を超える。通常の「サンふじ」に比べるとはるかに高価格で、なかなか手に入らない高級りんごなのだ。

 JA相馬村では生産者と一体となってこの「飛馬ふじ」のブランドを立ち上げ、これを核として相馬地区のりんご生産と販売事業を振興してきた。JA相馬村では全国の大手スーパーに対して直接営業をすることで地区のりんごの販売拡大に取り組んでいるが、この時に「飛馬ふじが販売の目玉になる」とJA相馬村 販売部の三上悟行部長は語る。「飛馬ふじ」というブランドがあることで、様々な品種も、りんごジュースを始めとする加工品も売りやすくなるのだ。

JA相馬村 販売部の三上悟行部長。「飛馬ふじ」は地域のりんごビジネスの目玉だと語る(写真:佐藤久)

 「飛馬ふじ」は、生産者とJA相馬村が抱き続けてきた「旨くて高く売れるブランドりんごを作る」という思いと、地域の生産者が長年積み上げてきた高い栽培技術が組み合わさって、初めて生まれたものだ。