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目指すは「農業のMBA」。日本農業経営大学校の挑戦

日本農業経営大学校 堀口健治 校長

実習と講義を組み合わせる

農業を学ぶには、農地で実際に作物を育てる経験も大事ですよね。

堀口 当校で重視しているのが、学外での実習です。1年生は4カ月間、先進的な農家などで農業を実地で体験します。

農業実習の様子(写真:日本農業経営大学校)

 また2年生は3カ月間、一般企業でインターン生として企業の現場を経験します。これらの実習先は、自分で探して「こちらで実習を受けたいのですが」と交渉してくるのです。もちろん相手先から了解が得られましたら、学校と直接契約を結びます。

企業実習の様子(写真:日本農業経営大学校)

 特別講義もポイントの1つで、農業だけでなく産業界の第一線で活躍している方を講師として招き、実践的な内容の講義を提供しています。以前、大手流通企業のバイヤーを講師としてお願いしたのですが、こちらの特別講義では学生たちに小売店における農作物の売り場を複数見学させて、消費者の視点から評価するという事前の課題が出ていました。

 売り場を横断的に観察していくと、消費者が生産者に求めているポイントが多角的に浮かび上がってくる。将来農業を経営しようという学生たちにとって、貴重な経験になるはずです。

資金面でのハードルを低く

学生の立場からすると、民間の学校ですから授業料が気になるところです。学生は、学費をどのように工面しているのでしょうか。

堀口 2年間で必要な学費等は、寮費を含めて320万円です。一方で当校は農林水産省による青年就農給付金制度の対象となっており、学生の大半がこの給付金に応募し、給付を受けています。青年就農給付金制度では2年間で300万円が本人に給付されます。つまり給付されたらそれで支払い、不足する20万円を本人が用意すれば済む計算になります。卒業後に一定期間、独立・自営型の就農、または雇用就農することが給付の条件になっているのですが、当校の生徒は卒業後に就農しますので給付金を返済する必要はありません。

 ちなみに、この青年就農給付金制度はもともとフランスの制度を参考にしています。これでフランスの農家は若返りが進んでいます。

 当校ではこれとは別に特待生制度も設けています。農業法人代表者・役員の子弟や幹部候補者、認定農業者の子弟を対象に、授業料と寮費相当額に当たる1年間160万円、2年間で320万円の給付型奨学金を支給するというものです。こちらは農業法人の経営者である親が調べて子供に紹介するというケースが多い。話を聞いてみると親側の農業に対する問題意識が高くて、「将来経営を継ぐ子供に、きちんと学ばせたい」という思いがあるようです。

近年農業改革が叫ばれ、農業界の各所で変化の兆しが見られます。

堀口 農業では最近IT(情報技術)の応用が進んできていて、これまでは難しかった工程管理が可能になりつつあります。また、圃場(ほじょう)ごとの肥料や農薬の投入状況をデータとして取得し、消費者が求める農作物のトレーサビリティ(追跡管理)が簡単に実現できるようになってきました。本当に日進月歩で変わりつつあるのが、今の農業です。

 農業界全体で頑張らなきゃいけないし、個々の農家や農業法人も新しい取り組みをしていかなきゃいけない、そのような時代に突入しています。だからこそ、当校は経営が分かる人材を輩出することで日本の農業に貢献したいと思っています。

これまで1期生、2期生が卒業しました。この3月には3期生が卒業します。卒業生の進路は。

堀口 卒業生は1期生・2期生合計で32人いまして、主に農家出身者は親元に就農して引き継ぐか、共同経営するという道に進んでいます。非農家出身者は最初から独立就農をするか、あるいは農業法人に就職しています。

(写真:日本農業経営大学校)

 ある卒業生は鳥取県の農業法人に就職したのですが、就職先で早速、当校での卒業研究が役立ちそうです。その卒業生の研究テーマは農業法人における人事労務管理だったのですが、就職先の法人で本格的な労務管理を実施することが必要だと分かり、労務の仕組みを最適化する仕事にも携わっていると聞いています。

 独立就農した卒業生は、新しい農地で思うように収穫できなかったり、資金繰りが難しかったりと苦労しているようです。ですが、農業への熱い思いが地元の人たちに受け入れられて、協力を得ながら頑張っているようです。

今後の学校のビジョンは。

堀口 基本的な教育体系のあり方は固まったと見ています。直近のテーマは、カリキュラムの検証と改良を進めつつ、いかに農業MBAとしての当校の認識を世間に広めていくかです。

 当校の卒業生が地域農業のリーダーとして根付き、活躍する姿を見せていけば、次第に当校への認識が更に広まるだろうと期待しています。

農業のMBAを掲げて開校した農業経営大学校。
未来を託された若者たちの奮闘、そして夢とは!?