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これは意外! オムライスで大成功の村おこし

特産のトマトを使い、活気づく高知県日高村

「オムライス街道プロジェクト」という村おこし企画で成功し、全国の地方自治体から注目を集めているのが高知県・日高村だ。県中央部、高知市から車で30分ほどのところに位置する人口5000人ほどの小さな村が、プロジェクトをスタートさせたのは2014年4月のこと。特産のトマトを使ったオムライスを、村を貫く国道沿いの飲食店で供するようにしたのだ。「オムライス街道」の名は口コミやメディアの紹介で瞬く間に広がり、今では、休日ともなれば遠く離れた地域からも人が押し寄せる。村特産のシュガートマトのブランド名も広がり、村は活気づいている。農林水産省の第4回「ディスカバー農山漁村の宝」の優良事例にも選ばれ、気勢はさらに上がりそうだ。企画の発案者であり、村おこしの先頭に立つ戸梶眞幸村長と、村役場で実務を引き受ける山本奈央さんにプロジェクトのこれまでの経緯と今後の取り組みについて聞いた。

オムライス街道で知られる高知県日高村「村の駅ひだか」の中にあるレストラン「ムラカフェひだか」で提供されているオムライス。取材当日は平日だったが、昼時は待ち行列ができるほどの盛況ぶり(写真:佐藤久)

「日高村オムライス街道」という企画が実現した背景について、そもそもの発案者である村長のお考えを教えてください。

オムライス街道プロジェクトの発案者でもある戸梶眞幸村長。日高村出身の64歳。日高村役場で34年働いたのちに、2008年の選挙で当選し、村長に就任。以来2012年、2016年と3選。(写真:日高村役場)

戸梶 日高村は県都の高知市からわずか16kmの距離にありながら、知名度も低く定住人口が増えないという悩みを抱えていました。定住人口を増やすためにはまず交流人口を増やすところから始める必要があります。このときに食が大事なポイントになります。食を核に据えた企画がうまく当たれば、香川の讃岐うどんのように、その食を求めて多くの方が来てくれるようになります。もともと、食による観光ができないものか、日高村特産のシュガートマトで何かできないだろうかと考えていました。ある時、村の飲食店でオムライスを食べている時に、「トマトといえばケチャップ」「ケチャップといえばケチャップライス」「ケチャップライスといえばオムライス」と発想が出てきたんですね。村内の飲食店は何店舗かあるし、その店舗は村を貫く国道33号線沿いにある。これを「オムライス街道」としてつないで取り組んでいけば村の活性化になるのではないかと考えたわけです。うまく行けば、村を知ってもらえるし、村特産のシュガートマトの知名度を上げられる。村内にある商店も人口減少で元気がなくなっていたので応援することができます。結局のところ村の活性化には、地域経済の循環、つまり、地元でお金が回る仕組みづくりが必要と考えました。

もともと、オムライスがお好きだったとか。

戸梶 田舎で生まれ育った64歳の私には、小さい頃に親に連れられて行った高知市内の大丸のデパートのレストランで食べたホットケーキとオムライスの味は、まさに洗練された都会の味でした。こんなうまいものがあるんだ、と。大きなカルチャーショックを受けました。それ以来、オムライスは、食べ続けている大好きな食べ物なんです。

オムライス街道プロジェクトは今年で4年目を迎え、農林水産省の第4回「ディスカバー農山漁村の宝」の優良事例にも選ばれました。この成功についてはどうお考えですか? また、ここまでの成功の秘訣は何でしょうか?

戸梶 まず「ディスカバー農山漁村の宝」に選ばれたことについては、大変ありがたいことで感謝に堪えません。最近では、観光客から「意外と高知市から近い」「トマトが美味しいですね」と言ってもらえるようになりました。何より嬉しいことに村全体に活気が出てきました。プロジェクトの成功については、参加してくれた飲食店のオムライスの味やサービスへの努力はもちろんのことですが、関係者が役割分担をしてしっかりと頑張ったということ。さらに、企画に賛同していただいたすべての方の情報発信力が大きく貢献したと考えています。インターネットを利用した映像企画では、村の子どもたちも参加することで、単なる食のジャンルを超えた食文化のプロジェクトとして情報発信していくことができました。こうしたことが、3年間右肩上がりを維持し、プロジェクトを軌道に乗せられた理由ではないかと思います。

オムライス街道プロジェクトで配られているパンフレットや街道新聞。いずれも日高村役場産業環境課で発行しているものだ(写真:佐藤久)

実務を担当した山本さんとしてはいかがですか?

オムライス街道プロジェクトの実務を手がける、日高村役場 産業環境課 主幹の山本奈央さん(写真:日高村役場)

山本 実のところ、1年目はメディアのおかげで盛り上がりましたが、そこから先はどうなるか読めませんでした。今では「日高村と言えば『オムライス』『トマト』」と言われるようになり、トマトの生産拡大に向けて新たなハウスが建設されるなど、村がいろいろな形で変わってきています。この成功は個人的には、プロジェクトに関わる人がそれぞれの立場でできることを頑張ったからではないかと思います。例えば、飲食店の人はお客さんが増えることで接客や店内の雰囲気にも変化が見られたり、新メニューの開発などお客様を飽きさせない工夫やおもてなしにこれまで以上に力を入れたりしてくれています。子どもたちや地域の方、村内の多くの事業者の方なども協力してくれました。こうした皆さんの活動を一つの企画に集約して村全体の取り組みとしてPRできたことが良かったと思います。

「オムライス街道」には教育の側面もあるそうですね。

山本 このプロジェクトは、農業と商業の連携だけでなく、地域や学校とも連携し、ふるさと教育の観点も取り入れて『食』『アート』『音楽』の3つの柱で展開しています。今、この日高村で育っている子どもたちが、オムライス街道の取り組みに主体的に参加してもらうことで、ふるさとの魅力を実感し、将来は自分の言葉でふるさとについて語れる大人になってほしいと思います。例えば、大学生になったら県外の友達に日高村のことを話したり、社会人になれば職場で話題にしたり、親になったら子どもたちに話したりしてほしいですね。

「オムライス街道」の最終目的は、日高村の村おこし・地域振興と思います。その具体的なプランや、今後のグランドデザインのようなものをお教えください。

戸梶 オムライス街道の企画をさらに大きな動きにして、特産のシュガートマトのブランド強化を図り、このトマトを核とした1次、2次、3次産業の連携を目指す展開、つまり農業クラスターの構築ですね。これによって、トマト生産の担い手を増やし、6次加工品の販売やトマト生産量そのものの拡大も図って地域を振興させ、村の人口増を目指します。具体的には、オムライス街道プロジェクトを10年間存続させることを当面の目標と考えています。また、オムライス街道プロジェクトを含むものとしてイタリアンプロジェクトを立ち上げ、磨き上げていきます。