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キユーピーとJA全農、拡大する「カット野菜市場」でタッグを組む

キユーピー×JA全農

規模が拡大するカット野菜市場で注目を集める企業がある。マヨネーズ・ドレッシングメーカー大手のキユーピーとJA全農ががっちり手を組み、合弁で設立したグリーンメッセージだ。JA全農の産地ネットワークを生かした強い調達力と、キユーピーグループが持つカット野菜の加工・生産技術を掛けわせることで市場の拡大を狙う。生産者・産地との密な連携にも意欲を見せる同社には農業関係者からも熱い期待が寄せられている。

 単身や共働きの世帯数が増えるにつれ、調理時間を短く簡単にすませる“食の簡便化志向”が強くなる。これに伴い、あらかじめ加工された形で提供されるカット野菜の市場が伸びている。農畜産業振興機構の推計値によれば、その規模は1900億円にも上る。

キユーピーとJA全農ががっちり手を組む

 そうしたカット野菜業界の中で、ひときわ目立つ存在がグリーンメッセージだ。

神奈川県大和市にある「グリーンメッセージ」

 同社は、マヨネーズ・ドレッシング大手である「キユーピー」と、「全国農業協同組合連合会」(JA全農)の合弁によって2013年12月に設立された。野菜周りのビジネスを拡大したいキユーピーと、国内野菜の供給先を増やし市場を広げたいJA全農の思惑が一致して生まれた“戦略的な子会社”だ。出資比率はキユーピーが51%に対してJA全農が49%になる。

カップサラダの製造工程。数種類のカット野菜が手早く盛り付けられていく

 キユーピーとしては、三菱商事との合弁で1999年に設立したサラダクラブに続く、カット野菜を主力商品とする2つめの子会社になる。サラダクラブは「パッケージサラダ」と名付けた家庭用のカット野菜で知られるキユーピーの優良子会社。設立以来17年連続で売り上げを伸ばし、2015年には247億円に達した。カット野菜業界の中では確固たる地歩を占めるメーンプレイヤーだ。

 これに対して、グリーンメッセージでは業務用の市場をターゲットに据える。16年度(15年12月~16年11月)の売上高は約8億円。3期目に当たる17年度ではこれを2倍にしたいとしている。さらに10年後の2025年には100億円の大台に乗せる目標を掲げる。サラダクラブが製品を投入する家庭用市場とは別の市場で棲み分けを図り、2社合わせて大きなシェア獲得を狙う。

最大の強みは調達力

 グリーンメッセージの最大の強みは、言うまでもなくキユーピーとJA全農、両者のノウハウを利用できることだ。キユーピー出身の林素彦氏が代表取締役社長、JA全農出身の篠原稔氏が専務取締役という経営陣がその強みを生かしながら、同社の舵を取る。

 特に野菜の調達力はグリーンメッセージの“要”ともいえるところ。JA全農の持つ情報やノウハウを存分に生かせる。林氏は、「原料がよくなかったら、どんな素晴らしい加工技術があってもいい商品にはなりません。全農さんの力を借りて、いい原料調達ができていることがわれわれの最大の特徴であり、一番重要なところです」と言う。

グリーンメッセージ代表取締役社長の林素彦氏

 昨年の天候不順による野菜価格の高騰は記憶に新しい。価格の乱高下による影響を、どれだけ抑えることができるかも調達力によって決まる。日本中に張り巡らされたJA全農の産地ネットワークで上手な産地リレーができれば、調達コストの上昇を最小限に押さえ込める。林氏は「天候不順のときでも野菜がなくなってしまうわけではありません。少ない野菜の取り合いなんです」と話す。

 JA全農は、グリーンメッセージにとって49%の株式を持つ、いわば“もう一人の親”。調達力の面で競合他社に対して一歩先んじられる。昨年の天候不順のときもその力がいかんなく発揮された。「決して左うちわではありませんでしたが、同業他社に比べればどれだけ楽だったか」と林氏は振り返る。

 天候不順などの緊急時は分かりやすい例だが、通常時でもいい野菜が手に入らなければ、カット野菜の品質は上がらない。常時いい野菜が手に入る体制こそが、グリーンメッセージの競争力の源になる。林氏が「第一に品質。その前にあるのが調達です」と語る意味はそこにある。

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 こうした調達力は、生産者・産地との不断の協力関係と互いの信頼関係なしに培うことはできない。グリーンメッセージが産地との連携をとりわけ重視するのはこのためだ。同社の経営理念「野菜加工をつうじて、お客様・産地・地域の皆様に健康を提供いたします」の中に、「産地」というキーワードを明記している。社是にわざわざ入れるほど生産者・産地を大切に考えているわけだ。

 生産者からすれば、自分たちの野菜がどのように使われ、どんな価格でどれだけの量を買い取ってもらえるのかが見通せなければ安心して生産できないし、翌年の作付け計画もできない。まして農業機械やコールドチェーンに対応するような大型の投資には踏み切れない。逆に、加工するグリーンメッセージの側からすれば、加工適性のある野菜や消費者の需要に応じたよい原料野菜が手に入れなければ、カット野菜の品質を担保できず、競争力を失ってしまう。共存共栄をするためには密な情報共有と一歩踏み込んだ連携が必要になってくる。

生産者と共存共栄の関係を築く

 グリーンメッセージで調達を統括する篠原専務は、次のように語る。

グリーンメッセージ専務取締役の篠原稔氏

 「生産者が継続的に営農しながら出荷していただけるサポート体制、われわれが製品を作って代金を回収し、それを農家の方にまで反映していくようなつながりが大事です。生産者には、加工向けの原料野菜として出荷をお願いして、了解のもと生産していただいています。工場見学にも来て、作り方や歩留まりを見てもらう。例えばレタスであれば、がちがちに結球したものは加工には向かないという実態を見て、柔らかいうちの出荷を目指していただく。そういうところまで、JAが農協と農家とタッグを組み情報交換をしながら、また生産指導もしながら連携していくことに価値があると思っています」

 生産者と加工者、互いが歩み寄り、深く連携することで新しい価値を生むというのが、調達の責任者であり、JA全農出身でもある篠原氏の考えだ。

常識にとらわれず工程をすべて見直す

 グリーンメッセージは、強力な調達力を背景として、そこにキユーピーが持つ野菜関連の様々な加工・生産技術を加え、品質で勝負していく。このために、これまでは常識とされてきた工程についても、徹底的に見直しを図り改善を進める。生産者から加工の現場までを一貫して低温で管理する「コールドチェーン」の“穴”を埋めたのがその一例だ。

 この業界では生産した野菜をすぐさま低温で保存し、輸送中のトラック内から加工工場内、そして消費者の手に渡るまでのサプライチェーン全体の温度を低く抑えるコールドチェーンが当たり前になっている。ところが、輸送用の大型トラックの荷台は扉が羽のように横に大きく開くものが多く、夏場などは荷下ろしの際にコールドチェーンはいったん途切れてしまうことがあった。常識に“穴”が空いていた格好だ。この問題を解決するために、グリーンメッセージでは、荷下ろしの現場を大型トラックが丸ごと入る建屋内にすっぽり収めて、その空間を空調設備で低温に保つように変えた。

荷下ろし場。大型トラックがすっぽりと収まる室内の温度は低く抑えられているため、荷台を大きく開けても野菜が高温にさらされることはない

 林社長は、「この業界では初めての試みだと思います。生産者や流通に対してコールドチェーンを要求しながら、加工する側が自らコールドチェーンを切っていたのを改めました」と語る。このほかにも、野菜の鮮度と味を落とさずに加工する技術、工場内のクリーン化対策と虫や異物の混入を徹底的に防ぐ技術、口にしても害のない微酸性電解水を使った殺菌システム、生産性を上げるためのライン上の様々な工夫など、工場内のあらゆる工程をすべて見直して改善していかなくてはいけないという。

 順調に規模を拡大してきたカット野菜業界だが、林社長は自社の成長に明るい見通しを抱く一方で、「カット野菜市場の伸びは間もなく鈍化するという見方がある。これからは品質によって淘汰が始まる」と気を引き締める。グリーンメッセージは、キユーピー、JA全農という後ろ盾を生かし、生産者・産地を巻き込みながら、業務用カット野菜の新しいビジネスを切り開いていこうとしている。