
――日本企業に、元気がないのはどうしてなのでしょうか。
大宮 最近の風潮として、企業の目的が不適切な利益至上主義に傾いていることが問題の根幹にあります。資本主義の基本原理は利益の追求ですが、米国流MBAの間違った解釈により、短絡的に利益を追い求めてはなりません。最も大事なことは、お客様が感動して、活用できる、面白いと思って、購入頂ける製品をどう作り出すか。それには大変な手間と労力がかかりますし、作り手は本物の職人でなくてはなりません。私がよく買いに行く有名な和菓子屋さんのお菓子は、その店のご主人が製法から素材まであらゆるところにこだわって作っているのがよく分かります。企業もこれと同じで、いかに労を惜しまず、その仕事に徹底的にこだわるかどうか。目先の利益にとらわれ、職人としての仕事が失われているのではないでしょうか。
――特にITのように、アメリカの技術が導入されてきた分野は合理化一辺倒で、こだわりが忘れ去られている気がします。
大宮 スパコン「京」を開発した大手ベンダーの技術陣には、「ドキュメントはきれいに整理する」という文化があり、分厚い論理設計書を丁寧に整理していると聞きました。私たちも同じで、お客様から預かったデータはきれいにメンテナンスして出します。一見、無駄な仕事のように思えるかも知れませんが、汚いものをそのままにしておく感覚は、仕事にも知らず知らずに出てしまう。合理化ばかりでは、本当のものづくりはできません。

――日本企業はどうすべきだとお考えですか。
大宮 やはり職人としての魂を取り戻すことです。世界的なメーカーも創業時は町工場だったはずなのに、その時の気持ちを忘れてしまっている。当時、皆、職人の気持ちをもって、小さくても新しいことにチャレンジしていたはずです。それが大きくなって、大会社だから、つぶれないだろうという社員ばかりになると、夢や情熱もなくなり、誰が責任を負うのかばかりを気にして、新しいものを作り出そうという気概がなくなってしまっています。
私が大手インテグレーターの本部長を辞めて、この会社を作ったのも、最後まで技術者、職人でいたかったから。私が子どもの頃抱いた、技術に対するあこがれ、技術者になりたいという気持ちはIT業界で生きるようになった今も変わりません。そして、最先端のITの世界で求められているものも、そうした技術者、職人としての気持ちと心意気だと思います。
ですから、私たちの会社は技術者、職人の集団として、お客様が抱える問題を解決し、それによって、お客様にファンになってもらうことを目指しています。いわば、“頑固な寿司屋”。だから、製品にかかるコストを落として価格を落としてくれといわれても応じられませんが、色々なことで困っているお客様には様々な手を尽くして問題を解決します。そこで、お客様がとても喜んでくれると、私たちも「また、やろうか」という気持ちになります。ですから、私たちとお客様とは“Happy-Happy”の関係です。“Win-Win”だと、どこかに負けた者がいるわけで、あくまでお互いが“幸せ”でなくてはならないのです。


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