パソコンおよびデジタル家電周辺機器を開発・販売するバッファロー。同社は数年前から未踏事業に注目し、これまでに5名の未踏人材を採用した。急速に変化する世界市場で戦うには、大学や企業の人材育成システムだけでは生まれづらい「若い突出したIT人材」の力が不可欠と判断したからだ。社内では、新規事業の立ち上げなどに“即戦力”として活躍し、期待以上の成果を上げているという。企業から見た未踏の役割、未踏人材の評価などについて、同社取締役の石徹白敬氏に話を聞いた。

自社開発を支えるエンジニアの確保が課題

―御社の事業や強みについて教えてください。

当社の主力事業は、パソコンおよびデジタル家電の周辺機器の開発・販売です。自社開発にこだわり、ハードウエア、ソフトウエアを含め、多くの製品を自社で開発している点が特長であり、強みでもあります。

最近は、コンシューマ分野におけるITの広がりに対応すべく、より付加価値の高いビジネスに注力しています。従来の「ハード+ソフト」にサービスを加えた、「ハード+ソフト+サービス」の製品開発を進めているわけです。それだけに、自社開発を担うエンジニアの確保は重要なミッションですね。

―御社が、未踏に注目した理由や狙いについてお聞かせください。

今、世界のマーケットは急激に変化しています。ワールドワイドにビジネスを展開する当社にとって、この変化に追随できる高度なIT人材の確保は重要な経営課題です。しかし、そうした人材は社内教育でなかなか育成できるものではありません。

その点、未踏は「若い突出したIT人材」の発掘・育成を目的としており、会社が育成するのと違うベクトルの人材を数多く輩出しています。自社開発にこだわり、付加価値の高い製品・サービスの提供に努める当社にとって、喉から手が出るほど欲しい人材がひしめいています。

常識にとらわれない柔軟な発想力を持つ

―未踏人材の採用に当たり、何を重視しているのでしょうか。

未踏を卒業したクリエータは、皆それぞれに自分の提案に基づくプロジェクトを経験しており、得意分野を持っています。その技術力は高く評価していますが、実はそれよりも「どれぐらいネジが外れているか」を重視しています。

その意味するところは、「どれだけ常識にとらわれない考え方ができるか」ということです。技術的な常識や標準は教科書を読めば分かります。でも、それにとらわれていると、クリエイティブなことはできません。常識が邪魔をしてしまうわけですね。常識にとらわれない柔軟な発想力を、一番の評価軸にしています。

―未踏人材は、自分の得意分野に即した開発を行っているのですか。

実は、そうではありません。エンジニアというのは、技術力が高まり、ある一定のレベルを超えると、得意分野に限らずどんなことでもできるようになります。未踏人材はそういう存在です。社内では適材適所の現場に配属され、貴重な戦力として活躍しています。

当社は5名の未踏人材を採用しているのですが、あるスーパークリエータは入社後すぐに新規プロジェクトのメインプログラマに選抜されました。そのプロジェクトとは、新製品のデジタルフォト・アルバム「おもいでばこ」の開発です。当社が新たに手掛ける製品であり、思い出の写真を楽しむための多彩な機能を搭載しています。サービスを支える中核ソフトウエアを1年かからずに、たった一人で完成させてしまいました。

また、海外現地法人での新規プロジェクトの立ち上げに伴い、社内公募を実施したところ、最終的に選抜された二人がいずれも未踏人材だったこともあります。「おもいでばこ」の開発といい、この新規プロジェクトのケースといい、いずれも先入観なしに公正に選考した結果です。このことからも、未踏人材のポテンシャルの高さが理解いただけるでしょう。

―未踏人材の待遇について、気を付けていることはありますか。

未踏人材だからといって、特別扱いはしていません。今申し上げたように、新規プロジェクトの人選や社内公募もほかの社員と同じように選考しています。結果的に重要な業務に未踏人材が就くケースが多いということです。

技術力は突出していますが、だからといって社内で浮いてしまうようなこともないですね。未踏に採択されるには、自分の提案についてプレゼンテーションを行い、採択されてからもPMの方から指導を受けたり、OB、OGやクリエータ同士の交流も活発に行われていると聞いています。社会人としての常識をわきまえ、コミュニケーションスキルも高いので、いい雰囲気で仕事に取り組み、自分の能力をフルに発揮しています。

成果報告会は未踏人材を知る貴重な場

―企業は、未踏をどのように活用すべきとお考えですか。

今の学校教育や企業の人材育成の仕組みでは、クリエイティビティを高めるトレーニングは困難です。その意味で、大学や企業の人材育成とは別の切り口で、業界すらクロスオーバーしたような突出した人材育成の場として、未踏は非常に意義があると思っています。

未踏人材は採択された自分のプロジェクトの経験から、成果物をビルドアップしていく方法論を身に付けていますし、今の仕事の中に自分の得意分野をうまく応用させる器用さも持ち合わせています。企業にとって、非常に大きな戦力になることは間違いないでしょう。

一方、人材の魅力を知る上では、プロジェクト終了時に行われる成果報告会を活用させてもらっています。クリエータたちと直に話しもできるので、その人の技術力や発想力を評価する上で非常に役立っています。

―未踏に期待することや、要望があればお聞かせください。

大規模な企業では、社内で有能な人材の発掘・育成を目指す「社内未踏」のような取り組みを行うところも出始めています。これは未踏というユニークな人材育成メソッドが一つのモデルケースになりつつある表れではないでしょうか。今後もぜひ事業を継続し、多くの若い才能と巡り合える機会を提供していただきたいと思います。

要望としては、成果報告会をオンラインで利用できるようになると有り難いですね。クリエータたちの話を直に聞くには、当日会場まで足を運ばなければなりませんが、ライブ中継が可能になれば、会場の生の雰囲気も分かりますし、リアルタイムでこちらから質問できるでしょう。より多くの人が未踏の魅力に触れることができ、メリットが大きいと思いますよ。

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