厳しい経済状況やソーシャルメディアの台頭などを背景に、消費者の購買行動も大きく変わりつつある。自社の製品・サービスを確実に選んでもらうためには、これまで以上にCS(顧客満足)やロイヤルティの向上を図っていくことが必要だ。こうした中、テレマーケティング ジャパンでは「事業戦略に貢献する戦略的コンタクト」と題しセミナーを開催。「CS向上の勘どころ」や「今後のコンタクトセンターが担うべき役割」などが示された。


一般にCS向上を図るためには、「サービス品質」の改善が重要と言われる。「そのこと自体は間違いではありませんが、実際には、それだけではCS向上に結びつかないケースもあります」と青山学院大学の小野譲司教授は指摘する。
サービス品質の中には、最低限クリアすべき「最低条件」と、改善活動に比例して効果が上がる「満足因子」、それに劇的な効果をもたらす「感動因子」の3点がある。最低条件に該当する部分だけに必要以上にいくら労力を費やしても、顧客満足度に対してはある一定の効果以上は望めない。漫然と品質改善や機能向上に取り組むと、むしろ、期待した成果が上がらずに、組織内に徒労感を残すリスクさえある。自社の商品やサービスにおける満足因子や感動因子は何か、自社の熱心なファンとなりうるセグメント層は誰かを見極め、そこにフォーカスをあてた施策を展開することが大事なのである。
また、CS向上を考える上で、もう1つ重要なポイントが「顧客の声」である。製品やサービスを利用する顧客は、その満足度に応じてポジティブ、あるいはネガティブな意見を発する。「この発生率を業界横断で分析すると、興味深い事実が見えてきます。苦情や負のクチコミの発生率が高い業界であっても、その後の対応がしっかりしていればリカバリー品質のスコアは逆に向上するのです」と小野氏。つまり、ネガティブな声にどれくらい真摯に向き合っているかが、CS向上に大きく影響するのである。
このことから、顧客自らが企業とコンタクトを図ろうとするコミュニケーション手段やチャネルなどの顧客接点の重要性が改めて浮かび上がってくる。苦情を言わずに、黙ったまま離脱してしまう顧客も少なくない。しかしながら一方で、自ら声を発する顧客は、企業の対応しだいで優良顧客に変化する可能性がある。マーケティング研究で「リカバリー・パラドックス」と呼ばれてきた現象である。
「顧客が抱えている問題を適切に解決することで、その顧客は逆に『伝道者』ともいうべき、ロイヤルティが高く、良いクチコミや新規客の紹介をしてくれるお客様へと変身する可能性があります。企業が収益向上を目指していく上で、このことは非常に重要なポイントになりえます」と小野氏。リカバリー戦略の中核を担う電話対応窓口となるコンタクトセンターが、いかにビジネスで重い役割を果たしているかが分かる。
さらに小野氏は、組織と顧客の視点の違いについても言及。「自社のCS達成度を、個々の部署ごとにチェックし、点数化することで部門別評価を行う企業もあります。理念にとどまらず、CSを定量的に把握し、改善に取り組むことは素晴らしいことですが、同時に留意すべき課題も潜んでいます。実際に顧客が見ているのは、販売担当者やコールセンターといった部門別のことだけでなく、例えば、企業全体としての一貫性や利便性といった部門横断的な問題であることも少なくありません。その場合、組織横断で改善に取り組まないと、顧客の視点と乖離(かいり)してしまうおそれもあります」と指摘する。
サービス品質が顧客の期待値に届かなかった場合も、その原因が現場だけにあるとは限らない。顧客ニーズの把握やサービス自体の設計、コミュニケーションの方法など、社内外のあらゆる場所にギャップが潜んでいる可能性がある。「最適なCSマネジメントを実現する上では、サービス活動全体を1つのチェーンとして捉え、様々な視点から診断や分析を行うことが肝心です」(小野氏)。



企業の売り上げ拡大を顧客の生涯売り上げ(LTV)の視点で考えた場合、重要なポイントとなるのが「複数・関連購入」「継続購入」「他顧客への推奨」の3点。コンタクトセンターは、これを実現していく上で非常に重要な役割を担っている。従来はアフターサービス領域における活動が主とされていたが、継続購入という視点に変えれば「ビフォーセールス」の領域となる。販促活動の一環として顧客接点を活用すれば、LTV増大という売り上げ拡大への貢献も期待できる。
図1:アクティブコンタクト
従来型のインバウンド・ケア、アウトバウンド・セールスに、インバウンド・セールス、アウトバウンド・ケアの2つの機能を加えた「アクティブコンタクト」。LTV増大、売り上げ拡大に大きく貢献する。
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売り上げ拡大に貢献できるコンタクトセンターとはどのようなものなのか。テレマーケティング ジャパンの林純一社長は、そのキーワードとして同社が推進する「アクティブコンタクト」を挙げる。
「従来型のセンターは、インバウンドによるケア(電話を掛けてきた顧客をサポート)、アウトバウンドによるセールス(自ら電話を掛けて顧客にセールス)の2つの機能がメインでした。当社では、これに販売機会の創出を担う『インバウンド・セールス』(電話を掛けてきた顧客にセールス)と、ロイヤルティ向上を図る『アウトバウンド・ケア』(自ら電話を掛けて顧客をサポート)の2つの機能を加えることで、LTVのさらなる増大を実現しています」(林氏)。
既にこのアクティブコンタクトを活用し、高い効果を上げたクライアント企業も生まれている。「例えば、あるクレジットカード会社様では、インバウンド・セールスで会員の流出阻止を実現されています」と林氏。この事例では、退会希望の会員を電話で振り分けると同時に、高いスキルを備えたオペレーターが対応することで、解約阻止件数を対前年比で約270%にまで増やしたという。
同様にあるISP(インターネット・サービス・プロバイダー)でも、入会申し込みや転居などの連絡を受け付けた際にオプションサービスを提案。獲得率・獲得件数共に15%アップを達成したという。従来は販売チャネルと考えられていなかった分野で、ゼロから新しい売り上げを創出したのである。
また、この事例では「ソーシャルスタイル」という同社独自の試みも活かされている。「これはお客様のタイプに応じて、オペレーターの話し方やトーンを変えるというもの。インバウンド対応の人材をアウトバウンド業務にスムーズに適用してもらえるので、より高い成果が期待できます」と林氏は説明する。
さらに、アウトバウンド・ケアについても、ある自動車メーカーが疎遠客フォローに活用。営業担当者に代わって疎遠客へのフォローコールを行い、来店促進や要望・不満点の収集、キャンペーンの案内などを行った。「車検などの時だけに連絡をするのではなく、まず顧客とのリレーションを築いておくことで、アプローチの効果をさらに高められます」と林氏。この事例でも、買い替え、来店促進、訪問承諾などの形で、顧客との関係復活率を約33%まで高めることができたという。
もちろん、こうしたアクティブコンタクトを展開していく上では、コールセンター側にも組織体制の整備・強化や人材育成など、様々な取り組みが求められる。「当社でもさらなる改善を図り、お客様のビジネスに貢献していきたい」と林氏は述べた。




