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Digital Transformation あたらしい変革のチカラ

デジタル・トランスフォーメーション時代に必要なクラウド選定基準とは

これまで企業のITシステムは、生産や販売(営業)、財務管理、人事などの業務を効率化して、経営を安定化させることに重きが置かれてきた。単なる効率化だけではビジネスの競争に勝ち残れない現在、必要とされているのが「デジタル・トランスフォーメーション」による大胆かつ、スピーディーな変革だ。この新たな時代の潮流に対応するためには、クラウド活用が必須となる。多数のクラウド・プロバイダーの中から失敗せずに選定するには、どの様な観点を持てば良いのだろうか。

デジタル・トランスフォーメーションが新たな競争原理をもたらす

 デジタル・トランスフォーメーションの概念をあらためて簡単に解説しておくと、現代のデジタルネイティブな顧客を相手に必要となるビジネスモデルやビジネスプロセスの変革である。Uberにみるような、デジタルな情報を使った新たな競争相手も参入してくる。スマホ、ソーシャルメディアなどから情報が大量に生まれ、IoTによるビッグデータなどの活用も必然となる。過去のデータを分析するだけでは予測が成り立たない。これらに対応できる最新のビジネスモデル、ビジネスプロセスへの移行を余議なくされている。

 さらにデジタル・トランスフォーメーションは、業界・業種を越えた企業が連携し、新たなビジネスやサービスを創出していく原動力となりつつある。自動車メーカーと損害保険会社が協業し、一人ひとりのドライバーの運転状況(事故リスク)に応じて料金を設定する新たな保険商品を提供するといった動きは、そうしたなかでの象徴的な例だ。また、ドイツが国家を挙げて推進している「インダストリー4.0」や米国の「インダストリアル・インターネット」といった取り組みもデジタル・トランスフォーメーションをベースに企業間連携を促し、バリューチェーンを拡大していくものであり、グローバルビジネスの世界に新たな競争原理をもたらそうとしている。

個別最適化された『サイロ』のようなクラウドの乱立を許してはならない

 こうした変化に日本企業はいかに追随し、競争優位を確立することができるか――。いうまでもないことだが、その取り組みを支えるITシステムを、多大な時間とコストをかけて整備していたのではグローバルで競合する他社に太刀打ちできない。事実、フォーチュン誌のトップ500社でさえ、2000年にランクインしていた企業の50%が圏外に去るという時代、大企業でもスピーディーに時代の流れに対応できなければ、すぐにデジタル・ディスラプションの波にのまれることになる。

 そこで必然的に向かうことになるのが、クラウドの活用である。システムを新規に導入する際や更新時にクラウドの活用を優先的に検討する「クラウドファースト」の考え方が日本企業にも浸透してきたことから、現在もクラウドをまったく使っていないという企業はもはや少数となった。ただし、実際にどこまでクラウドの活用が進んでいるかというと、ファイル共有やメールなど、部分的な業務にとどまっているのが実態ではないだろうか。今後、コア業務に関しても積極的にクラウド移行を図っていくなど、活用領域を拡大していく局面を迎えることになる。

 そこで留意すべきが、これまでの企業に多く見られた業務ごとに個別最適化された『サイロ』のようなITシステムの構築を繰り返してはならないということだ。一口にクラウドといっても、サーバーやストレージなどのハードウェアを仮想化して提供するIaaS(Infrastructure as a Service)、ITシステムの開発・実行環境を提供するPaaS(Platform as a Service)、業務アプリケーションを提供するSaaS(Software as a Service)といった階層がある。そして、それぞれの階層の市場に無数のプロバイダーが参入し、多種多彩なサービスを提供している。

 こうしたさまざまなサービス群から自社が必要とするものを自由に選択し、導入できることがクラウドのメリットとされてきた。もちろん、この考え方を否定するわけではない。ただし、全社戦略に基づいた統制を徹底しないまま『なし崩し』の導入を許してしまうと、部門ごとに異なる設計思想やアーキテクチャを持ったクラウドのサイロが乱立してしまう。これでは、たとえばERPアプリケーションと人事管理アプリケーション、あるいはCRMアプリケーションとの間でデータ連携をして、ビジネスにトランスフォーメーションをもたらしたいときに、各アプリケーションに連携機能を組み込むにせよ、別のプロバイダーに頼むにせよ、統合コストが高くつく。そもそも、スピードが求められている中、貴重な時間がムダになり、デジタル・トランスフォーメーションはかえって遠のいてしまうという事態を招きかねない。