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Digital Transformation あたらしい変革のチカラ

無数のプロバイダーがクラウドサービスを提供しているが、その中身は千差万別である。したがって、最初の「クラウド選定」が、その後の企業の明暗を分けるといっても過言ではない。“鍵”となるのは、「クラウドとオンプレミス(社内)を自由に行き来できる」という条件を満たしているか否かであり、システムに対して開発・実行環境の共通サービス群を提供するPaaS(Platform as a Service)と呼ばれるレイヤーの設計思想を注視したい。

IoTやデルタルマーケティングでクラウド活用は必然

 昨今、製造業を中心にIoT(Internet of Things:モノのインターネット)と呼ばれる技術が注目されている。生産ラインを構成する機器や設備、要所に設置されたセンサーなどをインターネットに接続し、そこから生成されるビッグデータを活用することで、飛躍的な生産性向上やトレーサビリティの確立、サプライチェーンの可視化といったスマートファクトリーの実現を目指すものだ。「第4の産業革命」(インダストリー4.0)を国家レベルで掲げるドイツ、ゼネラル・エレクトリック社(GE)をはじめとする民間企業主導で「インダストリアル・インターネット」を推進する米国がその先頭を走っており、日本の製造業としてもこの潮流にどう対応していくのかが問われている。

 一方、販売の観点から浮上しているのが「デジタルマーケティング」というキーワードだ。リアルな店舗のみならず、Webサイトやソーシャルメディア、スマートフォンのモバイルアプリなど、あらゆるデジタルのタッチポイントで顧客とつながり、得られたビッグデータをもとに購買行動を詳細かつ予測的に分析することで、リアルタイムのプロモーションやキャンペーンを展開していくのである。

 このような一例に見られるように、IoTへの対応、ソーシャルネイティブなミレニアル世代の顧客行動に合わせたマーケティング、など新しいビジネスモデルやビジネスプロセスに変換していくデジタル・トランスフォーメーションは必須になってきている。だが、こうしたIoTやデジタルマーケティングが対象とするデータは、これまで企業が扱ってきたデータとはまったく性質が異なるものとなる。そもそも、どんなタイプのデータを集めるべきなのかもわからない。現時点で保有しているデータはごく少量だが、将来的にどこまで拡大していくかも予測がつかない。さらにいえば、そのビジネスが必ず成功するという確証があるわけでもない。

 このような不確実性の高いチャレンジのために、多大な予算と工数を投じてITシステムを構築することは容易なことではない。そこで多くの企業が乗り出しているのが、クラウドの活用である。必要なときに、必要なだけのコンピューティングのリソースやソフトウェアを、従量制課金による経費として調達できるクラウドであれば、投資リスクを最小限に抑えたスモールスタートが可能となる。

 流通・小売業の大手のなかには、今後数年のうちに基幹系を含めた社内のすべてのITシステムをクラウドに移行するという意向を示す企業もあり、クラウド活用は加速的な勢いで進んでいる。

絶対に避けたいクラウドロックイン

 もっとも、クラウドであれば何でもかまわないというわけではない。現在、無数のプロバイダーがクラウドサービスを提供しているが中身は千差万別だ。最初の「クラウド選定」が、その後の企業の明暗を分けるといって過言ではない。

 先述したようにIoTやデジタルマーケティングといった領域はまだまだ未知の部分が多く、先行企業にとっても手探りの段階だ。どんな種類のデータが、どれくらいの規模に拡大し、どのような活用が進んでいくのか予測しきれない。成果を得られないと判断された場合には躊躇せず撤収するという方針転換も必要だ。

 一方で考慮しておかなければならないのが、クラウド上で展開しているビジネスやサービスが軌道に乗り、拡大を続けていったときの対応だ。クラウドはスタート時点こそ多大なコストメリットを得ることができるが、そこで保有するデータ量や処理するトランザクション件数が一定量を超えたとき、クラウドに支払う費用が社内データセンターでの運用コストよりも割高になってしまう可能性がある。また、法規制や顧客との契約などにより、社内でデータを扱わなければならないケースも出てくる。すなわち、クラウドから社内データセンターにシステムを巻き取って運用変更するという判断を行う局面も事前に想定しておかなければならない。

 しかし、独自アーキテクチャで設計されたクラウドではそう簡単にはいかない。スムーズに動かすことができず、場合によっては巨額のコストを要するシステムの全面的な再構築を余儀なくされる。このような「クラウドロックイン」に陥ってしまうことだけは、絶対に避けておきたいところだ。