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Digital Transformation あたらしい変革のチカラ

顧客から選ばれる企業になるためのカスタマー・サービスの変革

商品の機能や価格で差異化を図ることが困難となった昨今、企業は何を競争力の源泉とすればよいのか。どうやったら自社のファンを獲得できるのか。重要なカギを握るのが「カスタマー・サービス」だ。カスタマー・サービスを“コストセンター”から、収益向上の最前線に立つ“プロフィットセンター”に生まれ変わらせるポイントを考察する。

嫌な思いをした体験は瞬く間に拡散してしまう

 スマートフォンの普及により、企業よりも消費者のほうが強い力を持つようになったといわれる。いつでも、どこからでもインターネットにつながり、興味を持った商品の満足度ランキングやSNSでのクチコミ、個人ブログのレビュー記事など、あらゆる情報が簡単に得られる。買いたい商品が決まったら、価格比較サイトにアクセスして最も安値のオンラインショップから購入する。このように購買のあらゆるプロセスが消費者主導で動いていくため、情報やサービスを提供するタイミングも顧客が決めることになる。ほとんどの商品はコモディティー化が進み、機能や価格で差異化を図ることは困難となっており、消費者へのパワーシフトはますます進んでいく。そうした中で「選ばれる企業」と「選ばれない企業」が明確に二分されつつある。多くの選ばれる企業が競争力の源泉に据えるのは「カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験価値)」である。

 顧客が商品やサービスを購入するという行為は、長期にわたる購買プロセスの中のほんの一瞬の断面にすぎない。より重要なのは、その前後のプロセスや商品の利用時に顧客が体験する「心地よさ」「驚き」「感動」「誇らしさ」などだ。ある種の感覚的・感情的な付加価値こそが、実は企業選びの決め手となっているのである。

 これを逆の側面から見たある調査では「嫌な顧客対応を受けた80%以上の顧客はその企業との取引を止める」という結果が示されている。取引を止めるだけならまだいい。その中のかなりの割合の人が、嫌な思いをした体験をSNSで発言し、瞬く間に拡散していくのである。つまり、良いサービスは顧客が望む「瞬間」に提供されなければならず、良くないサービスが提供された「瞬間」にそれは共有されるのだ。

カスタマー・エクスペリエンスに関する調査結果

変わるライフスタイルにはセルフサービスを

 では顧客にとって「良いサービス」とはどういうものなのだろうか。

 従来のように顧客からの問い合わせを電話やメールで受け、正確な情報を返すだけのカスタマー・サービスでは自社のファンになってもらえない。経営の側面からも、いつまでたっても“コストセンター”から脱することができない。

 これからのカスタマー・サービスに求められるのは、顧客が日常的に利用しているスマホアプリやクラウドサービス、SNS、チャットといった複数のチャネルを有機的に連携させた“接客”の実践である。長期にわたる顧客の購買プロセスの様々な局面で、一番良いカスタマー・エクスペリエンスをデザインし、それを実践するカスタマー・サービスが、収益向上の最前線に立つ“プロフィットセンター”に生まれ変わるのだ。

 そのためには、まず顧客が望む「瞬間」にサービスを提供できる必要がある。従来のように「平日9時から17時まで」といった時間を限定した対応ではなく、24時間365日の対応が要求される。しかし、カスタマー・サービスのオペレーターを増やして昼夜3交代制勤務にするといった人海戦術ではコストが膨れ上がるばかりだ。

 そこで解決策の一つとなるのが、顧客自身で問題をある程度解決できるようにする「FAQ(よくある質問と回答)」などによるセルフサービスの強化である。

 実際、「60~70%の顧客がカスタマー・サービスに電話をかける前にインターネットを閲覧している」という調査結果もある。ある家電メーカーでは、動画をふんだんに活用したFAQを公開している。たとえば、洗濯機が故障した場合、スマートフォンからFAQにアクセスして製品の型番や症状を選択すると診断が進み、詳しい確認手順や対処法などが動画で示される。洗濯機のすぐそばにスマートフォンを持ち込んでこの動画を見れば、軽微な不具合なら自分で直せてしまう。わざわざサービスマンを呼ぶまでもなく、修理代も修理までの時間もかからないのでありがたい。

 こうしたちょっとした“感動体験”の積み重ねが、自社のファンづくりにつながっていくのである。

Oracle Service Cloudを利用したFAQの画面例