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Digital Transformation あたらしい変革のチカラ

クラウドを活用した二層ERP戦略でリコーが描くビジネス変革のカタチとは

イノベーションを起こす“武器”としてのIT

 つまりリコーでは、顧客価値創造を担う「攻めのIT」と、高効率経営の実現と経営品質の向上を支える「守りのIT」の双方で、イノベーションを起こす“武器”としてITを捉えている。それはデジタルトランスフォーメーションの実現に向けた同社の強い意志の表れともいえる。

 「特に積極的に活用しているのがクラウドです。クラウドは、システム構築の手段の1つであって、目的ではないと考えています。しかしながら、経営環境の激変に対応するため、クラウドは既に不可欠な要素となっていることも事実です」(石野氏)

 リコーでは、マルチベンダーのクラウドを適材適所で積極的に活用している。その一環として2017年よりスタートしたのが、オンプレミスとクラウドサービスをハイブリッドに活用した「二層ERP(2 Tier ERP)」戦略である。

 二層ERPの説明をする前に、まずはリコーの基幹システムを振り返ってみよう。

 同社のシステムは、SFA(営業支援システム)やコールセンター/サービスマンサポート、ディーラー/直販顧客向けシステムなどで構成された「顧客接点システム」と、受注/契約/在庫/購買管理、人事・給与、物流などの「バックエンドシステム」に大きく分かれている。そのデータベースは20年以上前からオラクル製品によって構築されており、現在の基幹システムは「Oracle E-Business Suite(EBS)」によって構成されている。

 日本、米国、欧州、アジアパシフィック、中国と、グローバルに直販ビジネスを展開しているリコーにとって、全世界で統一されたデータベースを基に、継続的な経営品質改善がドライブでき、多くのモジュール(機能)間のコンシステンシーが維持できるOracle EBSは、同社のIT経営になくてはならない存在だ。

 だが一方で、近年の事業ポートフォリオ多様化に対応するためには、いくつかの課題も出てきているという。

 「ERPでは当然の話なのですが、事業ごとにツールを選んでインプリメント(実装)していくと時間やコストがかかること、アドオン開発が多いとバージョンアップ時の負担が大きいことなどが懸念材料として出てきたのです。同時に、全事業を横串で管理するには大変な手間がかかります。国や地域が離れていればコンプライアンスの徹底も難しい。こうした課題にどう対応していくかを考え抜き、導き出した答えが二層ERPだったのです」と石野氏は語る。

 二層ERPとは、複写機に代表される大規模な基盤事業と新規事業や新たに買収した成長事業などの非基盤事業のそれぞれで、異なるタイプのERPを使い分けることを意味している。1層目(基盤事業)には既に自社で稼働している「Oracle EBS」、二層目(非基盤事業)には新たに導入した「Oracle ERP Cloud」を適用するという構成だ。

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 Oracle ERP Cloudは、グローバル展開を視野に入れたERPをSaaSとして提供するクラウドサービスだ。オンプレミスで提供されるOracle EBSの機能をそのまま踏襲し、既設のOracleデータベースはもちろん、ほかのOracleアプリケーションも同じプラットフォーム上でシームレスに連携しながら利用できる。

 「新規事業のシステムにOracle ERP Cloudを適用すれば、まず、何より早く安くERPを導入することができます。クラウドサービスなのでバージョンアップやセキュリティにも時間やコストがかかりませんし、既存環境も含めた事業横断で経営情報を可視化することもできる。ビジネス成長に合わせたスケーラビリティにも不安がありません」と石野氏はOracle ERP Cloudを選択した理由を語る。

 一方オラクルは、リコーの二層ERP戦略を支援するため、受注生産型、汎用品の量産販売型、サービス事業特化型といったように、これから立ち上がる予定の非基盤事業の特性ごとに複数のテンプレートを提供した。

 「テンプレート提供の提案も、Oracle ERP Cloudを選んだ理由の1つです。これなら新しい事業に合わせて素早く実装できますし、基本的に原型のまま使うことでコストを抑えられる。また一層/二層の基盤がオラクルで共通化されているので、全世界の拠点を一元管理したコンプライアンスの徹底や、コンシステンシーなデータをすぐ採れる環境が容易に実現できます」(石野氏)

 素早く新事業を立ち上げる、あるいは撤退できる「攻めのIT」にクラウドは有効な手段となる。また「守りのIT」でも、トータルなコスト低減を図りつつ、全拠点のガバナンスを強化し、整合性の高いデータを一元管理できる環境は大きな武器になる。リコーが選択した二層ERP戦略は、まさに双方のメリットを享受できるソリューションなのである。

二層ERPの成功に向けエンゲージメントを強化していく

 二層ERPの導入効果として石野氏はスピード、コスト、可視化を挙げる。

 「Oracle ERP Cloudとテンプレートを使うことで、システム開発期間は最短で従来の1/3、12週間程度へ短縮することを目指しています。最初はオラクル・コンサルティングチームの支援を受けることになりますが、その導入・運用ノウハウを社内に蓄積し、最終的には自社リソースのみで展開していくことを想定しています。そうすればコストは一段と下がりますし、ほかの企業にOracle ERP Cloudを展開するお手伝いをやっていけるようになるかもしれません。」(石野氏)

 また事業横断で経営情報を可視化できるメリットも大きい。グローバルな事業データを同じ指標でリアルタイムに把握できれば、KPIのモニタリングも容易になり、今まで以上に状況を先読みした迅速な経営判断が下せるのだという。

 そうしたメリットを享受するためには、IT部門と事業部門、ベンダーとのエンゲージメントが何よりも重要なポイントになる。「これまでのシステムは、現場ユーザーがやりたいことを何でもボトムアップで実現することに価値がありました。しかしクラウドサービスは基本機能に業務を合わせなければ、スピードとコスト効果が期待できません。IT部門は“身体をツールに合わせる”という考え方を事業部オーナーにきちんと理解してもらい、トップダウンで導入を推進していけるよう、関係性を強化していくことが大切です」と石野氏は指摘する。

 顧客価値創造と高効率経営の実現を目指すリコーのデジタルトランスフォーメーションは、これからが本番だ。

【関連情報】
>> エンタープライズ型ERP:Oracle ERP Cloud
お問い合わせ
  • 日本オラクル株式会社 Oracle Digital 0120-155-096