• ビジネス
  • xTECH
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP
日経 xTECH Special 日経 xTECH 日経 xTECH Special

金融機関のデジタル革命成功の鍵

企業が生き残りをかけ、ITを駆使して改革に取り組むデジタルトランスフォーメーション。日本の金融機関の取り組みは進んでいるのだろうか。AI(人工知能)やRPA(Robotic Process Automation)の活用は徐々に広がりつつあるが、劇的な成果を上げているわけではなさそうだ。その原因はどこにあり、どう取り組めばよいのだろうか。世界的なコンサルティングファームであるアクセンチュアの下野崇氏が解説した。

本邦金融機関が遅れている背景には
AIに対する誤解がある

アクセンチュア株式会社
金融サービス本部
マネジング・ディレクター
下野 崇

 「世界のトップ金融機関はすでにAIやロボットを活用しています。それに比べると本邦金融機関は大きく遅れています」。アクセンチュアの下野崇氏は、こう語る。スペイン最大の銀行グループであるサンタンデールの本社では、ロボットが来客を出迎えるという。

 下野氏は、金融機関のデジタル変革のロードマップには三つのフェーズがあると説明する。第一が業務の効率化、第二がオペレーティングモデル改革、そして第三がビジネスモデル改革だ。「本邦金融機関が第一フェーズにいるのに対して、世界のトップバンクは第二フェーズに入っています。そして第三の変革への準備も着々と進めています」(下野氏)

金融機関のデジタル変革の認識
欧州先進金融機関は、デジタル変革を次のステップに進めている
[画像のクリックで拡大表示]

 なぜこうした差が生まれてくるのか。日本でAI活用が進んでいない理由について下野氏は「今は目で見て明らかなものにしかAIを適用していません」と指摘する。適用範囲が狭いために学習データも少なく、学習データがあってもブラックボックス化してしまう危惧が先行してしまう。説明可能な範囲でAIを使おうとすれば、今の業務の改善以上の発想は生まれない。

 もう一つの原因は、精度に対する要求レベルの高さだ。中国にある同社の開発拠点であるデリバリーセンターでは、手書きの漢字や数字を認識する独自ソリューション「Armada Eye(アルマダアイ)」が導入されている。下野氏は「アルマダアイの正解率は98.4%。実務の観点から見れば100%である必要はありません」と語る。必要項目が未記入の用紙や、人が読んでも間違うことなどがあることを考えると、このレベルで十分使えると判断すべきだろう。その割り切りがAIの活用範囲を広げることにつながる。

 こうしたデジタル変革の差は、収益力の差につながる。金融機関の経営の効率性比較の指標であるCIR(Cost to Income Ratio)を比較すると、その差は歴然だ。2016年の時点で、日本の大手銀行のCIRは約65%なのに対して、デジタルを活用している海外の先進銀行は約48%と17%も開きがある。今後もその差が広がる懸念もある。

今の業務のデジタル化では
効果は限定的かつ頭打ちに

 今、日本でのソフトウエアロボットによる定型業務の自動化であるRPA(Robotic Process Automation)への関心が高まっている。導入業種として真っ先に挙げられるのは金融業界だ。日本のメガバンクの人員削減のニュースの背景には、必ずRPAの存在がある。アクセンチュアでも経費申請など様々な社内処理にRPAを導入している。

 下野氏は、自社で使用している経費申請のアプリケーションを見せながら次のように説明した。「PC上で行っている作業のほとんどが、ロボットに置き換えられます。日常業務処理の大半をロボットに代行させられると考えてよいでしょう」

 しかし、下野氏は「今の日本の取り組みでは、RPAの効果はすぐ頭打ちになるのでは」と危惧を示す。今やっていることをロボットに置き換えるだけでは、効果は限定的だからだ。デジタル革命を促す新しい技術で大きな成果を上げるには、根本的な発想の切り替えが必要になる。そこで下野氏はゼロベースで業務プロセスを再構築する「デジタルエンタープライズ」フレームワークを提唱する。

 具体的には、全社横断でのデジタルトランスフォーメーションを見据えて、デジタルソリューションを具備したプラットフォームを構築する。RPAやAIはそのプラットフォーム上で提供される手段の一部に過ぎない。そこに既存システムもつながり、組み合わせによって業務を処理していく。

 「デジタルエンタープライズは、データをつなぐプラットフォームとデジタルレイバーなどのワークフォースとセキュリティを提供するフレームワークから構成され、そこに様々なソリューションがつながります。公開されているスタンダードなソリューションを部品として組み合わせることがポイントです」と下野氏は全体像を解説する。

 こうした思い切った変革に取り組む前提となるのが、ゴールの設定だろう。「海外のトップ銀行は非営業系の業務の50%以上を削減しようとしています。日本でも行員が今の3割になることを想定すれば、変革に踏み切れるはずです」と下野氏は話す。

デジタル化を前提として
ゼロから業務を再構築する

 実際にゼロベースで業務プロセスを再構築するには、どのようなソリューションがあるのだろうか。下野氏はパーソナライズされた情報を収集し、ビッグデータ分析やIoTや社内外のデータやシステムとの連携を行うソリューション「ACTS(Accenture Connected Technology Solution)」を紹介した。

 ACTSのデモでは、AIチャットとの会話を通して顧客情報を収集し、クラウド上にデータを蓄積し、社内外のシステムと連動する様子が示された。注目すべきは、既存のiPhoneのAPIを組み合わせて作り上げていることだ。「すでにある手順の中で作られ、セキュリティも確保されています。完全にアジャイルで開発していきます」と下野氏は解説する。

 アクセンチュアでは、東京のソリューションセンターを拠点に、デジタル開発に対応した専門チームを立ち上げ、エンタープライズ向けに持続可能で大規模化に対応したアジャイル開発体制を構築している。同社はこのゼロベースで業務を再構築する手法をZBP(Zero-Based Process)アプローチと名付けている。

 「ZBPのゼロは考える必要がないという意味も持っています。すでにある技術を活用すればいいからです」と下野氏。ZBPは業務の一部を自動化する従来のアプローチとは違う。インプット・アウトプット・制約に着目し、プロセスはデジタルを前提にゼロベースで作り直す。既存の技術を使えば、短期間での開発が可能だ。

ZBPアプローチの考え方
これまで人を前提とした業務プロセスから脱却し、デジタルを前提に業務プロセスを再構築する
[画像のクリックで拡大表示]

 すでに海外の大手銀行では、このZBPアプローチによって海外送金プロセスを見直し、従来型のBPRでは22にしか集約できなかったプロセスを、6プロセスまで極小化した。「インプットとアウトプットに着目し、そこに制約としてのルールを加えれば、業務改革につながるシステムが開発できます」と下野氏。日本の金融機関がAIやRPAの恩恵を享受するためには、ゼロベースで業務を再構築することが必要なのではないだろうか。

お問い合わせ
  • アクセンチュア株式会社

    〒107-8672 東京都港区赤坂1-11-44 赤坂インターシティ

    TEL:03-3588-3000(代表)

    URL:www.accenture.com/jp

    メールでのお問い合わせはこちら