• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP
日経 xTECH Special 日経 xTECH 日経 xTECH Special

燕市のIoT活用によるものづくり産業の強化

第6回ものづくり産業の更なる活性化へ。燕市が取り組むIoTを活用したローカルイノベーション創出事業
~事例:燕市~

日本を代表するものづくりの地として知られる新潟県燕(つばめ)市。ここでは「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc(メタアーク)」を活用した、IoTによる生産工程可視化の実証実験が行われた。燕市では特定工程に特化した小規模事業者による分業体制が確立しているが、これらの事業者間の工程情報共有を、ICタグとクラウドの組み合わせで実現しようとしているのである。

燕市の特長である徹底した分業体制。
事業者間の生産工程可視化が重要課題に

 江戸時代初期に和釘作りから始まり、時代の荒波に揉まれながら進化を続けてきた燕市の金属産業。現代では金属洋食器や金属ハウスウェアが代表的な産業になっているが、その生産技術は多様な基礎技術へと派生しており、「複合金属加工基地」として重要な役割を果たしている。しかし事業環境は決して楽観できる状況ではない。事業者数は減少傾向にあり、労働生産性の向上も重要課題になっている。こうした中、燕市ではものづくり産業の活性化に向けて、IoTを活用したローカルイノベーション創出事業を推進している。

燕市産業振興部 商工振興課
課長補佐
柴山 文則

 「燕市はものづくりの地として知られていますが、それを構成している事業者の9割は20人以下の小規模事業者であり、分業体制で生産を行っています」と説明するのは、燕市産業振興部 商工振興課で課長補佐を務める柴山文則氏。このような環境で生産性を高めるには、事業者間の情報連携をどのように実現するかが重要になると考えていたという。「燕市内の事業者をヒアリングしたところ、生産工程の進捗や納品予定などのやり取りを、現在でもほとんど電話で行っており、効率的な情報共有ができていないことがわかりました。事業者間の壁をいかにして乗り越えるかが重要課題になっていたのです」。

 その一方で、熟練技術者の匠の技をいかにして若手に継承するかも、大きな課題になっていた。生産工程をすべて機械化することは難しく、作業工程のなかにはどうしても手作業が残ってしまうのだ。

 これらの課題解決の第一歩として燕市が検討したのが、複数事業者間をカバーした工程の見える化である。これに対して富士通は、MetaArcのクラウド基盤として提供されている「FUJITSU Cloud Service K5(以下、K5)」とICタグを組み合わせたIoTによって、モノと情報の流れを可視化する実証実験を提案。日本金属ハウスウェア工業組合の理事長を務めるイケダと高秋化学、サクライの協力のもと、「平成28年度ローカルイノベーション創出事業IoT実証実験業務」として、2017年3月にこの実証実験を実施した。

株式会社イケダ
専務取締役
池田 実

 「生産性向上のために自社内では工程管理のシステム化に取り組んでいましたが、これだけでは十分ではありません。分業工程を受け持っていただく企業との連携も必要だと感じていました。そこで、高秋化学さんやサクライさんと協力して実証実験に参加することにしました」と語るのは、イケダで専務取締役を務める池田 実氏。今回の実証実験に参加したのは、このような状況を改善できるのではないかという期待があったからだと説明する。「若手社員も育ってきており、いまのうちにIoTの仕組みに直接触れる機会を持てることは、会社の将来を考えたうえでもいいことだと思いました」。

燕市のものづくりの強みを最大限に引き出すうえでも、
IoTの活用は必須条件

 今回実証実験の対象となったのは、ステンレス製の給食カップとケーキバットの生産工程だ。まずイケダで絞り加工と側抜きを行い、製品の原型を製造。それを高秋化学で電解脱脂し、さらにサクライで塗装した後、イケダへと戻され検品される。従来はこの工程におけるモノのやりとりの管理を電話や紙の伝票(現品票)で行っていたが、伝票入力や電話確認の手間がかかり、リアルタイム性にも乏しかった。この問題を解決するため、現品票をICタグ内蔵のクリアファイルに入れ、トラック運転手がセンサー付き伝票ポストに投函することで、「いつ」「どこに」「何が」送られたのかを、リアルタイムで検知できるようにしたのである。検知されたデータはすべてK5上に集約。これを工程情報として見える化し、3社企業がそれぞれインターネット経由で確認できるようにしたのだ。

実証実験における生産工程と情報の流れ。モノの動きを管理するための現品票をICタグ内蔵クリアファイルに入れ、これをトラック運転手がセンサー付き伝票ポストに投函することで、モノのやり取りを自動的に把握可能にした。ここで得られたデータはすべてFUJITSU Cloud Service K5に集約され、工程情報として参加企業が参照できるようになっている。
[画像のクリックで拡大表示]
株式会社イケダ
池田 良太
ICタグ内蔵のクリアフォルダと、それを投函するためのセンサー付き伝票ポスト。投函するだけでモノの移動が検知されるため、伝票を手入力する必要がない。

 「以前は納品のタイミングを電話で確認しないとわからないことも多く、検品の予定を立てるときにも相手に確認する必要がありましたが、相手の状況が見える化されることで自分のペースで予定を立てられるようになりました」と語るのは、イケダの池田良太氏。配送の無駄も省けるようになったという。「共有された情報を配送スケジュールの立案に役立てることもできるはずです」。

株式会社イケダ
製造部
番場 祐希

 また池田氏と共にこのプロジェクトに携わったイケダ 製造部の番場祐希氏は、「これまで使ってきたソフトウェアでは伝票が手入力だったのですが、この仕組みはデータが自動的にクラウドに上がるため、手間がかかりません」と指摘。以前は丸一日かけて伝票入力を行う状況が毎日のように続いていたが、この実証実験ではその時間が不要になったと語る。

 その一方で「IoTというとハードルの高いものだと感じられるかもしれませんが、IoT活用にも様々な取り組み方があり、小規模事業者でも自社に合った方法を選べることを、この実証実験で示すことができました」と語るのは、燕市役所 産業振興部 商工振興課 ブランド推進係 係長の山﨑聡子氏。

燕市役所
産業振興部 商工振興課 ブランド推進係
係長
山﨑 聡子

 実証実験の内容はすでに複数のセミナーを通じて燕市内外に紹介しているが、いずれのセミナーも会場は満員となり、高い関心があることを実感しているという。「IoTに興味はあるが、具体的にどうすればいいのかわからないという企業は少なくありません。これからもセミナーを継続し、知っていただく機会を作りたいと思います」。

 今後は地域内への水平展開を進めていくと同時に、製品トレーサビリティを通じた品質管理にもIoTを活用することが検討されている。またウェアラブルデバイスを活用することで、匠の技を解析・デジタル化し、後継者への継承に役立てていくことも視野に入っているという。「近年は中国企業で生産されるものも増えていますが、発想力や工夫する力はまだまだ負けていないと自負しています」とイケダの池田専務。その力を最大限に引き出し、海外勢に対抗するうえでも、IoTの活用は必須条件になるという。

 日本が持つものづくりの底力を、いかにして引き出していくか。MetaArcはこのような領域でも、大きな力を発揮しつつある。

お客様や社会のデジタル革新を加速するプラットフォーム

FUJITSU Digital Business Platform MetaArc (メタアーク)

デジタル革新を支えるビジネスプラットフォーム。クラウド、モバイル、IoT、アナリティクスやAIなど最先端のデジタル・テクノロジーで、お客様の新たなビジネス変革を実現します。

もっと詳しく>>

お問い合わせ
  • 富士通コンタクトライン(総合窓口)

    TEL:0120-933-200

    受付時間 9:00~17:30(土・日・祝日・当社指定の休業日を除く)

    富士通株式会社 〒105-7123 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター

    http://www.fujitsu.com/jp/metaarc/