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IoTでウィンドサーフィンのスキルを向上

第7回ウインドサーフィンのスキル向上にIoTを活用。収集したデータでシミュレーションモデルを構築
~事例:日本ウインドサーフィン協会~

欧米では「海上のF1」として人気を集めているウインドサーフィン。そのスキル向上にICTを活用しようと、日本ウインドサーフィン協会と富士通、ラピスセミコンダクタによる実証実験が行われた。これはIoTデバイスを使い、セール操作のデータを収集・分析するというもの。これまでは感覚的にしか表現できなかったセール操作を可視化しようというのだ。富士通社員1人の個人の思いから始まり、数多くの人々との共創を生み出しているこのプロジェクト。これもまさに、「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc(メタアーク)」のコンセプトが具現化したものといえるだろう。

感覚的だったセール操作をIoTで可視化し上達の最短ルート発見へ

 セールボードとセールを接続した専用の道具を使用し、セールに受けた風で発生する力によって海面を進んでいくウインドサーフィン。風下から風上へ一斉にスタートし、ブイによってマーキングされた規定のコースを走り、スピードを競う「フォーミュラウインドサーフィン(アップウインド・コースレース)」、風上から風下へ設定されるショートコースを周回して先着を競う「スラロームレース」、一定時間内で多種の技を繰り出す「フリースタイル」などさまざまな種目がある。 1984年に開催されたロサンゼルス大会以降、五輪のセーリング競技の一種目としても登録されている。そのスピードの世界記録は時速100kmに達しており、欧米では「海上のF1」として人気を集めている。

 これらの競技で重要になるのが、セールと風の織りなす角度をきめ細かく調整する技術だ。しかしこれまでは、GPS装置による走行状況の確認や、動画撮影による指導は行われているものの、セール操作は経験値の要素が大きく、その分析はなかなか進まなかった。このような状況を打開するために2017年5月から5カ月間にわたって行われたのが、IoTを活用してセーリングスキルの向上に活かしていく実証実験である。

横井 愼也 氏
富士通株式会社
デジタルフロントセンター
横井 愼也

 この実証実験を発案したのは、富士通 デジタルフロントセンターの横井愼也氏。自身もウインドサーフィンの選手として活躍する横井氏は、個人で「Windsurfing Lab」を立ち上げ、ウインドサーフィンにおけるIoT活用を模索していた。「水面スレスレを疾走する爽快感にすぐ夢中になりましたが、セールの操作スキルは難しく、感覚的なものです。どのようなトレーニングを積めばいいのかなかなかわかりませんでした。そこでセンサーにより、セール操作の動きをデータ化し、上達のための最短ルートを見つけようと考えたのです」。
 2017年2月に日本ウインドサーフィン協会に提案を行い、実証実験の承諾を獲得。同年4月には正式に富士通社内のプロジェクトとなり、センサーデバイスを開発するラピスセミコンダクタの参加も決定する。そして日本ウインドサーフィン協会、富士通、ラピスセミコンダクタが共同で実証実験を行うことになるのである。

 この実証実験では、GPS情報と9軸センサー(加速度、ジャイロスコープ、地磁気)を同時に記録できる装置をラピスセミコンダクタが提供、これをウインドサーフィンのセールに取り付け、収集したデータをクラウド上にプログラムを置き解析している。これによってセールの動きを3次元モデルやグラフで可視化し、上位選手との違いを明確にすることで、改善点を検証できるようにしているのだ。

ウインドサーフィン
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セールに取り付けられたセンサー
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セールに取り付けられるセンサー。GPS情報と加速度、角加速度、地磁気を同時に記録できる。

セール操作の可視化と映像を組み合わせることで、初心者でも楽しめるスポーツに

 実証実験への参加者募集は2017年6月に開始。学生から強化選手、プロに至るまで、約20名が名乗りを上げてくれたという。実証実験の初期段階では、海岸にノートPCを持ち込んでデータを収集したうえで、参加者がどのような意識でセーリング操作をしていたのかについて、データを見ながらヒアリングを行い、スピードを出す動作の相関分析を進めていった。これと並行して運動方程式を使ったシミュレーションモデルも作成。AI(人工知能)の部隊にも協力してもらい飛行機の設計などで用いられるシミュレーションモデルをウインドサーフィンに置き替えた。その結果をプロ選手にフィードバックしてアドバイスを受ける、といったことも実施したという。

 「このような地道な取り組みを60回以上繰り返すことで、シミュレーションモデルの最適化を進めていきました。理論とデータから学習を繰り返しその結果、どのように操作すればスピードが出るのかがデータから見えつつあります。私自身まだまだ発展途上ですが、以前は自己記録を狙って出せなかったものが、狙って出せるようになりました。平均して最高時速が5~8km/hアップしています 」(横井氏)。

センサーから得られたデータを可視化。最適なモデルを見つけ出すため、計測とヒアリングを60回以上繰り返したという。スマートフォンやタブレット、PCでリアルタイムに閲覧可能。
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 その後、データ収集・分析のシステムをクラウド上に構築。収集したデータをクラウド上のプログラムですぐに解析し、セールの動きを3Dモデルやグラフで可視化できるようにしている。

 「ウインドサーフィンは日本ではまだマイナースポーツですが、この技術を確立してトレーニングに活かし、オリンピックに出場する日本選手にメダルを取ってもらうことができれば、観客の裾野も広がるはずです」と横井氏。また選手がどのようなセール操作をしているのかがリアルタイムでわかるようになれば、ドローン映像と組み合わせることで、初心者にもわかりやすいエキサイティングな映像を提供できるのではないかと指摘する。さらにVRも活用すれば、陸上でトレーニングできるシステムや、初心者でも気軽に楽しめる体験型アトラクションも開発できるはずだという。「このような取り組みを進めていけば、日本でも広く認知され、メジャースポーツに成長していくことが期待できます」。

 しかし横井氏が見ている世界は、ウインドサーフィンだけにとどまっているわけではない。ここで確立された技術を、ヨットなどに転用することも視野に入っていると語る。「ヨットは北米や欧州で人気があり競技人口もウインドサーフィンに比べ飛躍的に増えます。技術を発展させ、自動操縦の補助装置などにつなげていければ、スポーツだけでなく産業としても新たな市場を切り開けると考えます。また、海の風の影響を受ける海上物流へも、運航効率化に向けた技術転用も可能にしていきたい 」。

 一人の想いから始まったプロジェクトが、多くの人々との共創を生み出し、大きなムーブメントへとつながっていく。これはまさしくMetaArcの人・モノ・情報をつなぎお客様とともにデジタル革新を実現するというコンセプトを、具現化したものだ。MetaArcは今後スポーツの世界にも、多様なイノベーションをもたらす存在になっていくはずだ。

お客様や社会のデジタル革新を加速するプラットフォーム

FUJITSU Digital Business Platform MetaArc (メタアーク)

デジタル革新を支えるビジネスプラットフォーム。クラウド、モバイル、IoT、アナリティクスやAIなど最先端のデジタル・テクノロジーで、お客様の新たなビジネス変革を実現します。

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