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ITpro Special
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IBM、ディープラーニングで日立と協業

2016年10月、日立製作所(以下、日立)は、IBMのPOWERアーキテクチャーを採用したスーパーテクニカルサーバーのディープラーニング専用モデルである「SR24000/DL1」(以下、DL1)の提供を開始した。AI(人工知能)を実現するテクノロジーとして注目を集めているディープラーニング領域での2社の協業。この背景には何があり、両社はどんな役割を担っているのか。両社の事業責任者に話を聞いた。

成長市場をともに開拓してきた日立とIBMのパートナーシップ

― なぜ、ディープラーニング分野で両社が協業することになったのでしょうか。

日本アイ・ビー・エム株式会社
サーバー・システム事業部長
執行役員
朝海 孝

朝海 まず、日立とIBMにはこれまでも新しい市場をともに開拓してきた歴史があります。2001年にPOWERに関する戦略的協業を開始して以来、ミッションクリティカル・システム領域における POWERアーキテクチャーサーバーの導入をともに推進、その協業は今日に至ります。

株式会社 日立製作所
サービスプラットフォーム事業本部
IoT・クラウドサービス事業部
事業主管
郷 博

 当時発表した日立のエンタープライズサーバEP8000シリーズは、その高い性能と信頼性で多くのお客様から高い評価をいただき、今も提供を続けています。そして今回、新たな成長技術として注目を集めているディープラーニングにおいても、POWERアーキテクチャーを活用した協業を行うこととなりました。

日本アイ・ビー・エム株式会社
サーバー・システム事業部
事業開発 事業部長
宮本 昌門

朝海 AIを実践する具体的手法として注目されているディープラーニングは、画像認識で人間を超える能力を発揮するなど日々進化しており、ビジネスの場でもすでに多くのお客様が活用に向けた取り組みを始めています。

 日立はスパコン時代から科学技術計算に取り組み、機械学習のノウハウを蓄積してきました。近年では、日立社内における画像認識などでディープラーニングを実際に活用しており、こうしたノウハウをより広い分野に応用し、お客様のビジネスへの貢献につなげたいと考えてきました。ただし、本格的にディープラーニングを活用するにはそれを支えるシステムに高い処理性能が求められ、従来のコンピューター性能では限界に達することが課題になると感じていました。

朝海 ディープラーニング処理においてはデータ転送がネックとなりやすいことから、汎用プロセッサーとGPU間での高性能なリンク接続が効果的であることが共通認識となっていますが、IBMはそのワークロード特性をさらに研究し、GPUを搭載した一般的なx86マシンと比較してGPU-CPU間を2.5倍の帯域幅で接続する技術の開発に成功しました。IBMはこの技術を実装したPOWER8搭載サーバーをお客様にご提供するとともに、当アーキテクチャーを要素技術としてディープラーニング分野におけるキーソリューションプロバイダーである日立に提供しています。

 IBMから紹介を受けたとき、「まさにこれだ」と思いました。まさにこの技術こそが、ディープラーニングの実活用を推進する技術だと。そしてこのテクノロジーを日本の多くのお客様に提供したいと考え、SR24000 モデルDL1に実装、お客様への提案を開始しました。

宮本 IBMはデータセンターのイノベーションの加速を目的とするオープンな開発コミュニティー OpenPOWER Foundation (OPF)にPOWER8の仕様を公開しており、今回の技術はOPFにおけるNVIDIAとの協業によって生み出されたものです。革新的なイノベーションをスピーディーに創出するうえで、「オープンコラボレーション」はキーワードであり、企業の壁を超えた協業から成果が生み出されているのです。

榊原 POWERアーキテクチャーを通じ、IBMとの長年の協業を行ってきましたが、その圧倒的な性能は多くのお客様からの評価を見ても明らかです。今回発表したDL1は、ディープラーニングに求められる大量データの高速処理のニーズに必ず対応できると確信しています。

それぞれの強みを生かすことでディープラーニングが広がる

― DL1はすでに国内のユーザーに導入されているということですが、評価はいかがでしょうか。

株式会社 日立製作所
サービスプラットフォーム事業本部
エンタープライズプロダクツ本部 本部長
兼 HPCソリューションセンタ長
榊原 忠幸

榊原 国の研究機関などでお使いいただいていますが、一般的なx86サーバーに比べて「予想以上の高い効果が出ている」とご評価をいただいており、追加注文をいただくお客様もいらっしゃるほどです。国産のディープラーニングのフレームワークで国内最大のシェアを持つ「Chainer(チェイナー)」に対応していることも大きなポイントだと思います。

朝海 IBM東京基礎研究所と日立はPOWERアーキテクチャー上でのChainerの最適化および検証を実施し、最適化されたChainerは、IBM PowerAI(※)として公開されています。ChainerユーザーはサイトからPowerAIをダウンロードすることで、POWERアーキテクチャー上に簡単に高速ディープラーニング環境を構築できるということです。PowerAIは全世界に公開されており、日本人の手によって最適化された日本発のディープラーニングフレームワークがグローバルスタンダードになるのを楽しみにしています。 ※ IBM Power Systems向けに最適化されたディープ・ラーニング・フレームワーク

― ディープラーニングのビジネス活用を広げるうえでの課題はどこにあるのでしょうか。

 実際に使ってもらってこそ、その良さも伝わります。ディープラーニングを活用した際に得られる効果をわかりやすくお客様にお伝えしていくことが重要だと考えています。

朝海 その意味でも、幅広いビジネス領域を持つ日立に期待しています。日立の幅広いビジネスにおいて当社の最先端のテクノロジーを活用していただくことで、多くのお客様にその価値を理解いただけると考えています。公共、金融、交通、エネルギーなど広い事業領域を持つ日本の代表的な製造業である日立が自らディープラーニングを実践することで、日本市場でもディープラーニングが大きく広がると期待しています。

宮本 ディープラーニングの世界では、活用できるデータの量が重要です。日立の業態であれば、一般の企業に比べてはるかに大量のビッグデータを持っているはずです。だからこそ日立が率先して取り組むことに価値があると思いますね。そしてその実践から得られる知見をぜひ、多くの日本企業に展開していただきたいと思います。

 確かにそうですね。IoTによってより多くのデータが取れるようになっています。たとえば、製造ラインの機械のデータからいつ壊れるのかを予測することで、ダウンタイムを最小限に抑える予防保全。この領域でも当社で実践したノウハウが実際に蓄積されており、そういったノウハウをお客様にソリューションとして提供できることに当社の価値があると考えています。

ディープラーニングの実装をトータルで支援するスタートアップサービスを提供

― 日本市場にディープラーニングを広げていくためにどんな取り組みをされるのでしょうか。

 ディープラーニングには関心があるけど、どう取り組んでいいのかわからないというお客様は多いのではないでしょうか。どんなデータを使って、どう取り組んで、どんな結果を出すのか。それを支援するには、コンサルティング能力も必要です。

榊原 そのためにもまず日立社内でディープラーニングを活用し、ユースケースから得た知見をお客様に届けていくようにしたいですね。そのためのサポート部隊も組織し、環境は整いつつあります。

― DL1をどのように提供していくのでしょうか。

榊原 コンサルティングとセットでDL1を提供する「ディープラーニング・スタートアップサービス」を用意しました。ハードウェアを販売するだけではなく、ソフトウェアの情報、インストールや設定などの導入支援、お客様の実データを用いたディープラーニング学習支援など、ディープラーニング業務立ち上げのための各種サービスを統合して提供します。

 今回のIBMとの提携で信頼できるハードウェアの準備が整い、日立としてはお客様の課題解決にしっかりと軸足を置くことができるようになりました。
 今後、データの取得フェーズからディープラーニング実装にわたる取り組みを支援することで、ディープラーニングの価値をより多くの方に理解してもらい、ビジネス上の価値を提供していきたいと考えています。

朝海 お客様が自ら、データから生まれる新たな価値を実感されることで、ディープラーニングが広まっていくと考えています。“データの錬金術師”としての日立のご活躍を期待しています。

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