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ヴイエムウェアとIBMがクラウドを語る

 クラウド・インフラとビジネスモビリティをリードしてきたヴイエムウェア、クラウド事業に注力するIBM。両社は2016年2月、世界規模での新たなパートナーシップを発表し、その後、11月まで様々な形での拡大を発表。IBMクラウドにはVMwareベースのIaaS(Infrastructure as a Service)だけでなくベアメタルのインフラが登場し、オンプレミスとクラウドをシームレスにつなぐ環境が生まれた。これにより、オンプレミスとクラウドの間、あるいは異なるクラウド間でのアプリケーションの移動が容易になる。両社のパートナーシップは、企業にどのような選択肢をもたらすのか。
  • ジョン・ロバートソン氏

    ヴイエムウェア株式会社
    代表取締役社長
    ジョン・ロバートソン氏

  • 三澤 智光氏

    日本アイ・ビー・エム株式会社
    取締役 専務執行役員
    IBMクラウド事業部長
    三澤 智光氏

拡大するクラウド活用、
ミッションクリティカルアプリケーションからの移行が大きなテーマに

――クラウド市場は拡大を続けています。お二人は、企業のクラウド活用の現状をどのようにみていますか。

ロバートソン グローバルにみると、今後数年間の間に半数以上のアプリケーションワークロードがパブリック・クラウド上に移行するという見方もありますが、国内においては少々事情が異なると考えています。
 例えばIDC Japanは、2020年の国内パブリック・クラウド市場は7346億円(*1)、プライベート・クラウド市場は2.9兆円(*2)に拡大するとの予測を発表しています。クラウド・ネイティブを中心としたパブリック・クラウドの導入が進む一方で、従来のシステムについては、セキュリティーをはじめとした日本の厳しいエンタープライズユーザーの要件を満たすプライベート・クラウドへの需要が大きいと感じています。
 日本においては、メインフレーム主体の時代からシステムアウトソーシングが活用されていましたから、クラウドを活用するという考え方自体も企業のニーズには非常に合致していると考えています。今後はいかにミッションクリティカルなアプリケーションをクラウドに移行させていくかが重要な課題になると認識しています。
 また、アプリケーションの要件によって、既存システムとクラウドが連携したハイブリッド・クラウド、さらには複数のパブリック・クラウドとの連携を実現するマルチ・クラウドの利用が加速していくと考えています。この要求に応えていくため、IBMをはじめとするvCloud AirTM Networkパートナー企業との協業を加速させていきたいと考えています。

出所:IDC Japan
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三澤 確かにクラウドは多くの企業に浸透してきましたが、あえて言えば、これまではクラウド・ネイティブの企業のための技術だったように思います。アマゾンやグーグル、フェイスブックといったクラウド・ネイティブの企業がビジネスを展開するうえで、パブリック・クラウドは最適のプラットフォームです。
 一方、大半の日本企業はクラウド・ネイティブではありません。オンプレミス、あるいはプライベート・クラウド環境で既存システムが動いています。ただ、多くの企業がパブリック・クラウドの利用度を高めたいと考えているのも確かでしょう。既存システムをいかにパブリック・クラウドに移行させるか、あるいは両者をいかに連携させるか。これが、今の大きなテーマです。

進化するヴイエムウェアのクラウド・インフラ技術とIBMクラウドの3つの強み

――企業のクラウドへのニーズが変化しつつある中で、ヴイエムウェアとIBMはどのような分野に注力しているのでしょうか。

ロバートソン ヴイエムウェアは創業以来一貫して仮想化技術に取り組んできましたが、最近は「VMware Cross-Cloud ArchitectureTM」という方向性を打ち出しています。この4年ほどは、コンピューティングのみならず、ストレージやネットワークの仮想化も含めたSDDC(Software-Defined Data Center)の推進を行ってきました。その中で、冒頭で申し上げたように複数のクラウドを使う環境が求められていることから、昨年8月に「VMware Cross-Cloud ArchitectureTM」を発表しました。
 VMware Cloud FoundationTMにより、SDDCの実装と運用管理が容易になり、VMware Cross-Cloud ArchitectureTMにより、プライベートとパブリックの連携によるハイブリッド・クラウド、複数のパブリック・クラウドを連携させるマルチ・クラウドを1つの管理ツールで統合管理することができます。これにより、ユーザー企業はクラウド・ベンダーにロックインされずに、自社のビジネス要件に合わせていろいろなクラウド・サービスを組み合わせて使用することができます。

三澤 私たちは2016年から、「IBMはコグニティブ・ソリューションとクラウド・プラットフォームの会社」というメッセージを発信してきました。クラウド事業をさらに強化するための差別化ポイントは大きく3つ。第1に、AI活用の環境を提供すること。IBMはクラウド上で33種類のAIエンジンを提供しています。
 加えて、お客さまが社内外のデータを格納するオブジェクト・ストレージ、アナリティクス・ツールなどもクラウド上に用意しています。コスト削減やスピードアップといったメリットなら、クラウドが実現できて当たり前。プラスアルファの価値をクラウド上で拡充していくことが私たちの目指す方向です。
 第2に、オープンスタンダードです。通常、パブリック・クラウド上で構築したアプリケーションは外に持ち出せません。いわゆる、ベンダーロックインです。これに対して、オープンスタンダード技術でつくったクラウドなら、他のクラウドやオンプレミスとの親和性は高い。また、クラウド・インフラのスタンダードであるVMware製品との連携も容易です。
 第3に、ハイブリッド・クラウドを強く意識していること。オンプレミスとパブリック・クラウド、あるいは複数のクラウドをシームレスにつなぐために、ヴイエムウェアのテクノロジーが重要な役割を果たします。2016年春に発表したヴイエムウェアとのパートナーシップ拡大の背景には、こうした認識があります。

――パートナーシップについてはのちほどお聞きしますが、IBMクラウドではブランド統合の発表もありました。

三澤 当社のクラウド事業には、これまで3つのブランドがありました。IaaS領域の「SoftLayer」、オープンスタックのマネージドサービスを提供する「Blue Box」、そしてPaaS領域の「IBM Bluemix」です。これら3つのブランドを統合し、IBM Bluemixとしてまとめました。これまでは別々だったIDを統合するなど、お客さまの使い勝手も向上しています。

両社のパートナーシップがユーザー企業にもたらす価値

――では、ユーザー企業に対して、両社のパートナーシップはどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

ロバートソン いくつかのポイントがありますが、まず当社にとってクラウドにおける豊富な経験と実績を持ち、特にエンタープライズ領域に強いvCloud AirTM Networkパートナー各社との協業は、お客さまにとって安心感のあるクラウドを実現できるという点で重要です。先ほど安心感と言いましたが、その中にはセキュリティーも含まれます。エンタープライズ領域におけるセキュリティーの重要性については、言うまでもありません。
 当社にとってIBMはOEMパートナーとしても、システムインテグレーション・アウトーソーシングパートナーとしても10年以上にわたる長い協業の歴史があり、お互いのことをよく知っている間柄です。IBMとのパートナーシップの中で、このようなお客さまの様々なクラウドへのニーズを満たしていくことが、ハイブリッド・クラウド、マルチ・クラウド化の動きをさらに加速させることになると期待しています。

三澤 お客さまにとっての一番のメリットは、おそらく選択肢が広がるということ。オンプレミスで使い続けるアプリケーションもあるでしょうが、将来的にクラウド化を検討するかもしれません。法規制の変化を受けて、その国ではクラウドからオンプレミスに戻すといった判断がなされる可能性もあるでしょう。AクラウドからBクラウドへ、アプリケーションの移行が必要になることも考えられます。将来のビジネス環境の変化に柔軟に対応するためには、ハイブリッド・クラウドのデザインが極めて重要です。
 ヴイエムウェアとIBMの技術を組み合わせることで、お客さまのワークロードをどこにでも配置ができるようになります。両社が手を携えて、お客さまのよりよいプライベート・クラウド環境、そしてハイブリッド・クラウド環境づくりをサポートする。そして、お客さまの次世代ビジネスの基盤づくりに貢献したいと考えています。

IBMクラウドの提供価値

――エンタープライズアプリケーションの場合、クラウドへの移行には相当の工数がかかると思いますが。

三澤 これまで、エンタープライズアプリケーションの場合、クラウド移行には相当の工数がかかっていました。オンプレミスのシステムは通常、運用と開発のチームに分かれて担当しています。運用チームの守備範囲にはITインフラのメンテナンスに加えて、サーバー管理やバックアップなどの非機能要件も含まれます。オンプレミスのシステムにおいては、ITインフラに非機能要件が実装されているのです。

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 ところが、AWSなどの一般的なパブリック・クラウドのIaaSでは非機能要件がサポートされていません。オンプレミスの現行システムをそのようなIaaSに載せようとすると、非機能要件をアプリケーションに実装しなければなりません。このようなアプリケーションの書き換えが工数の増大をもたらします。
 IBMクラウドは、この課題への解を提示します。IBMクラウドは仮想化されたIaaSだけでなく、ベアメタルのインフラも用意しています。オンプレミスとまったく同じアーキテクチャーを実現できるので、オンプレミスの非機能要件をそのまま移すことができる。これまでのような手間はかかりません。
 さらに、データの移動という観点で言えば、IBMクラウドは、グローバルに広がるデータ・センター間のネットワークを無償で提供しています。ユーザー企業だけでなく、ヴイエムウェアのパートナーにも、今後のVMware Cloud FoundationTMの需要に備えて、テスト環境としてIBMクラウドをお試しいただきたいと考えています。IBMクラウドであれば、そのテスト環境がクラウド・ベースの料金体系なので、お試しいただくには最適な環境だと思っています。

ハイブリッド・クラウド、マルチ・クラウドの世界を見据え、いち早くパートナーシップの取り組みを開始したヴイエムウェアとIBMクラウドに注目したい。

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