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デジタル変革の時代が到来技術が経営の勝敗を決める

デジタル変革が企業経営を大きく左右する時代が到来した。その対応を誤ると企業の存立さえも揺るがしかねない。デジタル変革を支えるのは、クラウド、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)などの技術だ。日経BP社は2017年3月、Cloud Daysを東京と大阪で開催し、デジタル変革の勝敗を決める数々の技術を一堂に集めた。展示会を通して数多くの最新の製品・ソリューションを紹介する一方で、企業関係者や識者がそれぞれの立場で最新動向について語った。

業務効率化、コストダウンだけでは時代遅れ 「攻め」の姿勢への転換の成否は組織変革に
カネカ
業務革新推進部
情報システム室長
矢吹哲朗 氏

 「これまでIT部門は業務効率化、コストダウンに主眼を置きました。しかし、グローバル化、グループ経営などの進展で、経営陣の要求も多岐にわたり、事業活動でも変革が求められ、製造業でもITの活用を金融業や流通業のように企業戦略に直結したものに変える必要があります」。カネカの矢吹哲朗氏はこう話す。

 カネカは、すべてのシステムをクラウド環境に移行する方針を固め、それに向けてI Tの戦略的活用を進めている。既に本社ビル移転を契機にワークスタイル改革を実施し、コミュニケーション基盤を刷新するなどIT改革で成果を上げている。それを支えているのが組織変革だ。具体的には、(1)人材の変革、(2)マインドの変革、(3)仕事の質の変革、に力を入れてきた。

 「情報システム部門という組織そのものを会社全体から信頼され、自ら誇りを持てるようにしていきたいと思います」。矢吹氏はこう宣言して講演を終えた。

“置き弁”とスマート冷蔵庫を組み合わせて オフィスのIoT健康管理
AIVICK
代表取締役社長
矢津田智子 氏

 システム会社のAIVICKはIoTを活用し社員に弁当を提供している。プログラマーやシステムエンジニアの食生活を改善するため、新鮮な弁当の提供を始め、のちに事業化して「置き薬」ならぬ「置き弁」を始めた。

 コンビニ弁当が普及する中、カロリー計算や栄養バランスを考えた弁当を調理、配達し、企業にある冷蔵庫に置き弁として入れておく。ネットで予約しておけば弁当をいつでも取りに行ける。問題は間違って弁当を持っていく人がいるなど管理面で発生した。

 AIVICKはパナソニックと提携し、スマート冷蔵庫を使うことで社員証などのI Cカードで冷蔵庫のロックを解除し、弁当を取り出してQRコードを読み取ることで、問題を解決した。クラウドと連動しており、料金精算、在庫管理、庫内温度モニターなどを自動処理する。「今後はIoTで社員の自己管理や健康管理を支援する事業を考えています」。AIVICKの矢津田智子氏はこう話す。

2万4000人が使うグループウエアを内製化 IaaSとOSSをフルに活用してコストを削減
積水化学工業
経営管理部
情報システムグループ長
原和哉 氏

 積水化学工業は現在使用中のグループウエア、iSmileを内製化した。アマゾンウェブ サービス(AWS)の採用に加え、メールサーバーやWebアプリケーションサーバー、データベース管理システムなどにはオープンソースソフトウエア(OSS)を全面的に活用した。

 「AWSを使ったことで、インフラ担当のエンジニアをグループウエアの開発にまわすことができ、開発が加速しました」。積水化学工業の原和哉氏はこう振り返る。

 内製化を図った最大の理由はコスト削減にある。ベンダーのグループウエアだとユーザーI D単位の課金になり、グループの社員が増えるとコスト増になる。

 ワークスタイル変革の一環として2016年にiSmileにチャット機能を追加し、社内コミュニケーションが一段と効率化した。プレゼンス機能も備え、在席中かどうかも把握でき、チャットの記録も残すようにしている。

登録客向け情報提供サイトに軸足を置きCRM展開 メールにDMも併用、家族に波及。サポート平準化も
パナソニック
コンシューマーマーケティングジャパン本部
クラブパナソニック運営部
部長
中村愼一 氏

 パナソニックは製品の顧客を対象とした情報提供サイト、CLUB Panasonicを基本に据え、CRM戦略を展開する。「会員へのメール配信などと組み合わせて顧客との関係を維持し、当社製品が常に購入候補になるよう心がけています」。パナソニックの中村愼一氏はこう話す。

 会員には男性シニア層が多い。PCを主に利用するため、スマートフォンではなくPCを優先した構成にする。メールによる情報提供を実施し、「エアコン購入者にシーズン前の点検を呼びかけ、シーズン中のサポートコールが平準化しました」(中村氏)。

 サイト上の商品閲覧履歴をもとにキャンペーン情報の提供も展開し、郵送も併用している。「郵送のDMは家族も見るので波及効果が大きいと思います」(中村氏)。今後はサイト閲覧履歴だけでなく、録画機器の録画情報なども組み合わせ、さらに効果的なプロモーションを展開していく方針だ。

データによる田んぼの把握、IoTを使った無人・自動運転農機 スマート農業によって農家の生産性向上による所得増を支援
クボタ
取締役専務執行役員
研究開発本部長
飯田聡 氏

 「当社はスマート農業によって農家の生産性向上を支援し、所得が倍増する『儲かる農業』を目指しています」。クボタの飯田聡氏はこう話す。

 その柱の1つは「クボタ スマート アグリシステム(KSAS)」。農家が収穫結果や作業記録を管理する営農支援システムと、クボタがインターネット経由で集めた農機の稼働状況を管理するサービスシステムで構成。データはKSASクラウドで管理し、それをトラクターに配信し、だれでも熟練した施肥ができる。実験では収量が15%アップした。

 もう1つの柱はIoTを使った無人・自動運転農機。センサーとGPS(全地球測位システム)で位置をリアルタイムに制御し、指定範囲を一定の順序で走行する。100メートルの直進で誤差は10センチメートルほどだ。2016年秋にオートステアリング技術を搭載し直進を保つ性能 を備えた田植え機を発売し、完全無人の自動運転農機の実現を目指す。

推進担当者の任命などきめ細かくサポートし タブレットを使った業務スタイルが全社に定着
竹中工務店
グループICT推進室
システム企画・整備1グループ長
森康久 氏

 「タブレットを配るだけでは使われません」。竹中工務店の森康久氏はこう話す。同社は2014年からタブレットを活用した業務スタイル「竹中スマートワーク」を展開し、今では従業員の97%が日常的に利用するほど定着している。その背景には、きめ細かなサポートがある。

 約100人の推進担当者の任命はその最たるものだ。全国に常時約800カ所の作業所がある。現場巡回サポートなどによって支援する一方で、あまり利用しないユーザーのフォローにも力を入れた。また、社内に専用のWebサイトを開設、活用事例を発信するほか、社員が見つけて役立っている便利なアプリなども紹介した。

 今後はペーパーレス化を一段と推進し、データの高度な活用、映像や音声のナレッジとしての使用のほか、ウエアラブル端末やサイネージ、コミュニケーションボードなど多様なシステムも組み合わせていく方針だ。

カーシェア、自動運転…事業環境の変化に危機感 新規事業を積極展開しながら人事も兼務する狙い
IDOM
執行役員
新規事業・人事担当
北島昇 氏

 中古車販売店「ガリバー」などを運営するIDOM(旧ガリバーインターナショナル)は事業環境の変化に危機感を抱き、デジタルトランスフォーメーションに取り組む。所有だけでなく、カーシェアリングのような利用に前向きな消費者が増える一方、AI による自動運転車が現実味を帯び始めた。車の個人売買アプリ「クルマジロ」、AIによる車種レコメンド機能の「クルマコネクト」などに力を注ぐのはその一環。2016年7月に未来へ「挑む」の意味を込め社名をIDOMに変更した。

 新事業を立ち上げた経験者やITスキルにたけた人材の採用にも積極的だ。人事制度改革、組織再編などにも取り組み、社内文化の刷新を図る。「新しく採用した人材によって、社員一人ひとりが変わらなければ企業は変わりません。そのため、人事制度、組織に手を加え、社内文化の刷新を目指しています。私が新規事業と人事を兼務している理由もそこにあります」。IDOMの北島昇氏はこう話す。