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AI活用で働き方、生産性、競争力をアップ

エンタープライズ・クラウドコンピューティングのパイオニアとして、この分野をリードしてきたセールスフォース・ドットコム。同社のCRMは進化を続けている。近年はAIの実装と高度化に向けた取り組みに注力。こうした機能を活用して働き方改革を推進しつつ、生産性向上と競争力強化を実現したユーザー企業は多い。同社の「AI Einstein」をはじめとする先端テクノロジーを概観する。

対象人材を広げて社員を確保
ビジネスの成長を目指す

 今、多くの企業が働き方改革を加速させようとしている。なぜ働き方を変えなければならないのか──。セールスフォース・ドットコムの田崎純一郎氏は、その理由を「確定した未来に対応するため」と指摘する。

セールスフォース・ドットコム
プロダクトマーケティング
ディレクター
田崎純一郎

 「日本の生産年齢人口は減少しつつあります。少子化が進行している以上、生産年齢人口を急に増やすことはできません。このような確定した未来を前提に、企業は成長戦略を描かなければなりません。優秀な人材を確保するためには、募集対象を広げる必要があります」

 このような背景から、多くの企業では社員の多様化が進むと考えられる。ダイバーシティはCSRの文脈で語られることもあるが、企業の成長にとって必須の取り組みでもあるのだ。

 「多様な人材を集めるためには、自らが変わらなければなりません。体力勝負、長期間労働が当たり前という従来の常識、従来の働き方を変えるのです。それぞれが異なるバックグラウンドを持つ人材がすぐに仕事を覚えて一定以上のレベルに達するためには、『こうすればできる』という一種の“ 教科書” を用意する必要があります」と、田崎氏は解説する。

 「Salesforce」は、教科書の役割を担うことができる。そんな事例として、田崎氏が紹介するのは従業員20人余りのニッカル商工(東京都大田区)。アルミ製品の卸売業である。

スマートなCRMを実現する
「みんなのデータサイエンティスト」

 「ニッカル商工は10 年ほど前、Salesforceを導入しました。きっかけは、団塊世代の引退です。同社は当時、紙やExcelで顧客管理や商談管理を行っていましたが、これでは円滑な引き継ぎが難しいのではないかと考えました。引退間近の先輩たちの営業スタイルは経験頼みの部分もあり、若い世代への引き継ぎが難しい。そこでSalesforceをベースに、属人化した業務の標準化に取り組みました(田崎氏)

 情報を一元管理して営業ノウハウを可視化したことにより、ニッカル商工では新人育成期間を3分の1に短縮できたという。また、パート従業員も仕事をしやすくなった。alesforceを見れば、どの顧客とどこまで商談が進んでいるかが一目瞭然。直接の担当者でなくても、顧客からの問い合わせに対応することができる。

図1 スマート営業にEinstein
[画像のクリックで拡大表示]

 セールスフォース・ドットコムが注力しているのが、AIだ。昨年だけで1000億円以上を、AIに投資したという。

 「画像やセンサーデータなどが容易に収集できるようになった今、膨大なデータをどのように分析しビジネスに活用するかが、問われています。こうした業務を専門とするデータサイエンティストは不足しており、世界的に奪い合いの状況です。このままでは、せっかくのデータが埋もれたままということにもなりかねません。こうした課題の解決に向けて、私たちはAIを進化させています」と田崎氏は語る。

 同社の各種クラウドサービスに実装されたAIは、「Salesforce Einstein」と呼ばれる。そのコンセプトは「AI の民主化」だ。クラウド上のシステムの裏側で機能し、様々なサービスを支えてスマートなCRMを実現する。

 Einsteinはデータを「集め」、機械学習などの機能で「学ぶ」ことができる。さらに、新しいコミュニケーションの形で、顧客と「つながる」こともできる。アウトプットの形は大きく4つ。「発見」、「予測」、「推奨」、「自動化」である。

見込み客のスコアリングと
マーケティング活動の自動化

 米国のスクエアは、POSレジの機能やクレジットカード決済などのサービスを提供する新興企業である。

 「スクエアには、飲食店や小売店などから月に2.5万件ほどの問い合わせがあるそうです。見込み客情報はリスト化されて、営業部門に渡されます。ベテランの営業担当者なら、『この業態なら成約の可能性が高い』とか『この地域の飲食店は期待できる』という風に的確な判断が可能でしょう。しかし、経験が少ない担当者には難しい。人を育てるには時間がかかります。そこで、スクエアは先輩たちが蓄えたデータをEinsteinに読み込ませ、見込み客のスコアリングを作成しました」

 こうして、成約可能性の高さなどの観点から、リスト内の企業に優先順位がつけられた。Einsteinは「このお客様はすぐにフォローしたほうがいい」と、営業担当者が次に実行すべき行動を推奨することもできる。(図2)

図2 顧客の優先度やアクションタイミングを示唆
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 「これまではベテランしかできなかったことを、AI がしてくれる。この仕組みにより、スクエアの業績は大きく向上しました。当然、社員の生産性は高まっています」と田崎氏は説明する。

 もう1つの事例は、スポーツ用品を提供する米国のファナティクス。同社は様々なスポーツのプロチームなどの公式ウエアやグッズ類を扱っている。そのプロモーションの一環として、同社は年間40億通のメールを登録会員などに送信しているという。

 「スポーツチームは非常に多い。例えば、あるチームのファンに、ライバルチームのグッズをオススメするメールを送ればどうなるでしょう。ファナティクスの印象は最悪のものになるでしょう。メールの内容は、絶対に間違えることができません」と田崎氏。

 「年間数十億通ものメールの作成と送付を人手で行うのは困難。そこで、ファナティクスはEinsteinを活用しています。これにより、1人の顧客に対してベストのタイミングで、カスタマイズされたメールを送ることができる。顧客に対するマーケティングを自動化することにより、同社は5人のフルタイム担当者でCRMのオペレーションを回しています」(田崎氏)

 当然ながら、セールスフォース・ドットコム社内でもEinsteinが活用されている。「このお客様にはこんな提案が適しています」といった推奨、あるいは気づきを与えることで、各営業担当者のパフォーマンスが向上。働き方にも変化が見え始めたようだ。

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