• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
ITpro Special
週間WEEKLY ITpro Special ITpro

Cloud Days 2017 九州/名古屋/札幌 総論

企業のITシステムがクラウドの形で発展してくるなかで、ビッグデータやモバイルを巻き込みつつ、いまではIoT(モノのインターネット)につながり、A(I 人工知能)が介在してくるようになった。ビジネスモデルも地方創生も働き方改革も、これらデジタル技術とともに、一気に変革へ向かう可能性が出てきた。日経BP社は2017年5月から6月にかけて、名古屋、札幌、九州(福岡)でCloud Days 2017を開催した。展示会場では数多くの企業が最新のデジタル技術を出展し、製品やサービスのデモンストレーションを行った。また、セミナー会場ではIT企業やユーザー企業が講演し、最新動向や事例などを紹介した。
農家と議論し考え、実行するファームノートの挑戦
ファームノート
代表取締役
小林晋也

 2013年設立のファームノートはシステムの受託開発事業からスタートし、現在では農業関連のクラウドサービスなどを展開している。本社が置かれているのは酪農の本場、北海道帯広市である。

 「牛の管理システム『Farmnote』を使えば、スマホなどを使って牛のデータにアクセスできます。牛の調子が悪いときなど、以前は事務所に戻ってその牛の情報を確認していました。これを使えば、その場で情報を参照できる。シンプルな機能ですが、酪農家から非常に喜ばれました」と語るのは、同社代表取締役の小林晋也氏である。

 続いてリリースされた「Farmnote Color」は、牛の首に取り付けたセンサーデバイスから活動情報を収集。リアルタイムで得られた情報を元に、発情の兆候などを掴む。「牛の妊娠率が向上し、多くの酪農家の所得増につながっています」と、小林氏は指摘する。全国の酪農家がこれらのサービスを活用して経営力を高め、生産性と売上を高めている。

 同社が注力しているポイントの1つは、手間のかからない入力だ。牛の世話などに追われる酪農家にとって、入力項目の多い仕組みは負担が大きい。Farmnote Colorなどでは、データの自動収集にこだわった。集まったデータの分析にも力を入れている。

 小林氏が目指すのは「農業版グーグル」だ。酪農の次に、施設園芸分野のサービスも手掛けようとしている。全国の農家と議論しながら、一緒に考え、一緒にソリューションを実現していく。ファームノートのイノベーションは、これからさらに加速しそうだ。

世界につながるイノベーションは北海道から

 全国各地でのAIやIoTの活用を促進すべく、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構の後押しでスタートした地域版IoT推進ラボ。北海道地区を代表して札幌市IoTイノベーション推進コンソーシアム、函館市と釧路市、士幌町のIoT推進ラボが参加。パネルディスカッションには、4地域のキーパーソンが一堂に会した。

 札幌市の活動は多岐にわたるが、牽引役と位置付けられるリーディングプロジェクトがある。札幌市の運営するコールセンターのデータ活用だ。同市の村椿浩基氏は、「10年以上の活動を通じ、コールセンターには膨大な履歴データが蓄積されています。このビッグデータを役立てたい」と説明する。

 他の担当者も、それぞれの地方での取り組みを開陳した。釧路では、特に外国人観光客向けに、観光分野IoTに注力している。十勝地方士幌高校での、栽培データを集める農業IoT「e-kakashi」。はこだて未来大学の「マリンI T 」「モバイルIT」「メディカルIT」推進などだ。

 各地域のプロジェクトはまだ始まったばかりだ。やがて北海道で実証された先進活用事例が、全国そして世界に展開される日が来ることだろう。

IoTの導入が中小企業の競争力を高める
ハードルを下げる取り組みが活発化
i Smart Technologies
代表取締役社長 CEO
木村哲也

 「町工場でも成果の出せるIoT! ~昭和の機械も接続~」と題して講演したのはi Smart Technologiesの木村哲也氏である。

 同氏が社長を兼務する旭鉄工の生産性を改善しようとIoTの導入を検討したところ、どのシステムも大掛かりで、新設の機械はつながることができても、旧式の機械がつながらない問題があったという。

 しかし、既設の警告ランプの点灯を市販の光センサーで検出したり、生産ライン出口の扉の開閉をマグネットセンサーで検出したりして、その情報を外部クラウドに集約して分析するという簡易なシステムを自作した。

 このIoT導入によって生産数や停止時間の見える化と、その結果に基づく現場でのミーティングおよび改善の効果があり、バルブガイド出来高の15%が向上し、けん引フック出来高の69%も向上するなど業績が明確にアップした。さらに、ラインの新設が不要になったこともあり、約3億円の設備投資の削減が図れて、生産品質も改善されたという。

 i Smart Technologiesでは、このIoTシステムと運用サービスを安価な汎用ソリューションとして販売している。すでに様々な町工場などで実績がある。最後に木村氏はIoT導入を成功させる秘訣を語った。「従業員が監視されているという意識ではなく、働きを上の人に見てもらえているという意識を持てるように、醸成していくのが重要なことです」(木村氏)と、IoTが意欲を高めるツールにすることを主張した。

世界有数のものづくり県「愛知」に危機感
IoTで次の時代もリードする施策を実施

 愛知県の産業労働部産業振興課次世代産業室室長を務める佐々木靖志氏は、「IoTの利活用の促進に向けて~愛知県IoT推進ラボの紹介~」と題したキーノートセッションで、同県の取り組みを紹介した。

 愛知県IoT推進ラボは、政府の「日本再興戦略2016」に基づいた公募によって設立された愛知県の組織である。「愛知県は世界有数のものづくり県だが、IoTの利活用を進めていかないと次の成長につながっていかないという危機感のもと、公募に手を挙げた」(佐々木氏)という。

 県内産業で中心的な役割を果たしている自動車、ロボット、健康長寿などの産業分野を中心に、県内の中小企業のIoT導入・活用を促進し産業の強化に結びつけるのが狙いだ。相談窓口、案件発掘、導入サポート、実証実験支援、情報提供、セミナー開催などの事業を行っている。

 続いて、愛知県立大学教授で同大情報科学共同研究所所長を務める小栗宏次氏がキーノートスピーチを引き継いで登壇し、「“IoT”時代、ものづくり王国愛知からのチャレンジ」と題して講演した。

 小栗氏は愛知県IoT推進ラボのアドバイザリーボードの座長を務めており、「ものづくり日本一の愛知県ならではのIoT成功モデルの創出を目指す」と、社会構造の変革という大局観からIoT時代の愛知県の行く末を展望し、愛知発の技術を紹介した。

人口増/文化/住環境で企業進出が相次ぐ福岡市

 人口増加著しい福岡市では、全国から進出する企業が相次いでいる。最近福岡市に拠点を設けたIT関連企業4社の責任者が登壇し、福岡進出の理由について語った。モデレータは福岡アジア都市研究所の中島賢一氏が務めた。

 アカツキの小倉将氏は福岡市の人口増を理由に挙げ、「特に若い人が多く、専門学校などゲーム開発の素養がある人が育っている」と期待する。

 さくらインターネットの櫻井裕氏は、「福岡市には新しいことに取り組む人を後押しする雰囲気、文化がある」と進出理由を挙げた。

 ピクシブの東根哲章氏は、住環境を理由に挙げた。同社の東京本社では、社員を通勤ストレスから解放するためオフィス近くに居住することを推奨している。「福岡はそうした制度がなくても実現できている」。

 メルカリの山田和弘氏は、福岡市の人口構成が最適だったという。「大規模な都市で、若くて、先端技術に関心のある人材が多い街というと、実はそんなに選択肢はない」と評価した。

地方版IoT推進ラボが集積する福岡県
3自治体が個々の取り組みを紹介

 IoT推進ラボの地方版として2016年に全国に設けられた「地方版IoT推進ラボ」29自治体のうち、3つが集積する福岡県。その3自治体の各担当者が取り組み状況や課題について議論した。

 福岡県商工部新産業振興課企画監の見雪和之氏は、「福岡県IoT推進ラボ」で既に飲酒運転防止システムなど具体的な製品化に向けた取り組みが進んでいると説明。2017年度はビニールハウスの環境管理システムなどに取り組む計画だ。

 「北九州市IoT推進ラボ」の主管である北九州市産業経済局企業支援・産学連携部新産業振興課長の山下耕太郎氏は、IoT推進ラボの活動についてこれまで集積したICT基盤と産学官民金の支援体制で地域課題の解決に取り組んでいることを説明。ものづくりで発展した同市の下地を踏まえ、製造業にフォーカスしたIoTの活用を図るという。

 「福岡市IoT推進ラボ」の事務局を務める九州先端科学技術研究所専務理事・副所長の荒牧敬次氏は、IoTの実証実験支援の一つとして、2017年8月から市内を低消費電力の無線通信規格「LoRaWAN」でカバーする計画を説明した。一方で各種センサーの設置には電柱やマンホールなども含め、「特定エリアは自由に設置できるような仕組みもほしい」と規制緩和にも期待を込めた。