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全日本空輸/官民の大同団結で“観光先進国”を目指す

全日本空輸(ANA)の代表取締役社長の平子裕志氏が、「ANAグループが担う地方創生について」と題した基調講演を行った。2016 ~ 2020 年度の中期経営戦略などをもとに、ANAグループのリソースを活用して、地域活性化や地方創生に資するインバウンド事業を支援する事例や、政府、自治体、民間事業者が団結して「観光先進国・日本」を目指す取り組みなどについて語った。

全日本空輸
代表取締役社長
平子裕志

 日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2016 年の訪日旅行者数は2400万人と過去最高を更新した。また、観光庁の調査によると、外国人延べ宿泊数は前年比5.8%増の6939万人泊で、調査開始以来の最高値となった。「2016 年を振り返ると、地方部への訪日客が加速した年でした」と平子社長が指摘したように、外国人延べ宿泊数の対前年比を比べると、三大都市圏で3.4%増、地方部では9.5%増と(※1)、地方部の伸びが三大都市圏の伸びを大きく上回った。この状況を受け、2020 年の政府目標の訪日外国人旅行者数4000万人を達成するために、「地方への需要の分散化は重要なテーマです」と平子社長は説いた。

(※1)三大都市圏とは、「東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫」の8都府県をいう。地方部とは、三大都市圏以外の道県をいう(観光庁「宿泊旅行統計調査 平成28年、年間値(確定値)」報道発表資料より)

 訪日外国人の地方誘客による交流人口の増加は、地域内での消費の拡大をもたらす。2016 年度、海外販売旅客数が国際線で約500 万人、国内線で約150万人を達成したANAグループは、「訪日旅客による国内線利用の促進」を重要な戦略の1つとして位置づけ、地方創生に資する取り組みを一層強化している。

リソース活用で多様なサービスを

 今年、設立65 年目を迎えるANAは、持ち株会社体制へ移行した2013 年以降、5 年連続で、英国スカイトラックス社が運営するエアライン・ランキングの最高評価となる「5スター」を獲得している。2017年3月末、ANAグループの従業員は約4万人で、昨年度の売り上げは約1兆8000億円。昨年度の輸送実績は、国内線で1日平均約11万8000人、国際線で2万5000人が利用し、貨物郵便は約3800トンを輸送した。そんなANAグループが、インバウンド対応や地域経済の活性化に対して果たす役割は、安全・安心な旅客の移動や貨物の輸送だけではないという。

 「海外のお客様の当社国際線、国内線のご利用データを活用した市場調査・分析、海外向け告知活動、日本の地域活性化支援、訪日外国人用旅行予約サイトや運賃の提供、行動調査・分析に至るまで、一連のサービスを提供することが可能です」と平子社長が言うように、ANAグループは同社のリソースを活用し、多面的かつ持続的なメニューをパッケージで提供している。

ANAグループが有する「調査・分析」「需要喚起」「興味・関心」「購入(予約)」「効果測定」の5つのリソース。これらのメニューをパッケージで提供することで、海外からの観光客の誘客や地方創生に取り組む政府・自治体や民間事業者を支援する
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外国人目線で魅力を発掘・発信

 今年1月、ANAはJNTOと連携し、シンガポールのインフルエンサーを横浜・鎌倉・山形・仙台に招致した。旅先からフォロワーに地域の魅力を伝えてもらい、動画をデジタルチャネルに乗せ、動画を見た人がどれくらい訪日したかを計測。各国の潜在顧客の嗜好を把握すると同時に、今後のプロモーションに役立つノウハウを蓄積した。日本の各地にはまだ発掘・発信されていない素材が多く存在する。今年度はアジア約10カ国のインフルエンサーを招聘し、ASEAN 諸国への情報発信を展開する計画だ。

 海外向け告知活動は2012 年、日本独自の文化やライフスタイルなどを紹介するウェブサイト「IS JAPAN COOL?」を開設。日本文化や都市の魅力を独自の視点で掘り下げて世界に発信している。

“持続可能な国際観光”にも貢献

 コンテンツ・サービスの事例としては、訪日外国人向けの情報ウェブサイト「ANA EXPERIENCE JAPAN」がある。ゴールデンルートだけでなく、国土交通大臣認定の「広域観光周遊ルート」を中心としたコンテンツによって、訪日への関心を持ち始めた外国人に日本の地域の魅力を伝えている。一方、地方自治体やサービス事業者に対しては、日本全国の観光情報のほか、レストランや現地体験ツアーのシームレスな予約を可能とするプラットフォームを提供している。2016 年6月、ANAホールディングスが越境Eコマースのプラットフォームを運営・提供する会社であるACDに出資し、Eコマース事業会社を設立し、2017年7月、中国人向けインターネットショッピングモール「ANA CARGO DIREC T(越境ECモール)」をグランドオープンした。さらに、グループ企業のANA CARGOやOCSと連携して、通関手続きから商品発送まで一手に引き受けることで、日本各地の優れた産品をダイレクトに届ける。

 ANAは、リソースを活用した様々な取り組みで地域経済の活性化に貢献するだけでなく、国際機関と連携した観光の取り組みにも参加している。国連は2017年を「開発のための持続可能な観光の国際年」に定めた。これは観光産業における環境破壊、文化の毀損、過度な商業化を避けるとともに、観光客の行動規範などを見直すことで観光地本来の姿を維持しようとする活動で、国連世界観光機関(UNWTO)を中心に推進されており、ANA は世界の航空会社で唯一、今年の「国際観光年」のオフィシャルスポンサーに選出された。国連の推奨する「地域の持続可能な発展」を果たす上で重要な役割を担うと考えているのが、ガストロノミーツーリズムである。2016年10月、ANA 総合研究所が、温泉地を拠点に周辺の自然・歴史をめぐり、その土地ならではの食を楽しむ「一般社団法人ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構」立ち上げに携わり、国内ウオーキングコースの認定および情報発信などの地域支援を行っている。

ANAが考える「オールジャパンで取り組む“観光先進国”」。官民が一体となって誘客施策を推進し、“観光先進国・日本”を目指す取り組みに対して、ANAグループは多くの実績と多様なリソースの活用で貢献する
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日本版DMO の活性化も支援

 ANAが考える、地方創生と観光先進国実現に向けたキーワードの1つが「DMO(※2)の活性化」である。2015年、観光庁は「観光地経営」の視点に立ち、観光地域づくりの舵取り役を担う「日本版DMO」の法人登録制度を開始した。2017年5月12日現在、広域連携DMOが6 件、地域連携DMOは67 件、地域DMOで72 件が日本版DMO候補法人として登録された。ANAも各地方の観光政策の立案・実施に協力するため、DMOや地方自治体に積極的に人材を派遣して、DMOの活性化を支援している。

(※2)DMO=Destination Management Organizationの略

 平子社長は言う。「DMOは都道府県や官民の枠にとらわれない、新たな観光の担い手であり、ANAもDMOを含めて、皆様とともに“観光先進国・日本”への取り組みを強化していきたい」。

“観光先進国・日本”を目指して

 その言葉通り、ANAグループが注力しているのは「オールジャパンで取り組む“観光先進国”」の推進である。政府、関係省庁、関係団体、地方自治体、DMOを中心として、交通事業者、宿泊事業者、コンサルティング事業者、旅行会社、飲食業者、広告事業者、その他関連業者など、外国人観光客の誘客や観光による地方創生に取り組む様々な事業者を結びつけ、それぞれの活動や取り組みに同社のリソースを活用することで“観光先進国・日本”実現を支援している。

 平子社長は、1964 年の東京オリンピックの話題に触れたあと、講演の最後をこうしめくくった。「約50 年の時を超えて、日本が再び全世界から注目される貴重な時期を迎えます。ANAも皆様と連携して、日本の魅力の発信や日本の津々浦々への誘客、そして交流人口・商流拡大による地域経済の活性化をグループ一丸となってお手伝いすることをお約束します」。

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