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日経ビジネスONLINE Special 週刊日経ビジネスオンライン SPECIAL日経ビジネスオンライン

仕事が変わる、未来が変わる VOL.2

必要なときに必要な数だけ印刷する。いわゆるオンデマンド印刷が商品パッケージにも広まりそうだ。デジタル印刷の品質向上に加えて、パッケージを飾るデコレーション印刷のデジタル化が可能になったからだ。この功績は大きい。紙の消費量を大幅に減らせる上に、イベントに合わせた専用パッケージを手軽に利用可能になる。
■従来技術(アナログ)

 印刷というのは、実に量産効率のよい方法である。この技術があるからこそ、同じ新聞、同じ書籍、同じパンフレットを何万、何十万という人たちが手にすることができるわけだ。

 ただ、いいことばかりではない。確かに、数万という単位で印刷すれば、1部当たりの単価はすごく低くなるが、それを数十部にしても印刷代はさして下がらず、結果として部当たり単価がえらく高くなってしまう。だから、書籍や雑誌、食品の商品パッケージなどは、一度に数千部、数万部といった単位で刷るのが一般的だ。足りなくなって改めて刷れば相応の追加コストがかかるが、刷り部数を何倍かにしても変わるのは用紙代くらい。だったらとにかく多めに刷っておこう、ということになる。

 この結果、かなりの比率の印刷物が、売れないまま、使われないままお払い箱になる。日本印刷技術協会によれば、書籍や雑誌の約40%は、読者の手に渡ることなく出版元に返ってくるのだという。配本されなかったストック分も含めれば、印刷した書籍や雑誌の約半分が未使用のまま廃品になる。もったいない限りだ。

 こうした状況は、印刷という既存技術の特性によって生み出される。一般的に使われている「オフセット印刷」では、版を作る必要があるが、版作製も含めた印刷機のセットアップに、多くの時間とコストがかかる。一度、準備が終われば、1部印刷するも、1万部印刷するも自在だが、少量しか刷らないからといって版代を含めたセットアップ代は変わらない。例えば、1部しか印刷しなければ、部当たりのセットアップ代は1万部印刷する場合の1万倍になる計算だ。

 この問題を解消するには、版が不要のデジタル印刷機を利用するしかない。家庭やオフィスにあるプリンターを大規模、高出力にしたようなものだ。これを使えば、比較的短時間で印刷でき、かつ少量でも1部当たりのコストを抑えられる。必要なときに必要な数だけ印刷できるので、廃棄量を大幅に削減できるはずだ。すでに、チラシや小冊子などの分野では利用が広がっている。これが書籍や雑誌などを含む印刷物全般に広げられれば、紙の消費量を約半分に減らせる計算になる。

デジタル化でワークフローを一新

 しかし、現実はそうなっていない。大きく2つの問題が存在するからだ。1つは、デジタル印刷の品質が従来のオフセット印刷に追いついていないこと。もう1つは、デコレーション印刷がデジタル化されていないことである。

 デコレーション印刷とは、部分的にニスを厚盛りしたり(UVエンボス加工)、必要な部分に金属箔を転写したり(箔押し)するもの。商品のラベルやパッケージには欠かせない。現在のデコレーション印刷は、かなり人手に頼った作業に負っている。熟練の職人がUVエンボス加工や箔押しに向けた版を作製し、紙と版を高精度で位置合わせしながら加工する。費用も時間もかなりかかる。

 こうした2つの問題をクリアできれば、オンデマンド印刷の活躍の場はかなり広がる。特に期待が大きいのが、商品パッケージなどの印刷物だ。例えば、高級ワインのラベルや箱。生産年や生産した畑などでラベルを変えたいし、クリスマスなどのイベントに合わせて特別なパッケージも用意したい。誕生日などに合わせたその人だけのスペシャルパッケージなどができればなおよい。

 コニカミノルタは、この2つの問題を解決できるデジタル印刷システムを開発した【図】。印刷品質は、インクジェット方式採用の新しいデジタル印刷機 AccurioJet KM-1(以下KM-1)の開発で解決した。同社の顧客によると、「印刷品質は高く、我々のようなプロが見てもオフセット印刷と同等の品質です」という。デコレーション印刷のデジタル化は、仏MGI Digital Technology社に資本参加し、同社のUVエンボス加工用印刷機と箔押し用印刷機を組み込むことで実現した。

独自開発のUVインクを活用

■新技術(デジタル)

 まずは「KM-1」を使って、文字や絵柄を紙に印刷し、続いて紙全体にラミ加工を施す。その後、必要に応じてUVエンボス加工と箔押しでデコレーション印刷を施す。この印刷システムの利点は、UVエンボス加工にも箔押しにも版が不要なことにある。作業に熟練が必要な位置合わせもいらない。印刷する紙の位置や大きさを画像データとして読み込んで画像処理することで、「原版データ」を用紙の位置や寸法に合わせた「印刷データ」に変換できるからだ。紙が斜めに置かれたり、温度や湿度で伸び縮みしたりしても、デコレーション印刷の位置がずれることはない。

 すべての作業は、1人のオペレーターがボタンを押すだけで実行できる。人手に頼る作業を排除したため、従来は1~2週間かかっていた作業を、2~3日に短縮できるようになるという。

 この印刷システムの開発における技術的なポイントとしては、インクジェット方式のデジタル印刷機「KM-1」でUVインク(紫外線固化型インク)を扱えるようにした点が挙げられる。これを使えば、短時間で固化するため、紙の種類を選ばない上に、すぐに次の工程に移れる。通常の水性インクは、乾くまで1日程度必要で、これが納期を短縮できない一因となっていた。

 すでにコニカミノルタとMGIは、次世代技術の開発に着手している。導電性インクを使って、パッケージなどにRFIDタグを印刷する技術だ。既存のRFIDタグは、半導体チップが必要なためコストが高く、普及が進んでいない。しかし、印刷で作製できればチップは不要になり、コストは大幅に下がり、一気に普及するだろう。印刷だけでなく、流通にも大変革をもたらす可能性がある。

*RFID(Radio Frequency IDentification):タグ上にある人・物の個別情報を無線で読み取り、識別管理する仕組み。

【図】コニカミノルタが実現したデジタル印刷システムのワークフロー
[画像のクリックで拡大表示]

コニカ インクジェットペーパー Photolike QP フォトシルキー

写真の光沢制御技術でUVインクが利用可能に

 インクジェット方式採用のデジタル印刷機「KM-1」。採用したUVインクの開発背景には、銀塩写真印画紙「カラーペーパーQAシリーズ」やインクジェット写真用紙「PhotolikeQP ペーパー」で培った光沢制御技術がある(いずれの製品も現在は事業終了)。「UVインクの採用で苦労したのは自然な光沢再現だった」(コニカミノルタ)。UVインクを使うとインクが多く塗られる部分は表面張力で凹凸の少ない平らな状態で固化され、プラスチック表面のような不自然な光沢になりうる。これを解決したのが光沢制御技術だ。フォトライクQPペーパーでは、樹脂の選択や表面形状の制御により自然な光沢を実現した。

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