クラウドでビジネスが変わる! 中堅中小IT事業者のビジネス転換術 クラウドインテグレーターに乗り遅れるな

CASE STUDY 02 社内で効果を確認したOffice 365を顧客に提供 ビジネスのクラウド化と脱サーバーで経営安定化に成功

従来型SIerからの脱却を目指して
まずは社内でOffice 365を試した

2010年頃からクラウドに着目してきたテクノアートは、情報連携ツールとしてOffice 365の販売に力を入れるとともに、自社のパッケージソフトウェアをMicrosoft Azure上のSaaSとして提供。サーバー販売からクラウドビジネスに転換することで、キャッシュフローの改善と経営の安定化に成功している。

テクノアートは、熊本県合志市に本社を置くシステムインテグレーター(SIer)である。創立は1992年4月。2000年3月には福岡市にも拠点を開設し、九州を地盤とするITビジネスを展開してきた。

同社が現在手がけているおもな事業には、システム開発、ソフトウェアパッケージ開発・販売、セキュリティ、ネットワークの4つがある。そのなかでも高い競争力を持つのが、家具販売店向け販売管理システムの「PLUS SYSTEM」。代表取締役社長の松脇秀三郎氏は、その背景を「当社は家具ビジネスについて詳しく知っており、基本的な機能はすべて標準でビルトインしています」と説明する。

テクノアートでも、従来はサーバーと業務アプリケーションを組み合わせて顧客に納めるシステムインテグレーション(SI)を基本的なビジネスモデルとしていた。しかし、2010年頃、松脇氏は「IT企業としてさらなる発展を目指すには、従来型のSIerから脱却する必要がある」と決断。興隆しつつあったクラウドをITビジネスの基礎に据えることはできないかと研究を始めた。

最初に取り組んだのは、マイクロソフトがオンラインサービスとして2009年に提供を開始した「Microsoft Business Productivity Online Suite(BPOS)」の社内使用である。「当社には『自分たちで使ったことがないものは売らない、必ず最初に社内で使う』というルールがあります」と話すのは、福岡事業所長の大谷浩之氏。BPOSの後継として2010年に登場したOffice 365も含めれば、数年にわたって営業部門や開発部門で使用を続けたという。

その結果、同社が確信したのは「Office 365の最大のキーワードは『連携』」(松脇氏)だということ。Office 365は、使い慣れたExcelやWordなどのOfficeを中心に、ビジネスで必要なメール、ファイル共有、Web会議、グループウェア機能をオールインワンで提供するクラウドサービスだ。営業訪問先や出張先からスマートフォンやタブレット端末で、会社のメールや共有文書にアクセスし、情報を社内で連携できることは、経営強化に直結するという判断だ。営業部門で「訪問できる顧客数が倍以上になった」(松脇氏)という成果も得られたので、いよいよOffice 365を顧客向けに販売することに決めた。また、これとは別に、自社ソフトウェアパッケージをMicrosoft Azure上に移行。SaaSとしての提供を開始した。

体験型セミナーで使い方を伝授
販売店向けコミュニティも運営中

Office 365を販売するにあたって、テクノアートは、自社内での使用を通じて得られた使い方のノウハウや成功事例/失敗事例を顧客に提供することにも力を注いだ。ただ単に電子メールとして使うのではなく、Office 365に含まれている多彩な機能を連携させて顧客管理などに役立ててもらうことをねらったのである。

そのための活動として同社が重視しているのが、セミナーだ。2017年1月には福岡市で200名規模の「経営イノベーションセミナー」を開催。スマートフォンとOffice 365で実現した同社の営業革命の“勘どころ”を松脇氏が講演。2月以降も体験型セミナーを福岡、長崎、熊本の3カ所で展開し、Office 365の使い勝手を参加者にPCやスマートフォンで体験してもらうことにしている。

「当社はData Analyticsコンピテンシー、Data Platformコンピテンシー、Datacenter コンピテンシー、Application Developmentコンピテンシーのゴールド、クラウド系コンピテンシーのシルバーパートナーとして認定されています(2017年2月時点)。このため例えばOffice 365であれば100シート以上のライセンスを使用することができます」と大谷氏は語る。マイクロソフトからパートナー企業に付与されている特典ライセンスは、社内での業務使用や技術検証のために活用しており、日常業務や検証を通じて徹底的に製品を使い倒して得たノウハウを、すべてお客様へ提供するのがテクノアート流である。この特典ライセンスを使い、販売促進活動としてOffice365の体験型セミナーを進めているという。

このほか、テクノアートは「九州Office 365販売パートナーズコミュニティ」(仮称)の主幹事も務めている。このコミュニティが2015年4月に結成されたそもそものきっかけは、「法人向けスマートフォンにOffice 365を組み込んで販売しようと考えているが、技術面での不安がある」と法人向けの携帯電話販売店から相談を受けたことだ。「現在では、福岡、長崎、熊本の3県で法人向けの携帯電話ビジネスを展開している3社がコミュニティメンバーとして参加し、当社がOffice 365についての技術面でのお手伝いをしています」と大谷氏は説明する。

福岡市で200名規模の「経営イノベーションセミナー」を開催

PCやスマートフォンでOffice 365を実際に使用する体験型セミナー

パッケージのSaaS化で安定した経営
販路も全国に広げられ、ビジネスが拡大

マイクロソフトのクラウドの販売を始めることによってテクノアートが得たものは大きい。まず、開発案件を掘り起こすことができた。「Office 365をお使いのお客様から、SharePoint Onlineベースの情報共有システムのご注文をいただきました」と大谷氏。テクノアートは、これまでグループウェア製品のNotesからSharePointへの移行サービスを数多く手がけてきた。SharePointのシステム開発は同社のもっとも得意とする領域であり大きな収入源だと松脇氏も語る。

また、Microsoft Azure上で同社のソフトウェアパッケージをSaaSとして提供することによって、ハードウェア保守に要するコストを増大させることなく、売上額を定常的に増やすことができた。

「お客様はハードウェア保守料金を支払う必要がなく、自分たちでサーバーを管理しなくて済み、いつでも解約できます。当社にとっても、ハードウェアの仕入れがないため、キャッシュフローが大幅に改善されるというメリットがありました」と松脇氏は語る。軌道に乗るまでは4年ほどかかったようだが、現在ではサーバーとソフトウェアパッケージのセット販売はほとんど提供しておらず、損益分岐点売上額の半分以上をクラウドの月額利用料金収入が占めているという。

さらに、自社ソフトウェアパッケージをSaaS化することによって販路を広げることもできた。「ハードウェア保守に出向かなくてよいので、お取引先が『九州だけ』から『日本全国』へと広がりました」と大谷氏はいう。松脇氏も「競争力がある商材を持っているIT企業なら、クラウドでビジネスが大きく前進します」と強調する。

この成果をもとに、テクノアートはこれからもクラウドをベースに据えたITビジネスを展開していこうとしている。その1つの施策として考えられているのが、Office 365やMicrosoft Azureの活用を顧客に伝授するセミナーの増強だ。場合によっては常設セミナールームの開設も検討しているという。ここで中心的な役割を果たすのが、Office 365エバンジェリストに任命された福岡事業所の蓮尾健一氏。蓮尾氏は「Office 365やMicrosoft Azureでお客様が業務を改善し、収益を上げていただきたいです。お客様のビジネスを成功に導きたいです」と抱負を語る。まもなく、Office 365とMicrosoft Azureのトレーニングコースも始まる見込みだ。

熊本県合志市の本社と福岡事業所は回線が常時接続され、
大型モニタを介して連絡をとりあうことができる。
Office 365とMicrosoft Azureでお客様のビジネスの飛躍をお手伝いするテクノアート

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