• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
日経トップリーダーSpecial 日経トップリーダーSpecial

「健康経営」実践促進セミナー in 高松 開催報告

「健康経営の実践促進」と銘打った経済産業省主催の全国セミナーがスタートしました。当日の会場の模様をお伝えします。

1.「歯科健診から全身の健康を管理、データで検証、医療費削減へ」
穴吹興産(香川県)
執行役員 大谷佳久(おおたに・よしひさ)

大谷様

社名:穴吹興産
設立:1964年
本社所在地:高松市
社員数:グループ30社で6000人
主な事業:不動産開発、人材サービス、ホテル・ゴルフ場、医療・介護など

 穴吹興産を中心とするあなぶきグループは全30社、従業員6000人の企業集団で、西日本を中心に事業を展開しています。「地域に生かされ生きる」というグループビジョンを掲げ、それぞれの地域に密着した活動をしています。社会貢献の一環として、子どもを対象とした地域貢献活動などにも力を入れています。

 健康経営に取り組むようになった背景には様々な事情があります。グループ全体で医療費の負担が毎年増え、メタボのリスクが高め、喫煙率もまだ高いという中で、社員が病気で亡くなるというケースがあり、防ぐことはできなかったのかという思いがありました。健康経営で何か社会に貢献ができないか、医療介護関連事業の中でできることはないかという思いもあり、病気を予防するのに何をすればいいのかを考えました。

 具体的な取り組みの一つが、2015年から始めた歯科健診です。歯周病は様々な病気と相関関係があるといわれています。「口の中の健康は全身の健康につながる」というデータがあり、実際に医療費を削減した健保組合もあると聞きました。そこで高松市周辺の従業員を対象に試行的に開始し、効果検証の結果をみて拡大していく方針です。年1回受診してもらう歯科健診の内容は、口腔内検査、レントゲン、歯周病基本検査、ブラッシング指導などです。まずは3年続けて受診してもらい、その結果、医療費データが減少するかを全国健康保険協会(協会けんぽ)香川支部の協力を得て検証します。

 従来、歯科医院というと健康意識の高い人は言われなくても行っているのに対し、怖いという印象を持っている人が多かったのも確かです。歯科健診の直接的な効果検証はこれからの話ですが、歯科健診がきっかけとなり歯科医が身近になって健診を楽しみにしたり、健診の効果についての質問もみられるようになったりしました。健康に対する意識の高まりは現状でも成果といえるでしょう。

 さらにこれから取り組もうと考えているのが、一般の健診データを活用した社員の健康管理です。社員の健診受診状況を管理し、未受診者にはメールで受診を促します。検査数値や所見など健診結果を個人ごとにシステムへ入力して、結果が良くなかった人には再検査や早期治療を促すメールを送信する計画です。今年5月には協会けんぽ香川支部と覚書を締結し、健診の受診促進や健診結果データの提供・分析など健康経営の普及に協力してもらう体制を整えました。

覚書締結

 今後、健診データの蓄積や治療の勧奨などではデータのサンプル数も必要です。ただ、それ以上に大切なのは従業員一人ひとりの健康管理の意識の醸成です。日ごろの仕事が忙しいと健康管理は後回しになってしまうこともあります。健康に興味を持つ人はいいのですが、後ろ向きの人の意識をいかに高めていくかが課題です。

 グループ全体にどうやって健康経営を普及させていくかについては、グループ全体の連絡会議や経営会議で、半ば圧力をかけて浸透を図っている格好です。当社のトップは喫煙をせず、自らフィットネスに通い、健康管理への意識が高い。グループのトップからの情報発信が効果としては大きいです。

 行政や関連機関に望む支援策に関しては、歯科健診は会社の負担で実施しているのですが、一般の健診のように一部補助があれば他社にも普及していくと思います。また、香川県は保険料率が高いことで知られていますので、健康経営を推進すれば企業単位で保険料率が下がるというインセンティブがあるとモチベーションが高まると思います。

 当グループでは巨大ボールを使う新スポーツ「キンボール」の社員大会や地域の子どもを集めた教室を開いたり、指定管理を手がける運動公園でグループ会社の企業運動会の開催計画も進めたりしています。企業運動会の開催をお手伝いするプランを商品化したり、グループで運営するゴルフ場などの健康増進施設の利用も促進したりしています。当グループの健康経営への取り組みはまだ始まったばかりですが、「地域に生かされ生きる」企業として健康経営普及のお手伝いもできれば幸いと考えています。

2.「マラソンで一体感を醸成、メンタルヘルス対策、15年前から」
ヒカリ(愛媛県)
代表取締役社長 富田耕治(とみた・こうじ)

富田様

社名:ヒカリ
設立:1961年
本社所在地:愛媛県東温市
社員数:357人

 ヒカリは愛媛県東温市に本社を置く産業用の自動化システムのメーカーです。製造現場で使われる組み立て・検査・洗浄などの自動化装置を受注生産しています。装置の設計から据え付けまでを社内で一貫して手がけ、厳しい納期を求められるなどの特性から、技術力がある特定の社員に負荷が集中し、長時間労働が多いのが過去の実態でした。

 創業者の口癖は「労働者の楽園を作ろう」。創業当時の一日働くと作業着が油で汚れるという状況から早く脱出しようという思いがあったようです。労働環境を改善する取り組みとして、1994年に建設した新本社工場が「快適職場」県内認定第1号となりました。1999年には、その後の取り組みを評価され、労働大臣努力賞を受賞しました。健康管理への取り組みでは、1998年から年1回の健康相談を有所見者に実施。2000年からは定期健康診断を年2回に変更し、35歳未満の希望者にもがん検診を始めました。

 メンタルヘルスへの取り組みは2000年に愛媛産業保健推進センター主催の「傾聴訓練」に私が参加したのがきっかけです。それ以前にメンタルヘルス関連の症例である心身症が企業で話題になり、関心があったため参加しました。翌年には愛媛労働局より「メンタルヘルス指針推進モデル事業場」への選定を受け、2002年からは現在のメンタルヘルスチェックに似た「職業性ストレス簡易調査」を始めました。2003年には外部の産業カウンセラーと顧問契約を結び、メンタル面で不調な人などが相談や面談ができる仕組みを整えたり、ホットラインを開設したりしました。

 今年5月には全国健康保険協会(協会けんぽ)愛媛支部と連携して健康経営に取り組む「健康づくり推進宣言」の事業所にも名乗りをあげました。近年の健康増進への取り組みとしては、無料でマッサージを受けられる仕組みの導入があります。設計部門の社員に長時間座っていることによる腰痛や肩こりが多かったことがきっかけです。週1回、プロのマッサージ師に会社に来てもらい、社員は月2回まで無料で利用することができます。

 昨年には、自転車通勤の人向けに社屋の入り口近くにシャワールームを設置しました。自転車好きな社員が多く、レースなどにも参加しているのですが、先日の大会で落車し骨折した社員もいて、社長として勧めていいのかどうか、悩んでいるところです。

 健康増進の取り組みとして、私が中心となって勧めているのはマラソンです。マラソンなら転んでもたいしたことにはなりません。愛媛県では愛媛マラソンの人気が高く、会社でも同好会(部員80人)を作り、毎年参加を呼びかけています。今年の参加は39人でしたが、抽選に当たらないと参加ができず、100人が応募しました。

 マラソンへの支援では、愛媛マラソンの参加料9000円全額を全員分、会社が負担しています。他の大会でも会社のユニフォームを着て走った写真があれば参加料の半分を会社が負担します。また1年のうち1万円まではランニンググッズに補助を出しています。この1年間で社員が参加した大会は24大会、参加人数は述べ166人で、支給額は100万円近くです。大会に社員が参加すると家族が沿道で応援するなどして、応援した人も含めて社内で盛り上がることができます。社内の一体感を醸成するいい機会としても捉えています。

マラソン大会

 健康経営への取り組みの効果として、そのまま効果として受け止めていいかどうかという面もありますが、健康診断の結果、要治療などと指摘された人の割合である有所見率は昨年の40%から今春は30%台に減少しました。メンタルヘルス関連の休職者は一昨年8人、昨年4人、今年3人で、これも個人差がありますが、数字自体は改善してきています。マラソンの効果も個人差がありますが、私自身はコレステロール値が改善し、肝機能が大幅に改善したという執行役員もいます。社員と話をする際に仕事と関係ないテーマで盛りあがり、コミュニケーションが深まっているのはありがたいところです。

 当初から私が率先して取り組み、管理職を対象に教育研修も実施してきているので、メンタルヘルス対策の重要性の理解は進んでいると思います。難しいのは喫煙者への対応です。喫煙率40%という以前の数字に比べると今年春は27%と下がってきていますが、いまだに4分の1を超えているのは信じられない思いで、どうしたらいいのか真剣に考えています。

 行政、金融などの支援策に関しては、健康経営への取り組みの実績に対する資金融資の金利優遇を望みたいところです。今後の取り組みとしては、ワークライフバランスの実現に向けた3ヵ年計画を推進中で、現在2年目を迎えています。労働時間についての規制は厳しくなる方向にあり、それをクリアする取り組みを先取りしていきたい考えです。自分の時間と会社で働く時間のバランスを両立できるようにしたい。労働時間が減ると収入が減少するという懸念を抱かれがちですが、有休休暇を年間50%以上取得するなどの目標をクリアしつつ、年収は14年度よりも増えるという姿を目指して生きたいと考えています。



「健康経営」が変える中小企業の活力と生産性 トップページ