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「健康経営」実践促進セミナー in 名古屋 開催報告

「健康経営の実践促進」と銘打った経済産業省主催の全国セミナーがスタートしました。名古屋市で行われたセミナーの模様をお伝えします。

1.「安全衛生教育活動から始まった健康プロジェクト」
日本介護サービス(愛知県豊田市)
衛生委員会 委員長 阿部耕造(あべ・こうぞう)

阿部様


社名:日本介護サービス
設立:1998年
本社所在地:愛知県豊田市
従業員数:206人
主な事業:介護・福祉サービス

安全衛生委員会が年間計画を立てて取り組む

 当社では安全衛生委員会が中心となって健康経営に取り組んでいます。その経緯と今までの活動を報告します。当社の設立は平成10年3月で、従業員は206人。事業内容は介護・福祉サービスです。ヘルパーと呼ばれる訪問介護、移動入浴車による訪問入浴、デイサービスなどを行っています。愛知県豊田市にありますが、今後の全国展開という願望を込めて「日本」という社名にしております。

 安全衛生委員会を中心に年間計画を立てて、様々な取組みをしています。例えば4、5月はストレス管理推進月間、6月はワークライフ推進月間といったように月ごとに推進事項を決めて各職場で展開しています。社外行事も積極的に行っていて、例えばウオーキング大会とかマラソン大会などがあります。

 「きっかけは社長から「安全衛生教育を始めたい」というひと言でした。介護業界では安全衛生という言葉すら知らない者がほとんどです。まず、安全や衛生とは、なぜ必要か、というところを私が毎月1回、15分程度ですが、社員が集まる全体会議で1年半かけてじっくり説明しました。最初はみんなきょとんとした顔つきでした。「安全」はまだ分かりますが、「衛生」となると仕事柄、感染症対策などはともかく、「健康づくり」は会社でやるものなのかという感じでした。平成24年9月に安全衛生管理を社内で本格的に始め、委員会ごとに活動を展開しました。社長からは「目標やスローガンをしっかり決めて欲しい。でも内容は任せるよ」と言われました。

メタボ社員を衛生委員会のメンバーに

 最初は4つの委員会を設置し、自主性を重んじて活動をしていこうとなりました。委員会はその後増えて6つです。交通安全、職場向上、7S(5S+殺菌・消毒、省エネ活動)、防災、衛生、喫煙対策です。このうち喫煙対策委員会が難題で、メンバーは喫煙者ばかり。喫煙者同士で受動喫煙対策や吸えるスペースを決めよう、禁煙時間を決めようなど決めるのは大変ですが、自分たちで決めたら自分たちでやらなければいけないということです。

 この中で衛生委員会が健康づくりを担当しています。メンバー選びから苦労しました。社内でちょっとメタボ、ちょっと不健康そうな生活しているな、そういうメンバーをわざと集めて、健康につながればいいと考えました。社員の健康づくりをどうしたらいいか話し合ったところ、「自分で出来そうにないことは皆にもやらせられない」ということで、自分でできることを、健康になりたい、健康を続けたい、みんな健康であって欲しいという共通認識のもとで話し合いました。

これまでの取組みでは、健康プロジェクト、心の健康相談室設置、早く帰ろうキャンペーン、取組みに対する部署や個人へのポイント制による表彰制度、スポーツイベントへの参加推進、外部講師による研修などがあります。ただ、社員一人ひとりがどのくらい分かってくれるのかを心配していますので、活動内容を毎月の給与明細に同封しています。

 平成25年1月にメタボ対策プロジェクトが始動しました。推進メンバーは役員含め14人です。メンバーは体重、体脂肪、BMI(肥満度指数)を測定し、1カ月たってどのくらい減ったのかを全体会議で発表します。あまり努力していないという方は、みんなの前でひと言コメントし反省していただいています。当時の推進メンバーはメタボばかりで喫煙者も多く不健康な人ばかりでした。だからまずメンバーを健康に変えたい、メンバーが変われば他の社員も変わると思いながら、社内で広めていきました。

ストレス解消策を記入してもらう

「体重減少だけでは健康になれない」というメンバーの共通意見から、内容を少しずつ変えながらプロジェクトを継続しています。平成26年には体重、運動、喫煙、禁酒、食生活の5項目に対し、点数化して合計点を出し、それをメンバーの前で発表しました。27年はストレスチェック制度導入の前の年だったので、自分のストレスがどれくらいかを把握してもらおうとストレスチェックを事前に入れました。その上でどうストレスを解消したのかも入れています。そして「自分は夜11時以降は食べません」とかいう自分自身の健康宣言もしてもらいました。その他に健康診断の結果を年齢も加味して点数化して含めています。今年も同様な項目で点数化してもらっています。

 プロジェクトでよかった点は、ストレス解消を記入してもらったことです。他の人がどうストレス解消しているのかな、どうすればストレスは解消するのかなと悩む人もいます。参考にしてもらったり、共感してもらったりで、かなり反響があったと思います。写真も提供してもらい、例えば「ナゴヤドームで野球観戦した。巨人に圧勝!」とか、「よく食べ、よく寝ました」とか、「息子と二人でゴルフに行った」などいろいろあります。ひとそれぞれのストレス解消法があるのが分かります。

 今後の課題としては、活動成果としては分かりにくいので、成果をもっと数字化して達成感を得られるようにしたいです。また、「継続は力なり」と自然とできるような活動ができるよう知恵を出していきます。私自身はタバコをぜひやめたいと考えています。

2.全健康職場づくりの取り組み」
サンエイ(愛知県刈谷市)
安全衛生推進部 保健師 神崎友子(かんざき・ともこ)

神崎様


社名:サンエイ
設立:1920年
本社所在地:愛知県刈谷市
従業員数:1613人
主な事業:総合ビルメンテナンス・清掃業務、土木・建築・造園工事

高齢者ほど仕事の量、質とも充実度が高い

 私どもの会社、サンエイは従業員数は1600人あまりおりますが、うち1000人は工場や空港など様々なところで清掃業務に従事しています。身の丈にあった健康経営の取組みということで、安全とメンタル、高齢者対策などについてお話をいたします。

 サンエイの特色として、40代以上の従業員が78%を占めます。女性の平均年齢は52歳です。私もまだ若手で通っています。自分がどれだけ自分のもっている力を量と質で発揮できているかといったデータを取っています。「あいちヘルスアップコンソーシアム」というものに参加し、社員に仕事に対する充実度などを自己評価させています。60代はお荷物社員なのかというと、そんなことはなく、仕事の量、質共に充実度は高いです。健康への関心でも「気を付けている」が60代で約8割です。病気で会社を休んだことがあるかという質問では60代の社員が一番病気で会社を休んでいないという結果でした。結局、年をとっても技術と知識はさびないと現場の人は言います。体力が落ちるだけ。ちなみに当社では、おなか周りは20代が一番大きく、血圧は30代が一番高いという結果でした。

安全衛生管理で労災保険料が46%低減

 当社では安全衛生に取り組んできましたが、健康経営という言葉は社内ではとりたてて使ってきませんでした。OSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)という認証に取り組んできました。事業者が労働者の協力の下、継続的な安全衛生管理を自主的に進め、労働災害の防止と労働者の健康増進、快適な職場環境の形成などの実現を目的とした仕組みです。安全衛生に対し、PDCAを回しながらがんばってきました。2002年から12年までを見ますと、年間の労災保険料は2012年は02年に対し、約2800万円、46%も低減しています。経営にも直接貢献しているわけです。

 安全に対するわが社の姿勢を例えるなら、「郷土三英傑の一人、太閤秀吉は刀狩り。サンエイ株式会社はカッターナイフ狩り」です。業務上、カッターナイフはよく使うので、稼働時間はかなり長かったです。そこでカッター使用許可願いを出してもらい、「どうしてもカッターでなければできない」ということを上司に説明する。それもペーパーカッターといわれるものを使うようになりました。転ばない床というのも実現しています。段差の解消や見やすい表示を進め、人間工学に基づいて作業負担を軽減しています。これも自然に健康経営につながっていったと思います。

 安全は第一はトップがよく言うことですが、あるときトップが「自転車通勤の社員がなぜヘルメットをかぶらないのだ。転倒時の頭部損傷を軽減したい」と言いました。そうすると、まず課長、次長が「なぜヘルメットをかぶらなければいけないのか」ということを説いて回る。でも、ヘルメットをかぶることに反対の人も多かったです。反対はなぜか、賛成はなぜか。従業員の意見を取り入れて、結局、「強制はしませんが、推奨します」となり、ヘルメットの無償貸与が始まりました。上司はヘルメットの必要性を説明します。メンタルヘルスも安全もすべて頑張るのは課長さんたちが中心です。

データで説得、上司の協力でうつ病休業ゼロに

 でも以前からこんなにうまく回っていたわけではありません。2007年、まだ健康経営という言葉もなかったときに、私が「メタボ教室をやりたい」と担当の部長に話したら、「デブは労災になるのか。会社のせいなのか」という反応でした。「じゃあ、受動喫煙対策と禁煙支援やりたいです」「目標数値は。効果はどうやって測るのか」「じゃあ、何ならいいんですか」「うつ病で休む人、減らしてよ。目標は『休業者ゼロ』」。こんなやり取りがありました。でもこれを契機に、上司を説得できる数字のデータなどを徹底的に詰められたし、自分も育ててもらった1年でした。

 当社は休んだ従業員の人件費という意識が上司にあまりなかったので、傷病見舞金という切り口で考えました。休んだ従業員には会社から見舞金が出ます。それは所属している事業部の売上から出すのです。人事・総務のお金ではありません。例えば、ひとりの傷病見舞金に年間72万5000円も使っているんだよとか、ひとり休むと1ヵ月間に安全衛生推進部の社員は30時間、上司も産業医に面談に行くとかで12時間、人事総務は2時間も使っているとか数字を出しました。2009年からメンタル教育を始め、ストレス改善を自分だけでするのではなく、改善支援担当上司というのを自分で選んでもらいました。1ヵ月の改善活動期間を設け、飲ミニケーションやボウリング大会の復活とか、若手だけのミーティングをやりましたとか、上司に技術をじっくり教えてもらったとか、いろいろありました。結果として、2011年にはうつ病再発がゼロになり、メンタル不調による休業者も減っています。

休業者人数の推移

健康イベントで会社と家族をつなぐ

 メンタル不調者が減ったので、次は健康で長く働くという視点での活動ができるようになりました。60代の社員は宝だというデータに加えまして、新しく人を採用するのが難しくなっています。採用にかかる広告費も上がっています。そこで仕事の負担を見える化しようということで、心拍数を測ったり、血液検査をしたり、万歩計をつけてもらったり、自覚できる疲労度を取ったり、取り扱い重量を減らしたりなどいろいろやりました。ここまでくると私のような保健専門職の出番は減ってきまして、産業医、産業保健スタッフいらずの「サンエイ健康フェスティバル」というのが開かれました。企画・立案・実施は一般社員がうまくやってくれました。74歳までの雇用延長で、高齢者の活用を視野に入れた手作りイベントです。総費用はなんと20万円でお弁当付でした。あいち健康プラザの体育館とフィットネスジムを1日借りて、様々なイベントを行いました。

 イベントをやると社員の家族が来るのです。人間ずっと健康で働けるとは限りません。がんにかかることもあります。その時に家族と会社が近いことはいいことで、今、介護しながら働くとか、がんの治療を受けながら働くとかいう人の支援にもつながると思います。今後ともいろいろなことに取り組んで行きたいと思います。


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