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「健康経営」実践促進セミナーin広島

「健康経営の実践促進」と銘打った経済産業省主催の全国セミナーが各地で開催されています。広島市で行われたセミナーの模様をお伝えします。

1.「地域における健康経営の取組みと推進方策について1」
オガワエコノス(広島県府中市)
取締役副会長兼社長 中川俊信(なかがわ・としのぶ)

中川氏

社名:オガワエコノス
設立:1952年
本社所在地:広島県府中市
従業員数:209人
主な事業:廃棄物処理業

長期経営計画に健康経営を取り入れる

 弊社は本社のある広島県府中市を拠点に廃棄物の収集・処理を行っています。設立して今年が64年目で、地域にしっかり根ざしております。売上高は27億1000万円(平成27年度)です。業界では安定した形で経営を行っております。業務の3本柱は、トイレの水回り業務、つまりし尿の汲み取りから浄化槽管理がひとつ。2つめは廃棄物の中間処理、会社や家庭から出るごみの選別、リサイクル。もうひとつがRPF固定燃料と申しまして、石炭の代替燃料商品で、プラスチックを混ぜて固めて石炭並みの熱量を発揮するものを作っております。これは製紙会社に石炭の代わりとして納入しています。

 健康経営への取組みでは、平成26年度にスタートしている長期経営計画に健康経営を取り入れまして、従業員とその家庭の健康を会社がサポートする体制や仕組みを構築しています。7年前に協会けんぽ(全国健康保険協会)広島支部の指導を受け始め、その中で長期経営計画に入れたほうが従業員に対する浸透が図れ、経営幹部の認識も一致するのではというアドバイスをいただいたからです。見える効果としては、売上アップや生産性の向上など、経営にとってプラスになることを認識しています。例えば従業員が健康で明るい笑顔で大きな声で挨拶してサービスの質を高めていく、あるいはお客様に喜んでいただくという、その基は何か。これはやはり健康だと考えました。健康である人の笑顔とそうでない人の笑顔は違うということがよく分かりました。健康経営を社員にしっかり発信していきたいというふうに考えております。

 私自ら、年間50回くらい、理解活動と称して一般社員に健康経営についての話をし、健康に対する意識を高めております。社長自ら健康経営に対して本気で取り組んでいるということを示す方法と思います。

定期健診に「5つのがん検診」も

 定期健康診断の項目は、通常の項目に3つほど加えております。「5つのがん検診」、「歯周病健診」、「B型C型肝炎ウイルス検査」です。特にがん検診では、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの検診を行っており、平成28年度は2人ほどがんの早期発見ができました。これもこういう定期健診のおかげかなと思います。メタボの該当者では、協会けんぽの保健師による個別指導を実施しており、生活習慣の改善を促すということでは大いに役立っております。

 福利厚生制度では特にがん検診でがんにかかったことが分かった社員には、就労支援をしておりまして、給与やボーナスは通常通り支払っています。がんになって一番不安なのは経済的な負担がどうなるのかですので、負担を軽減できるようしています。禁煙外来、家族の介護、育児には特別休暇を制定して、有給休暇とは別に付与しています。

 広島県の啓発取組みにも積極的に参加しています。具体的には「仕事と家庭の両立支援企業」への登録、「Teamがん対策ひろしま」への企業登録、「ひろしま企業健康宣言」への登録です。こういう取組みをしていることも社員にしっかりアピールしています。

協会けんぽの「ヘルスケア通信簿」を活用

 協会けんぽ広島支部の「ヘルスケア通信簿」は活用しています。経営サイドでは当社の弱点などが見えてきますので、長期経営計画に生かせる強み、弱みをこの通信簿から読み取り、実態を把握する上で大きな成果を生んでおります。同時に健康講話を開催し、社員に参加を働きかけてもいます。協会けんぽの保健師、弊社の産業医に協力してもらい、直接、健康指導を行っています。ヘルスケア通信簿で特に喫煙率が高いことが分かりましたので、平成28年度は喫煙対策として協会けんぽの協力を得て6月に健康講話と肺年齢測定を行い、喫煙の害、受動喫煙の怖さを伝えて社員の意識を変えていこうということで、いま挑戦しています。

通信簿

 最後に今後の展望です。健康経営は中小企業では社長自らがやらないと継続性がありません。2年3年続けるには、社長が率先してやらないといけない。社長自らが社員に語りかけていくという理解活動が社員の意識を高めると思います。この理解活動を今年も継続してやっていきます。協会けんぽと連携しながらヘルスケア通信簿を活用した健康経営を推し進めて、しっかりとした根が生えるようにしたいです。従業員とその家族の健康を維持していくことが生産性の向上につながることがこの2年ではっきり分かりました。例えばインフルエンザが流行しても、生産性が落ちることがなく、お互いがカバーしあって業績を上げてくれることがはっきり分かりました。


2.「地域における健康経営の取組みと推進方策について2」
今井運送(広島県廿日市市)
代表取締役専務 今井麻衣子(いまい・まいこ)

今井氏

社名:今井運送
設立:1963年
本社所在地:広島県廿日市市
従業員数:221人
主な事業:自動車貨物運送事業

社員の健康状態は危機的状態だった

 健康経営に取り組んでまだ間もない駆け出しですので、その点はご理解いただきたいと思います。弊社の本社は廿日市市の木材港にあります。創業は昭和38年、今期で53年目です。創業者は私の父の今井義治ですが、3年前に突然、亡くなりましたので、その跡を継いで私が運営しています。資本金は2000万円、事業区分は一般区域自動車貨物運送事業、いわゆる運送会社です。営業所は広島県内に5拠点、従業員数は現時点で221名です。輸送エリアは中国5県下のもと、5割が地場運行、近距離運行をしています。残りが関東から南九州までの長距離・中距離輸送です。輸送商品は重量物輸送、つまり鋼材や建築資材がメーンです。このたび、広島市の五日市に物流倉庫を設け、物流の効率化を図っています。

 運送業ですので運行前の点呼で点呼執行者がドライバーに毎日、日々の健康状態、血圧の確認、アルコールチェック、免許証の確認などを行っています。帰ってきたときも同様の作業をしています。それに加えて、安全衛生面では外部講師を招いてドライバーの安全についての会議などを2ヵ月に1度行っています。

 健康経営に取り組むきっかけですが、平成26年10月に協会けんぽの向井支部長が来社され、「ヘルスケア通信簿」というものをお持ちいただきました。これを開いてみると弊社の従業員の健康状態が一目瞭然でわかり、極めて危機的状況にあるなということを身にしみて感じました。糖尿病、高血圧の疾患が非常に多く、ひとり当たりの医療費などを見た時にすごい数値が出ているなと驚愕したのを覚えています。糖尿病と高血圧のリスクを30%以上の社員が抱えているのが現状でした。

脱缶コーヒーへ乳製品・果汁飲料の自販機設置

 喫煙率の高さにも驚きました。運送業の当社は社員がトラックを運転していますので、待機時間にかなり喫煙している様子が分かりました。いまの運送業ではドライバー不足、ドライバーの高齢化が深刻ですが、それに加えて長距離ドライバーの不規則な食生活、睡眠不足などをみると、「ほんとうにうちの社員の健康はどうなっているのだろう。体調を崩しているものはいないのだろうか」と本当に心配になったのです。そこで、健康経営に取り組みだしたというわけです。

 もちろん、健康診断では13年前から生活習慣病予防検診を受診し、深夜業務対象者には年2回、会社に検診車を呼んで受診させていました。女性には婦人科健診も含め実施しています。今回、さらに協会けんぽの力を借りて、喫煙者数が多いことから肺年齢の診断をしたり、歯周病検査を実施したりして、さらに健康に向けて会社は取り組んでいるところを示しています。目に見えるところでは、社内の皆が通る階段などに「生活習慣改善10カ条」といったPOPを掲示しています。

 食生活ではドライバーは高い脂質の食品を食べたり、糖質が多い缶コーヒーを頻繁に飲んだりしています。そこで社内に乳製品や果汁飲料の自販機を設置し、少しでも缶コーヒーから切り替えるよう促しています。喫煙率が高い現状から分煙化にも取り組んでいます。今まではどこでも誰でも吸えるという状況でしたが、喫煙ルームを設けてしっかり分煙し、会社も禁煙に取り組んでいるというところを見せています。

禁煙4回失敗の安全管理者が禁煙外来へ

 2カ月に1度、協会けんぽ広島支部の担当の方に来ていただいて、ドライバーの班長クラスなどを集めた場で、生活習慣病の予防や喫煙に対するリスクについての講演を行って、班長、上長が率先して意識を高めていくという取組みをしております。

 最後にひとつ紹介したいのですが、会社がこの健康経営に取り組んでいく中で、今まで4回禁煙に挑戦した44歳の安全管理者が、今回はしっかり禁煙外来に通い、禁煙すると宣言しました。こうした管理職を筆頭に健康経営が従業員全体に広がっていく流れを作っていきたいと思います。今井運送はこうした取組みを始めたばかりの企業ですが、健康診断100%受診、再検査100%受診というように、ひとつひとつ積み重ねて社員全員の健康を守っていきたいと思います。


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