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「健康経営」実践促進セミナー in大阪

「健康経営の実践促進」と銘打った経済産業省主催の全国セミナーが各地で開催されています。大阪市で行われたセミナーの模様をお伝えします。

1.「健康経営への取り組み」
JOHNAN(京都府)
代表取締役 山本光世(やまもと・みつよ)

山本光世氏

社名:JOHNAN
設立:1968年(創業は1962年)
本社所在地:京都府宇治市
従業員数:588人
主な事業:電子部品の受託製造など。国内に9拠点、中国とタイ、マレーシアに工場を持つ

国内外の拠点に安全衛生の担当者を置く

 グループ全体で従業員は729名で、本社には86名います。私は36歳だった2010年6月に会社の代表となり、1年後にメンタルヘルス指針を掲げました。現在、産業医や安全衛生委員会、健康相談室、総務部、人事部が連携しながら健康づくりに取り組んでいます。国内外の拠点に安全衛生の担当者を置き、本社の健康相談室がハブ(中心地)の機能を担います。社員が誰でもいつでも気軽に出入りできるように「心の相談室」から「健康相談室」に名称を変え、最も往来の多い社員食堂前のメイン通路に場所を移しました。経営者である私自身も時おり出入りして、部下のこととかを含めてちょっとした相談にのってもらっています。

 健康づくり計画の柱は「コンプライアンスとリスクマネジメント」「健康保持増進」「生産性向上」の3つです。2007年から健康診断の100%受診の結果をデータ化し、有所見率と脂質異常症率の低減に取り組んでいます。建物内の完全禁煙などにより喫煙者の数は大幅に下がっています。世界禁煙デーとか禁煙週間などの機会をとらまえながら産業医による啓蒙活動を行っています。ストレスチェックに関しても調査データをきちんと把握して分析し、産業医の面接指導や健康相談室長のカウンセリングを通してメンタルの不調者の予防に取り組んでいます。

 私が代表になった2010年当時はリーマンショックで会社の経営は非常に厳しい状況でした。代表になって最初の仕事は広い意味でのリストラで、従業員に退職勧奨をしなければならなかったのです。対象者の中に、障害者の手帳を持っていないんだけれども、少し学習に遅れがある男性がいて、ご家族のところへ会いに行き、「申し訳ないのですが、退職して新しい仕事を探してもらえないでしょうか」と事情を説明しました。その時、お母さんにこう言われたのです。「私の息子は立派なんですよ。給料でテレビを買ってくれました」と。なんて答えていいのか分かりませんでした。「経営者として最後に残せるものは何なのか?」と深く考えさせられる辛い体験でした。「どこの会社に行っても活躍できる人材を育てることに経営者はこだわらなければいけない」と、従業員の健康並びに教育を大事にするようになったのです。

30代半ばの女性たちが「管理職を目指したい」

 当社の管理職はどちらかといえばプレーイングマネージャーをやっています。先輩たちの長時間の働き方を見てきた女性従業員の間では「管理職になりたいけれど、なりたくない」との意識が強かったのですが、働き方の意識改革にも取り組む健康経営の具体的な活動が広がったことで、30代半ばの女性たちが「管理職を目指したい」と言ってくれるようになりました。私にとっても非常に励みになっていて、大きな効果と思っています。率先して健康宣言をしたいちばん最初はどちらかというと、「なんや、また社長が何を始めたんや?」というのが現場の本音であったのではないだろうかと思います。分煙をするとか、喫煙する場所を外にするだとか、小さなことでも目に見える形にすることで「あっ、会社が変わっていこうとしているのだな」ということを感じてもらえたようです。

 健康相談室の室長は健康経営に関する様々な実務の責任者です、健康経営が経営そのものの一部だということを、グループ会議のメンバーである子会社の社長や事業所長クラスの幹部に知ってもらう必要があると考え、グループの経営戦略や事業戦略などを決める経営会議のメンバーに室長を加えました。健康経営に対する雰囲気が変わりましたね。経営の実情をよく理解した健康相談室の室長がメンタルヘルスなどの相談に個別対応してもらえることで、一体感を持ちやすくなりました。

 京都府から今年6月、健康づくり実践企業の最優秀賞に選んでいただきました。まだまだ道半ばですが、地に足のついた健康経営に努めていきたいと考えています。

2.「健康経営への取り組み」
ヒューマンケアキダデ(和歌山県)
衛生管理責任者
川崎浩美(かわさき・ひろみ)

川崎浩美氏

社名:ヒューマンケアキダデ
設立:2000年
本社所在地:和歌山県御坊市
従業員数:102人
主な事業:通所や在宅などの介護福祉サービス

ポイント制導入で利用率向上

 会社の母体は総合病院なども運営する社会医療法人黎明会です。黎明会の理事長は「予防、医療、介護のユートピアを作り、全国に発信する」ことを経営理念に掲げて地域の健康増進に力を入れており、病院内のフィットネスクラブは職員だけでなく地域の人たちにも使ってもらう目的で設置しました。私たちは3年前、職員の体と心の健康づくりの取り組みを始めました。フィットネスクラブのほか、高齢者のリハビリなどを目的に導入した「レッドコード」と呼ばれる運動療法器具を活用した健康管理の試みです。利用回数の多い職員に賞品を贈って表彰したのですが、利用者が偏り、なかなか全員に浸透しません。そこで3年目のこの春、「出来るだけ多くの職員が1年を通して参加できるようなシステムはないものか」と考え、ポイント制を導入しました。

 フィットネスクラブやレッドコードの利用は1回につき1ポイントを付与します。運動だけではありません。感染症や腰痛予防、メンタルヘルスなどの社内研修や勉強会もポイントの対象です。これまで参加する職員の数が少なかったので、いちばん高い5ポイントを与えて参加率のアップを狙っています。ボウリング大会や忘年会など職員交流の社内イベントに参加した場合も5ポイントを付与します。

 独自の健康法に取り組む職員も評価項目に加えました。「1日に1食、玄米食を食べる」「禁煙をする」「レッドコードでぶら下がり健康法を1分する」など、どんな内容でもOKです。取り組みを宣言した職員には、まず2ポイントを付与し、3ヶ月ごとに状況をチェックして継続中の場合は2ポイントを加算します。「天気の良い日にジョギングをする」と宣言したものの、早々に挫折した職員がいました。「天気の良い日になわとびをする」との内容に変えて宣言をやり直したのですが、開始時点で2ポイントを付けました。2度の宣言で計4ポイントを得たことになります。宣言は強制ではありません。健康を意識して「自分でやれることから始めてみよう」と挑戦する点に意味があり、宣言を繰り返してポイントを稼ぐ職員がいたとしてもOKと考えています。宣言の内容をなわとびに切り替えた職員は現在、小学生の子どもと一緒に親子で独自の健康法を続けています。

感染症にかかったらマイナスポイント

 「健康チャレンジ」と名付けたポイント制の一覧表を見ればお分かりになるでしょうが、インフルエンザやノロウイルスの感染症にかかった職員はマイナスのポイントを付けることにしました。少し厳しいと感じられるかもしれませんが、「福祉医療の職場で働く以上、ふだんから自己管理に気をつけてくださいね」との意味を込めました。

パネルディスカッション
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 ポイント制の仕組みづくりでは、全国健康保険協会(協会けんぽ)和歌山支部のサポートがありました。この春から和歌山支部で実施する健康宣言の実施企業にエントリーし、健康経営を実践するために様々な支援やアドバイスを受けています。「ホコタッチ」と呼ぶ専用の歩行計を借り受け、1カ月間の歩数をランキングとして表示しています。ホコタッチを使い始めた職員に2ポイントを与えるなど、ポイント制に取り入れました。この春のスタート当初は、周りから「何をしてるの?」と尋ねられることが多かったのですが、現在では参加率が増えてきていることを実感でき、職員の健康への意識も高まってきているように思います。ホコタッチを例に挙げると、歩数を競い合う職員同士の会話が増えました。部署が違うため、これまで接点のなかった職場のコミュニケーションに良い効果をもたらしています。

 黎明会の理事長は常々、「職員の満足度は顧客の満足度でもあること」を強調しています。「職員が仕事に満足していなければ、患者や施設の利用者が満足するサービスを提供できない」というわけです。経営トップの強い思いを受け、職員の満足度につながる体と心の健康づくりを進めていきたいと思います。


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