• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
日経トップリーダーSpecial 日経トップリーダーSpecial

「健康経営」実践促進セミナー in東京

「健康経営の実践促進」をテーマにした経済産業省主催の全国セミナーが各地で開催されています。東京都文京区で行われたセミナーの模様をお伝えします。

1.「健康宣言、メンヘル、禁煙対策の契機に」
スターヒューズ(東京都渋谷区)
代表取締役社長 柳田道康(やなぎだ・みちやす)

柳田氏

社名:スターヒューズ
設立:1916年
本社所在地:東京都渋谷区
従業員数:17人
主な事業:ヒューズ製造・販売

 スターヒューズは名前の通り、創業以来、電流から電気回路を保護するヒューズの製造・販売を手がけています。近年、民生用ではブレーカーが使われていますが、事業所向けでは現在もヒューズが使われています。納入先は鉄道会社、電機メーカー、建築関連などです。1992年、近隣の道路拡幅をきっかけに工場を栃木県那須郡那珂川町に移転し、東京都渋谷区に本社だけを置いています。

 主に使用する材料は金属で、特に鉛を昔から多く使っています。鉛以外に銅や亜鉛も使用しており、こうした材料の取り扱いと従業員の健康管理には創業時から気を使ってきました。ほとんどの製品は金属加工を経て出荷します。作業工程でプレスや旋盤などの工作機械を使用するので、安全管理の面でも、従業員が安心して仕事ができるように気を使ってきました。

健康管理の責任者を選任

 栃木の工場では年1回、従業員の健康診断を実施しています。さらに、昔から成人病の健診、今でいう生活習慣病の予防健診を全員に受けさせてきました。本来は40歳以上が対象ですが、40歳以下の人にもほぼ同じように受けてもらってきました。協会けんぽの協力を得て、前立腺や消化器など従業員が自分で気になる箇所の病気を1~2つ選んでチェックできる健診を積極的に受けてもらう取り組みを会社負担で進めています。

 栃木と東京でそれぞれ健康管理の責任者を選任し、従業員の健診の結果をチェックし、本人が気付かないことにも注意する体制を整えています。従業員が健康な状態で仕事をすることは、本人だけでなく家族のためでもあり、最終的には会社のためにもなるという思いを持って積極的に取り組んでいます。栃木では全員が自動車通勤であるため、常に良好な状態で会社に来てもらうことが特に重要です。

生活習慣病予防セミナー、健康意識高める好機

 今回、協会けんぽの健康宣言事業に手を挙げたのは、従業員の健康増進にさらに前向きに取り組むいい機会になると考えたからです。メンタルヘルス対策も、当社の規模では義務化されていないのできっかけもなかったのですが、宣言が対策を考えるいい機会になりました。協会けんぽに派遣してもらう保健師による生活習慣病予防セミナーの開催も、従業員の健康への意識を高める絶好の機会になると考えています。
 今後の課題は栃木の工場での喫煙対策です。分煙などに取り組んだ上で、最終的には本人が止める禁煙に持っていけたらと考えていますが、決して強制をするわけではありません。健康宣言は喫煙対策に取り組むためのいいきっかけにもなると考えています。 

2.「社員は家族、言いにくいことも伝え、信頼関係を構築」
鳳自動車(東京都葛飾区)
常任顧問 吉澤幸子(よしざわ・さちこ)

吉沢氏

社名:鳳自動車
設立:1960年
本社所在地:東京都葛飾区
従業員数:150人
主な事業:タクシー業

 鳳自動車は1960年設立のタクシー会社です。タクシー業はお客様さまを安全・安心に目的地までお送りする仕事です。従業員は150人、2016年8月現在で平均年齢は61歳と、東京の法人タクシー運転手の平均年齢58.6歳より、少し高くなっています。

 タクシー乗務員の1勤務は、休憩時間を含み20時間で2日にわたります。当社の場合、「3勤務を続けて1日公休、3勤務続けて2日公休」の繰り返しです。週40時間の労働時間は守られています。しかし、1勤務の労働時間が長く、接客業でもあるゆえに休憩時間や食事時間がとりにくい、また、明け番のときに十分な休養をとらなければならないというのが健康上の課題です。腰痛や脂質異常症が比較的多く、理由として生活習慣や運動不足が挙げられます。

検診の実施日、半年前から周知

 会社として健康づくりに積極的に取り組むようになったきっかけは20数年前にさかのぼります。当時は社員の平均年齢が若く、健診の結果が出ても健康を過信して検査に行かない人がいて、次回の健診結果で大病のがんが見つかったことがありました。幸い、発見が早かったため、入院、手術をして転移もなく、仕事に復帰して定年後まで勤務ができました。これを契機に健診の重要性と早期発見・治療の必要性を訴えるようになりました。

 当社では巡回健診を年2回実施しています。タクシー業は年2回の健診を義務付けられています。健診の実施日は半年前に決めて、すぐに全員に周知します。毎日の始業点呼や研修会などを通じ、実施日まで周知活動を継続しています。定期健診では、自覚がない病気が見つかることもあります。結果が出ると月1回の研修会で、個人情報に最新の注意を払いながら従業員全員の結果を報告しています。内容は受診者数と、そのうち診断結果に異常の所見がある人の数や脂質異常症、高血圧など症状別の内訳の人数などです。

 結果を報告すると従業員の間で同じような症状が他の人にもあることがわかり、仲間内で話題に上るようになりました。要精密検査などの該当者には「検査は受けましたか」「変わりないですか」などの声がけをして、さらに検査結果の報告をしてもらい、追跡調査をします。会社の建物内には血圧計やアルコールチェッカーを設置しました。こうした取り組みを継続し、受診率が100%になるのに約10年かかりました。現在は毎回100%です。

保健師、栄養士の講演が好評

 協会けんぽ東京支部には特定保健指導だけでなく、全員への指導として、保健師さん、栄養士さんによる生活習慣病などに関する講演と保健指導を毎年お願いしています。生のデータを始めたお話が大変好評です。みんなで一緒に体操をしてからお話をうかがうことにしており、講師の保健師、栄養士さんと仲間のような気持ちになって一生懸命、話を聞きます。

 一連の取り組みの結果、全従業員の健康に対する意識が高まり、健診を受診するのは当たり前という雰囲気になりました。早期発見・治療により、大きな病気は少なくなりました。社員の間で健康に関する話題が出るようになり、健康管理に取り組むようになりました。例えば生活習慣や食生活の改善などの話題が増えており、保健師さん、管理栄養士さんの講話・保健指導の効果は大きいです。当社の平均勤続年数は16年8カ月。同業の全国平均の1.8倍以上というのも取り組みの成果です。

平均勤続年数の比較
グラフ
[画像のクリックで拡大表示]

さりげない声がけ、自然体で実践

 非常に大切なのは、社内での身近なコミュニケーションです。社員は家族。家族と思えば、普段言いにくいことでもいえるようになります。「精密検査に行きましたか」「結果はどうでしたか」「歩いていますか」といったさりげない声がけを会社全体において自然体で実践しています。飲料の自動販売機の前で、甘い飲み物を買っている人を見つけると「またそんな甘いもの飲んでいるの?」と話しかけることもあります。「病気、家族の不幸…。困ったことがあったら、会社に相談してほしい。制度の活用などで、できるだけのことをする」という話もいつもしていて、心配事がないかストレートにたずねています。

 20数年前、大病になった本人の不安、家族の心労を目の当たりして、健康管理について強く注意しておけばよかったと痛感しました。それからは言いにくいことも自然体で言うように努めることで、思いやりを持って接してもらっているという受け止めが広がったのだろうと思います。一人ひとりとの信頼関係を構築していった結果、会社を信頼して大丈夫となったのでしょう。重病者がいないという健診結果を全員に伝えると拍手がおこり、健康であることを共に喜ぶ土壌ができたのだと思います。

 当たり前のことを当たり前に実践してきたことが、昨年12月の「健康宣言」を経て、今年6月に協会けんぽから「銀の認定書」をいただくという評価に結びつき、大変うれしく思っています。企業は人、従業員は家族、家族の健康は財産です。これからは従業員や家族の「健康年齢」を伸ばしていくことも考えていきたいと思っています。


「健康経営」が変える中小企業の活力と生産性 トップページ