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「健康経営」実践促進セミナー in札幌

「健康経営の実践促進」をテーマにした経済産業省主催の全国セミナーが各地で開催されました。札幌市で行われたセミナーの模様をお伝えします。

1.「健康経営の取り組み」
江別製粉(北海道)
代表取締役社長 安孫子俊之(あびこ・としゆき)

安孫子氏

社名:江別製粉
設立:1948年
本社所在地:北海道江別市
従業員:61人
主な事業:小麦粉などの製造・販売。現在の品揃えは約400種類

癌検査の個人負担費用分を2回の分割払いに

 1年間に約3万2000tの小麦を加工しています。アメリカやカナダから輸入した小麦も使用していますが、混ぜて使うことはなく、北海道産の小麦は北海道の小麦粉として全国に販売しています。支店や営業所を設けておらず、5名の営業マンのうち必ず誰かが毎週、東京に行ったり大阪にセールスで出張したりしています。「東京に営業所を持たないのか?」と、よく聞かれますが、5名全員が北海道の出身なので慣れない東京暮らしでつらい思いをするよりも自宅のある江別から行ったり来たりの方が良いと考えています。これも健康経営の一環と言ってよいのかもしれません。

 従業員は全部で61名です。平均年齢は約40歳で、製粉業界では平均的な数字でしょう。健康管理の取り組みはいくつかあります。年に1回の定期健康診断では全員に血液検査を実施しています。オプションの癌検査は任意です。癌検査の費用は個人負担で給与から天引きですが、検査の項目の中には3万円を超す高額のものもあり、2回の分割払いができるようにしました。メンタルヘルス対策では、今年10月からストレスチェックを導入したのに併せて社外相談窓口を開設しました。全国健康保険協会(協会けんぽ)北海道支部の協力により、従業員の健診結果と医療費データを付き合わせて検証し、生活習慣病の予防対策にも取り組んでいます。血圧のリスク保有率は改善されていますが、メタボリックシンドロームのリスク保有率が全国や北海道の平均に比べて高く、喫煙者の割合の同じように高い。もっと健康管理をやらなければいけないと思っています。

スポーツクラブの利用料は全額会社負担

 私は数年前からランニングを始めました。同じ製粉業界の先輩である社長のブログを読んだのがきっかけでした。「毎日、接待などで好き勝手に飲み食いしているが、自分の健康は自分だけのものではなく、社員の生活を守るためにある。だから運動を始めた」という内容でした。尊敬する社長の言葉に洗脳されたわけです。フルマラソンの経験はまだありませんが、10kmぐらいなら余裕を持って走れます。会社の健康増進の取り組みとして、江別市に1つだけある民間のスポーツクラブと契約を結び、従業員本人だけでなく家族も利用できるようにしました。年間予算として約50万円を計上し、費用の全額を会社が負担します。江別は民間のスポーツクラブの数が少なく、個人でお金を払って利用するとなると、おそらく多くの従業員が「行ってみようかなあ」という気になれないと思うのですが、そんな施設に60代から20代までの女性の従業員が連れ立って出かけ、フィットネスやヨガ教室などで汗を流しています。部署を超えた従業員の交流が生まれ、大変うれしく思っています。

 喫煙対策では完全分煙を導入しました。喫煙所を別に設け、敷地内は基本的に禁煙です。集荷で出入りするトラックの運転手にも協力をお願いしています。ワークライフバランスの改善にも取り組んでいます。全体としてみれば、年次有給休暇の消化率が34%に上がり、輸送関連部門の残業時間が削減されるといった成果は出ていますが、倉庫の管理部門の残業時間の改善が急務です。北海道産の良質な小麦粉を製造する会社のブランドイメージや期待を裏切らないためにも、まず社員ひとりひとりが健康で生き生きと仕事のできる環境づくりを、これからも継続的に行っていきます。

2.「地域における健康経営の推進について~健康経営都市宣言のもと持続可能な地域コミュニティ形成へ~」
岩見沢市(北海道)
市長 松野哲(まつの・さとる)

松野氏

自治体名:岩見沢市
面積:約 481km2 *約4割が農地
人口:約 8万4000人、高齢化率は約 32%
主な産業:米や小麦、たまねぎなどの農業。ICTを産業・地域振興に活用

全国の自治体で初めて「健康経営都市宣言」の認定

 岩見沢市は札幌から北東に約40km離れており、札幌と新千歳空港とを直線で正三角形の頂点の位置にあります。北海道内の陸上交通の要衝地の1つでもあり、石炭産業が盛んだった昔は近隣の炭鉱と北海道各地の港湾都市を結ぶ拠点として発展しました。土地の約4割を農地が占める市の基幹産業は農業で、米や小麦、たまねぎを中心に一定以上の規模が必要な土地利用型の農業を主としています。岩見沢市では、市民の生活向上や地域経済の活性化を目標に20年以上前から情報通信技術(ICT)の活用に力を入れ、市町村として日本で初めて自営の光ファイバー網を整備しました。児童の登下校をサポートする見守りシステムなど教育や医療、福祉の幅広い分野で住民サービスを提供しているほか、基幹産業の農業でも衛星利用測位システム(GPS)によるトラクターの自動走行に代表される高度な取り組みを進めています。

 全国の多くの自治体と同様に人口減少問題を抱えています。私は4年前の市長就任以降、子育て支援策に力を入れてきました。転出入で若干の明るい兆しが見えてきていますが、将来にわたって活力のある町とするために今年1月、市の総合戦略を策定しました。今年6月に健康経営の普及を推進する大阪のNPO法人、健康経営研究会から全国の自治体で初めて「健康経営都市宣言」を認定されたわけですが、市の総合戦略で掲げる4つの重点施策のすべてが健康経営都市に関連するものです。

 1つ目の「農と食による産業を育むまち」は、基幹産業の農業を軸とした施策です。農水省指定の事業で北海道大学農学部の研究者と協調してロボット技術やAI(人工知能)を活用し、低コスト化を図りながら生産性や品質の向上実現する農業の基盤開発を進めています。2つ目の施策の「若者から高齢者まで誰もが住みやすいまち」を目指すため、北海道大学に拠点を置く産学事業の「食と健康の達人」に自治体として唯一参画しています。おいしい健康食と楽しい運動のプログラムを組み合わせ、健康で生き生きと暮らせるコミュニティを創出していきます。3つ目の施策は「女性と子育てに日本で一番快適なまち」で、屋内型の遊びの広場や子育て支援センターなどを集約した「こども・子育てひろば」(愛称・えみふる)を今年の春に開設しました。

市民一人ひとりが生きがいを持って暮らせるまちづくり

 4つ目の施策が「健康経営を実践するまち」です。健康経営都市宣言に認定された以上、市民一人ひとりが健康であることは当然なわけで、まち全体が健康であることが重要であり、大事な目標と考えます。まち全体が健康であるという表現を言い換えれば、生きがいを持って暮らせる地域づくりということになります。北海道大学の「食と健康の達人」事業と連携するほか、市のITC環境をさらに活用していきます。市民の健診データなどを基にまち全体の健康状態を分析し、生活習慣病のリスクマネジメントなどにつなげる健康予報システムを開発中です。北大病院や市立総合病院などの協力を得て美味しい病院食の開発も目指しています。新たな地域ブランド商品やサービスを展開できれば、農業の活性化はもとより、女性や高齢者の就労機会を構築できると期待しています。

 企業の経営者が従業員を会社の財産と考えて健康経営を実践しているように、健康経営都市宣言では市民を地域の大事な人材と捉え、医療や介護の予防コストの観点からも市民が健康で生きがいをもって生活する新しい地域の創出を考えています。岩見沢商工会議所などの「産」に、北海道大学や北海道教育大の「学」と空知信用金庫などの「金」を加えた「オール岩見沢」の産官学金で健康経営都市づくりを力強く推進していきます。


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