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働き方の安心・安定は「悪魔のささやき」

■基調講演
安心・安定は「悪魔のささやき」、緊張感を生むワークスタイルが必要

一橋大学名誉教授
石倉 洋子氏

 基調講演では、一橋大学名誉教授の石倉洋子氏が「新しいワークスタイル~日本企業の課題~」をテーマに語った。

 爆発的な技術革新やグローバルなリスクの拡散、さらにはシェアリングエコノミーの登場など、世界が大きく変化している現在、「世界がこれからどこへ向かうのかは、専門家でもわからない」と石倉氏は言う。

 少なくとも言えるのは、今までのやり方は通用しないということだ。それだけはハッキリしている。

 「企業の競争力の源泉はイノベーションですが、こういう時代には、常に試行錯誤していくことが求められます。その時、安心・安定という言葉は、『悪魔のささやき』になるかもしれません。そういう意味で、日本の20代の人たちの間で、終身雇用志向が高まっていることは非常に心配です。若い人が安定志向に安住しているようでは、企業、引いては国の競争力が損われかねない」

 やはり競争力・イノベーションの源泉は人。だからこそ、意欲と変化を促すワークスタイルの変革が今、これだけ注目されているのだ。

 続いて石倉氏は、世界経済フォーラムの「Future of Jobs」レポートを紹介。世界の人事担当者に「2020年までに労働市場に影響を与える要因」を聞いたところ、一番多かった回答は「働き方の変化」「柔軟な雇用」だったと指摘する。

 その背景にあるのは、モバイルやクラウドといったテクノロジーの変化だ。一方で、価値観の変化も影響している。

 「たとえば最近の若い人は、『社会のためになっている』『目標やビジョンがある』ということを基準に会社を選ぶようになっています。競争力の源泉である能力の高い人材を引きつけ、維持するためには、単に待遇が良いということではなく、企業が『目指す所』(Purpose)を明示することが求められていると言えるでしょう」

 具体的に企業がやるべきこととして、石倉氏は「明確な目標を掲げ、『個』を生かす」「フルタイムではなく、タスクやプロジェクト単位での働き方などを用意する」「従業員が新しい力やスキルを実践できる機会を用意する」といった項目を挙げる。

 こうした施策を通して、「正社員・長期的な雇用」という定型的なキャリアにとらわれず、もっと人がイノベーティブなアイデアを出し、実践できるような場を提供していくことが重要になる。

 「新しい働き方は、みんなが楽をするというわけではありません。建設的で、良い意味での緊張感、多様性を生み出すことが、新しい働き方のあるべき姿と考えます。多様で異質な人がいると職場に違和感が残ります。しかし、この違和感がなければ、競争力はつかない。常に緊張感を生むワークスタイルが、新しい時代には必要なのです」。石倉氏はそう強調する。


■特別講演
組織と個人の関係を考え、「自分らしさと能力」を活かす

岡村製作所
マーケティング本部 ソリューション戦略部
未来企画室 室長
遅野井 宏氏

 特別講演に登壇した岡村製作所 マーケティング本部 未来企画室室長の遅野井宏氏は冒頭で、「ワークスタイルというのはある意味厄介な言葉」と指摘する。

 「ある人はフリーアドレス制をイメージし、別の人はノマドワーク、ダイバーシティ、フレックス・裁量労働、ワークライフバランスなどをイメージします。ITツール・人事制度・ファシリティなど、ワークスタイルに関わるキーワードは多岐にわたる。その結果、ワークスタイル変革というのは、各部門の個別施策に陥りがちなのです」

 しかも、個別施策さえクリアすれば、ワークスタイルは変えることができると安易に考えられている面もあるのではないかと指摘する。変革とは「根本的に変えること」。 これが「ライフスタイル」であれば、簡単に変えられると思う人はあまりいない。同じようにワークスタイルも、実は、根本的に変えることは容易ではないという認識にまず立つべきだという。

 こう述べた上で遅野井氏は、「ABW(Activity Based Workplace)」と呼ばれる働くワークプレイスの考え方を提示する。

 「ABWとは、一人ひとりが働き方や仕事の目的に合わせ、最適な場所を主体的に選択して働くワークプレイスのことです。単なるフリーアドレスではない概念です」

 たとえば、人によって集中しやすい環境は異なる。図書館のように静かなところが良い人もいれば、カフェのようにザワザワしたところが好きな人もいる。また、仕事の内容によっても、集中しやすい環境は変わる。

 ABWでは、そうした環境をいくつか提供する。「日本のオフィスは自席と会議室しか選択肢がありません。実際に作業環境の選択肢がある場合には、仕事への好影響があることもわかっています」と遅野井氏。

 さらに、ワークスタイル変革の効果を最大化するには、組織と個人の関係を見直していく必要がある。

 「まず、組織は働く一人ひとりを多様な『個人』として捉え、感性・価値観・行動といった人間性に着目した働き方のプラットフォームを整備する、という視点が不可欠になっていくはずです。一方、個人は自らの能力やキャリアに対して『主体性を持つこと』が必要です」

 個人はエンプロイアビリティ(雇用に値する能力)を高めて、自らのキャリアを主体的にデザインする。同時に、様々なオプションから自律的に働き方を選択し、成果を上げる。組織は一人ひとりとしっかり対話し、日常の成果・悩みや中長期のキャリアを相談する――。「こうした組織と個人の関係を通して、自分らしさと能力を思いのままに発揮している状態(Natural-being)を実現していくのが、ワークスタイル変革の目指すゴール。働き方は誰かが変えてくれるものではない。自分たちで変えていくのだ」 と遅野井氏は強調する。