今日のビジネス環境はますます変化のスピードと複雑性を増しており、将来を正確に予測することは困難だ。こうした環境下で、旧来のヒエラルキー型組織と中央集権的意思決定のプロセスは機能不全に陥っている。
ドーモ(Domo)のシニア ソリューション コンサルタントである奥野和弘氏は、「予測不可能なビジネス環境を勝ち残るための組織のあり方とデータの活用」をテーマに講演。新しい時代に求められる組織像と、それを支えるデータ活用方法について紹介する。
奥野氏はまず、世界的に注目されている「VUCA」というキーワードに言及する。この言葉は「不安定さ(Volatility)」「不確実さ(Uncertainy)」「複雑さ(Complexity)」「曖昧さ(Ambiguity)」という4つの単語の頭文字を取ったものである。
「今日のビジネスは、不安定で変化が激しく、先が読めない上に、複雑で、曖昧になっているということを意味しています。イノベーションはますます加速し、有望なビジネスモデルもあっという間に成熟、陳腐化する時代になっているからです」(奥野氏)
地球の裏側で起きたイノベーションが瞬く間に世界に広がり、それまで安定したビジネスモデルで発展してきた業界が突然、急激に変化してしまう。サプライチェーンもグローバル化し、いまや地球のどこからでも、マーケットに大きな影響を与えることができる。次に起こることが誰にも予測できない時代になっている。
「不確実性が少なく、計画通りにビジネスを進めていくことができた時代には、ヒエラルキー型の組織が最も効率的だった。しかし、21世紀のビジネス環境には、ネットワーク型の組織が適している」と奥野氏は言う。
ヒエラルキー型の組織は効率性という面では優れているが、変化に対する柔軟性では劣る。計画と執行が分離することによるスピード感の欠如が、21世紀型ビジネス環境においては致命傷になる。
一方、ネットワーク型の組織は、現場にいる小さなチームが全体の戦略を理解しつつ、個々のミッションをどのように遂行するべきか、自分たちで考えて意思決定を下し、行動する柔軟性を持っている。これは、ITインフラの発達により、リアルタイムに現場の状況を伝達することができるようになった点も大きく影響している。
以上のように、奥野氏はネットワーク型組織のメリットを分析する。
「VUCAな世界で勝ち抜くのに必要な組織のあり方とは、少人数の意思決定者がすべての決定を行う組織ではなく、熱いものに触れた時に何も考えなくても反射的に手を引くように、組織のあらゆる部分が課題に対して適切に反応できる組織です」
こう述べた上で、奥野氏はネットワーク型の組織になるために必要なポイントを3つ挙げる。
「1つ目は、情報を可能な限り共有するということです。すなわち、データの民主化です。2つ目は、セクショナリズムを排し組織の壁を越えて協力すること。そして3つめは、必要な権限を適切な形で委譲することです。その結果、変化の兆しをより早く捉えて対応する、仮説立案・検証を圧倒的なスピードで回す、イノベーションを起こす、といったことが可能になります」
Domoでは、こうした「データの民主化」を支援するビジネス管理プラットフォームを提供している。数百のコネクタを持ち、企業内のありとあらゆるデータを可視化し、集めることができる。しかも、CEO(最高経営責任者)から営業担当者まで、特別な知識は不要で、誰もがデータを検索し、変換し、視覚化し、共有、活用することが可能になる。
これまで、データを活用して業務上の意思決定に結びつけることで、より正確で迅速なビジネスを実現できるということはわかっていながらも、既存のBIツールやダッシュボードツールは、データアナリストや意思決定者など一部の人だけしか扱うことができていなかった。Domoは、特別な知識がなくても、組織の誰もがデータを活用し、より良い意思決定を行えるように設計されたソリューションだ。
「当社のプラットフォームを導入したユーザー企業からは、『各部門の責任者だけでなく、直接的には売上責任を負わないような現場スタッフも、部門全体のKPIと自分のKPIの関連性を意識しつつ、データを活用するようになった』といった声をいただいています」と話し、奥野氏は21世紀に生き残る組織のポイントを次のように指摘する。
「従来のやり方を続ける企業は時代の変化に対応できず、いずれ淘汰されていくことになります。そうならないためにもデータに基づいて敏感に変化に対応し、現場レベルで素早く改善サイクルを回す。それが、21世紀に生き残る組織をつくっていくと考えています」
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