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日本発ビジネスモデルで世界へ。

FA(工場の自動化)製造装置や金型に使われるミスミブランド部品の製造、販売を行う「メーカー事業」と、他社ブランド商品を扱う「流通事業」を併せ持つユニークなビジネスモデルで急成長を遂げている株式会社ミスミグループ本社(以下ミスミ)。そして今、ものづくりの新しい潮流として「インダストリー4.0」が注目される中、日本発のビジネスモデルで世界に挑む。大野龍隆(おおの・りゅうせい)CEOに真意を問うた。

ミスミ以前と以後では、
製造業の世界では何が変わったのか

──ミスミの成長を支えるビジネスモデルは大変ユニークであると伺っています。このモデルによって、ミスミ以前と以後で、製造業の世界では何がどう変わったのでしょうか。

 ミスミの歴史は、1963年の創業以来、半世紀を超えます。私たちが事業参入する以前は、FA製造装置や金型を構成する超精密部品というと、標準品、つまり規格化された部品はほとんどなくて、一つひとつ詳細な図面を書いて注文する「特注対応」が当たり前でした。製造業のお客さまにとっては、まずその部品を作れる技術力を持ったサプライヤーを探すのが大変。さらには見積もりを取り、仕様を打合わせ、部品によっては長納期、高価格を覚悟しなければならないなど、様々な非効率がそこにはありました。

 そこで私たちは、主要な部品を標準化し、ウェブや紙のカタログを見て、型番や寸法を指定するだけですぐに注文できるようにしました。この受注製作のプロセスをミスミでは「Make to Order(MTO)」と呼んでいます。MTOで発注できる部品は、サイズのバリエーションを含めると800垓(1兆の800億倍)のアイテム数を誇ります。お客さまはカタログを見れば、価格や納期も一目瞭然。図面を書く必要もなくなり、さらには見積もりや納期を交渉する必要もなくなりました。

──しかし、その膨大な品揃えの中から、どんな製品の注文が、いつ、どこから何個入るかわからないわけですよね。それでもオーダーを受けてから2日目には出荷できるという「確実短納期」を実現できるのはなぜですか。

 部品を標準化して生産、販売するに当たり、まず、ミスミが部品の製造を委託する“協力メーカー”をネットワーク化しました。納期を短縮する、納期を必ず守る、ということに長い年月をかけて協力メーカーと一緒に取り組んできました。2005年にはメーカー駿河精機を買収したことで生産機能を内製化し、同時にリードタイムの短縮など生産改善に必死で取り組んできました。受注製作品の標準納期を受注後3日目出荷から2日目出荷に短縮できたのは、ミスミが10年をかけて取り組んできたプロセス改革の集大成によるものと言えます。

1964年東京都生まれ。87年ミスミ(現ミスミグループ本社)入社。2013年12月、社長就任。2014年6月から社長 CEO。

──2010年からはVONA(ヴォーナ)事業をスタートし、急速に伸びています。これはミスミのメーカー事業とは何が違うのですか。

 VONAは、ミスミブランドの製品だけでなく、他社ブランドも扱う流通事業です。お客さまは製造現場で使用する様々な部品をワンストップで、効率よく調達したいという課題を抱えています。一方で各々の部品メーカーも、自社販売網以外に、ミスミの事業基盤を使えば販路を拡大するチャンスとなります。当社には世界に22万社のお客さまがいて、オーダーの8割以上がデジタルメディアからの注文という他に類を見ない実績があります。VONAはその両者をつなぐプラットフォームなのです。

 こうしたプラットフォームが登場することで、これまでの多段階かつ非効率な流通が大きく変わります。部品の標準化も、VONAというプラットフォームの構築も、お客さまの非効率を解消することが狙いであり、それはミスミの使命とも言えます。


連結売上高推移(単位:億円)
メーカー事業、流通事業の強化で売り上げを急拡大
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製造業の進化「インダストリー4.0」の到来は
ミスミの強みを活かす創業以来最大のチャンス

──製造業の進化はますます急速で、最近はインターネット技術を活用した「インダストリー4.0」という新たな取り組みも注目されています。

 製造業がインダストリー4.0に対応するためには、部品の標準化や電子調達率をさらに高めることが必須です。これに即時対応できる生産間接材のサプライヤーの存在や、それをつなぐプラットフォームの存在が求められます。しかし、こうしたニーズにグローバルで対応可能なサプライヤーは世界中を見回してもそう多くない。私たちは、1970年代からデジタルデータ交換によるEDI取引を始め、1980年代には金型設計専用のCADシステムを販売、2000年代に入るころにはインターネットを活用したオーダリングシステムを構築していました。デジタルデータを扱う分野への関わりは長く、かつ、この分野で絶えずモデル革新を続けてきた、数少ない企業だと言えます。

 最近の事例では、お客さまの3DCADデータを基に、部品の形状を認識して見積もりや発注をすることができる新サービス「meviy(メヴィー)」があります。機械部品のうち型番化、つまり標準化されているのは半数ぐらい。その他は、一個一個に図面を書いて発注する必要がある。しかし、こうした部品の発注に対しても「meviy」を利用すればお客さまは標準化されていない部品でも簡単に発注でき、非効率を解消できます。このように、私たちは新しいものづくりの潮流に対応できる、数少ない生産間接材のプレーヤーの1社です。ミスミにとって創業以来最大のチャンスが、いま訪れようとしていると言えます。

──いま、人材採用を強化しようとする背景もそこにありそうですね。

 ミスミの組織はかなりのスピードで大きくなってきましたが、さらに組織を拡充させて、成長への対応力を一気に高めなければなりません。グローバル事業の開発を担うような経営者人材だけでなく、工場での生産管理や新規立ち上げ、セールスマーケティング、システム開発、グローバル物流、さらには人事など専門性の高い人材が、あらゆるレイヤーで必要です。


連結社員数推移(単位:人)
2002年340人からグローバルで1万人規模へ
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ミスミに新卒入社。以来、創業社長の田口弘氏と、第2創業期ともいえるミスミの急成長を実現した前CEOの三枝匡氏の薫陶を受けてきた。

──人材に求めるマインドはどんなものですか。

 我々の強みは戦略性の高さ。加えて、最後は何が何でも納期を守るという根性。これはミスミ50年の歴史の中でDNAとして社員に埋め込まれています。その両方を持ち合わせることを「知的体育会系」と呼んでいます。また、企業家精神、言い換えれば当事者感覚を持ち、身銭を切る覚悟で仕事に取り組む、事業家としてのメンタリティを持ち合わせて欲しいと私は常々言い続けています。



■取材を終えて
 「言われたことだけをやるような、いわゆるサラリーマン病は全否定。自分で自分の仕事を見出し、自分で仕掛ける。仮にうまくいかなくても自分で責任を取るくらいの覚悟を持つ。決して人のせいにしない」求める人物像をそう熱く語る大野CEO。戦略性と熱き心を兼ね備えた人材の採用、積極活用がさらなる飛躍の鍵を握っている。