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BCP対策に強い佐賀県。カギは進出企業への支援とフォロー

BCPやリスク分散における佐賀県の強みは自然災害の少なさだけではない。それは企業のBCP策定支援にも及ぶ。「誘致だけで終わらない。進出してもらってからが、佐賀県の本領発揮です」。山口祥義佐賀県知事は明快に語る。

 九州の北西部に位置する佐賀県。逆三角形をした県土は、東を福岡県、西は長崎県と接し、両県の間の陸上移動は佐賀県を必ず通るという地勢を持つ。北の玄界灘にはアジアに開かれた伊万里港と唐津港、南の有明海側に九州佐賀国際空港。2016年に創業400年を迎えた有田焼や、幕末に日本初の反射炉を製造したモノづくりの伝統と共に、その進取の気性と探究心は、今日のICT教育先進県としての姿にも表れている。

 山口知事が挙げる、佐賀県への進出の利点は5つ。BCP(事業継続計画)、交通インフラ、人財、サポート体制、住環境である。とりわけBCPは「企業の安定的な事業継続が今ほど焦点になっている時代は、かつてないように思います」(山口知事)。地震と風雪水害を常に想定すべき日本で、佐賀県の自然災害リスクの低さは群を抜く。

自然災害に強いロケーション
企業のBCP対策を県と地域で支援

 佐賀県は南海トラフ地震における津波発生の想定ゼロ。台風の主要経路にも位置せず水害被害も少なく、九州地方ながら活火山が1つもない。活火山とは「おおむね過去1万年以内に噴火した火山および現在活発な噴気活動のある火山」を言う。歴史的にも佐賀県が自然災害の少ない土地であることが分かる。そのうえ、「自助、共助、公助の適切な連携による防災・減災体制」という知事の言葉のままに、佐賀県の行政は足腰が強い。災害応急対策では、輸送、医療、物資、通信、帰宅者支援などの分野で各種協定締結を推進。既に97※の機関や企業と調印を行い、広域防災に備えている。(※2016年3月25日時点)


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 東日本大震災から5年、全国的に企業からはBCP対策も単独では限界があるとの声が聞かれる。佐賀県は、県内事業者の「BCP策定支援に関する協定」を2016年2月に東京海上日動火災保険と、同8月には損害保険ジャパン日本興亜と県、商工3団体で締結した。「BCPの策定は企業の信用度にも関わります。地元行政として共に強化に取り組みたい」(知事)。

 本社機能の移転や第2本社設置の要訣は、地方と首都圏をうまく使い分けること。それには“頼りがい”のある場所を選ぶこと。佐賀県に進出したIT企業が東日本大震災の際、ダウンしかけた首都圏のサーバーを佐賀オフィスで緊急対応して危機を回避できた事例もあるという。

九州全域3時間圏内の交通網
ワークライフバランスの充実も

来賓室の入り口には「佐賀さいこう企業」表彰を受けた企業の素晴らしい製品を紹介するコーナーがある。ものづくりの高い技術力をアピールするのが狙い

 地勢と交通網も有利に働く。2016年4月、熊本地震発生直後に、いち早くオンデマンド方式で緊急支援を行った際、「九州佐賀国際空港はヘリコプターの支援拠点に、また、鳥栖が物流支援の拠点になりました。当然のようにそこにはモノが集積し、支援に向かう人の宿泊地になりました」。そう知事が語る鳥栖市は、九州を南北に貫く九州自動車道と東西に走る長崎・大分自動車道、さらには鉄道も交わる九州のクロスポイント。高速道路で福岡県、長崎県、熊本県は1時間圏内、九州全域と中国地方までは3時間圏内、鉄道は佐賀駅・博多駅間を特急が35分で走る。九州佐賀国際空港と福岡空港、長崎空港、2015年10月に神戸港との国際フィーダー航路が開設された伊万里港、3万トン級の貨物船も接岸可能な唐津港、全て佐賀市から車で90分圏内だ。

 なお鳥栖市は、日経ビジネス「活力ある都市ランキング」(2016年1月25日号)で首都圏に肩を並べ全国27位に入っている。そして暮らしの豊かさ・住みよさは、県全域に当てはまると知事は言う。

 「延長保育の実施率は全国1位。温泉、テニス、J1のサガン鳥栖、ゴルフ、ヨット、乗馬、アウトレット…。ないのは都市だけ」と知事は笑うが、発達した交通網で都市圏は近い。佐賀県の主役は街でなく人なのだという誇りに裏打ちされた言葉だ。

優遇策、「人財」確保、フォロー体制
どれもが全国トップクラス

佐賀県知事 山口祥義氏
やまぐち・よしのり 1989年、東京大学法学部卒業後、旧自治省(現総務省)に入省。危機管理、過疎問題などの職務に取り組む一方、多くの地方自治体でも経験を積む。官民交流でも活躍し、2015年1月より現職。

 足腰の強さに加え、もう1つ佐賀県のキーワードを挙げれば「手厚さ」だろう。本社機能移転に関わる優遇策の多くは限度額がないなど全国トップクラス。『葉隠』の系譜か、実直で勤勉な県民性は離職率も低く、進出企業からの評価も高いが、「今コールセンターの誘致は原則やめています」と知事。その理由は「既に多くの人材を採用していただいている。需要と供給のバランスが崩れ、人材の取り合いにならないよう配慮したい」。

 佐賀県独自の支援策「パーマネントスタッフ制度」は、進出時の経緯を知る職員が企業の指名を受け、異動しても永続的に窓口を務める。現在73社に配置され、相談は大学や研究機関との橋渡しや求人に関するアドバイス、時にはスポーツ大会や職場旅行といった福利厚生面にも及ぶ。

 「企業には将来にわたる事業継続への思いがあり、我々にも県を繁栄させていきたい思いがある。両者間にある境をなくしていくことがとても重要だと考えています。日本は行政が企業に入り込まないようにする文化がありますが、しっかり活動して内容を透明化すればできる、“人を大切に、佐賀県と共に発展する”というのが様々な施策の基盤です」。



県の潜在力を生かす「佐賀モデル」の立地戦略
学習院大学 国際社会科学部 教授/伊藤元重氏
 これからの立地に重要な視点が2つあります。1つは地域の総合力。企業に活躍してもらいたいという思いを持ち、実際に進出企業の経営がうまく回るような地域づくりを打ち出す視点です。
 もう1つは、日本の中でどう立地するかだけでなく、アジアの中でどう存在を高めていくかという視点です。これまで地方は東京とのグラビティー(引力)で図られ、東京対地方の図式がありました。今はアジアの引力を意識すべき時代です。
 その点、九州のロケーションはとても興味深く、中でも佐賀県にはアジアに開かれた重要港湾があり、飛行機も使いやすく、新幹線もある。オール九州の視点と佐賀県独自の視点、両者を併せ持つことができます。
 佐賀県は恵まれていると思いますよ。伝統、文化、歴史があり、地理条件が備わり、何より人がいる。佐賀県出身の知人を見ても、佐賀の人の地元への意識の強さを感じます。それは佐賀県の大きな財産であり、潜在力です。
 マーケティングの本当の意味は自分の物をどんどん売るための手練手管ではなく、その良さを自分でよく理解してお客様と共有することです。いいところを探し、それを束ねて持続性を保たせる力を行政が働かせ、地域の人々に波及させる。
 小さな成功例を積み重ねて、それを積極的に全国発信すれば、例えばパーマネントスタッフ制度も、「佐賀モデル」と呼ばれるようなものに育つと思います。(談)






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