そのやり方では、生産性向上は望めない!? デジタル時代の“働き方改革”に本当に必要な5つのポイント

Yahoo、Googleが“働き方改革”の方向性を転換した訳

様々な業界で「モバイルワーク」や「バーチャルワーク」の拡大に合わせた組織改革が進行している。“働き方改革”と言えば、当初は、より柔軟な働き方としてリモート勤務を従業員に許可したり、スペースや諸経費を節減する目的で「ホットデスキング(個々の従業員が特定の机を持たずに複数人で作業スペースを共有する働き方)」制度を導入するケースが多数を占めていたが、ここにきて、その様相は少し変わってきているようだ。

そんな流れを如実に表しているのが、Yahoo!やGoogleなど、名だたるIT企業の動向である。今から3年程前、Yahoo! CEOのマリッサ・メイヤー氏は、毎日出社した方が従業員間の連携が強化され、創造性が高まるとの理由から、IT企業で広く普及していた在宅勤務制を廃止すると宣言。当時、大きな論争を巻き起こしたこの考えには、Googleも同調している。

そして、現在、数多くの企業が職場環境の改善によって、従業員の意欲や士気を高め、結果として生産性を向上させようと努めるようになった。では、そのような目的を実現させる「デジタル時代にふさわしい職場環境」を構築するにあたって、企業はどのようなことを考慮するべきか?

その答えは次の5つのポイントに集約できる。
1.白紙状態から開始する
2.柔軟性を重視する
3.データマイニングを活用する
4.接続された状態を維持する
5.24時間365日の働き方の落とし穴を理解する

ここからは、それぞれについて、一つずつ解説していこう。

Point1

白紙状態から開始する

職場環境を再構築するにあたって、まず考えておきたいのが、「最新のテクノロジーを使用してゼロから再出発できるとしたら、どのような職場を実現したいか?」「どういった物理スペースが必要で、それはどのようなものか?」ということ。

その結果、職場環境の改善に向け、すぐに実行できることを見出せる可能性がある。例えば、「ほとんどの従業員は、必ずしも特定のデスクに一日中座っている必要がない」などということだ。

また、一般的なオフィスは、仕切りが少ないオープンプラン設計だが、このような環境では作業によっては集中できないことも——。このようなケースでは、空いている会議室を作業スペースにすることで課題解決ができる。

さらに、デスクを一直線に並べるのではなく島状に配置することによって、従業員同士のコラボレーションを促進することも可能である。

Point2

柔軟性を重視する

テクノロジーの進歩によって、「バーチャルワーク」が浸透した今日でも、人と人が直接顔を合わせることが、「コラボレーション」「イノベーション」「生産性向上」「意欲向上」などに直結することに変わりはない。

それ故、生産性を向上させる職場環境づくりには、オフィス空間の効率的な活用が必要不可欠だ。そして、従業員のニーズが、“物理(現実世界)”から“仮想”へとシフトしている今日、オフィス自体が、よりアジャイルになることが求められる。

Googleの取り組みが、その好例だ。一般的なオフィスには、「コラボレーション」「集中」「交流」などを図る汎用スペースが設けられているが、同社のロンドンの新オフィスに採用されているのは、その時々のニーズに合わせて部屋のサイズや外観を変更できる「Jack」と呼ばれるポッドスタイルの会議室。各ポッドにはビデオ会議システムが装備されており、同僚とのヴァーチャルなコミュニケーションを簡単に実現することが可能になっている。

Point3

データマイニングを活用する

オフィス環境が従業員の生産性に及ぼす影響を定量化することは、これまで難しかったが、最新のテクノロジーによって、それが可能になった。職場における人々の行動を捕捉し、動態を明らかにすることで、オフィス自体のパフォーマンスが測定できるのだ。

実際に、デスクや会議室のテーブルの使用状況を追跡し、他の目的に利用可能な空きスペースがあることを通知してくれるワイヤレスセンサー(Vega社のものが代表的)が販売されている。

また、ロンドンのSpace Syntax Laboratoryが「Depthmap」というアプリケーションを使用して作成しているオフィスヒートマップは、作業スペース設計のガイドラインになるデータ。各部門を相互の関連性に基づいて配置したり、従業員間の対話や交流が促進されるオフィスのレイアウトを考える際に役立つものだ。

Point4

接続された状態を維持する

ビデオ接続の利用頻度が低く、情報通信コストが高かった時代には、オフィス間の通信回線は、ミーティング中のみ接続することが理に適っていた。しかし、現在では、ビデオ通話の普及と通信費の低コスト化が進み、頻繁にビデオ回線を開くことができるようになった。

ここでは、ビデオ通話の導入による“働き方改革”の具体例として、靴の小売を行うDr. Martens社のケースを紹介しよう。

同社は、昨年、ビデオ会議/通話システム「StarLeaf」を全社規模で導入し、役員室から小売店に至るまで、コミュニケーションの合理化を実現した。このシステムを活用して、英国内の21店舗すべての店長が参加するチームミーティングを実施。各店長がマーケットに関する最新情報をいち早く入手することで、新しいトレンドに対する迅速な対応が可能になったという。

また、Hewlett Packard Enterpriseがサポートを行うガン患者向けホスピスでは、患者および介護者がスタッフとバーチャルに対話することを可能にする、遠隔医療ツールの評価試験が進行している。この試みが成功すれば、病棟のスペースを大幅に削減できるだけでなく、ホスピスに出向かずに治療が受けられるようになるため、患者の負担を軽減できると期待されている。

先頃発表された「Facebook Workplace」や「Microsoft Teams (Skypeを統合)」 に代表されるような最新のコラボレーションツールの中には、ビデオ会議機能が組み込まれているものがある。これからは、このようなツールを活用して、従業員は常にデスクトップ上のビデオ回線をつないでおくようにしたい。同僚とのビデオによる会話は、従業員間の一体感を高め、「リモートワーカー」との連携を維持する上で効果的だからである。

Point5

24時間365日の働き方の落とし穴を理解する

時間や場所を問わない働き方の実現には、メリットだけでなく、デメリットがあることを、企業は理解しておくべきだ。

従業員の健康への悪影響という、常時仕事をすることが可能になったことの弊害に対し、米国保険大手のAetna社は、従業員の睡眠に対価を支払う試みを行っている。同社の従業員は「Fitbit(睡眠記録などが取れる活動量計)」を装着し、20日以上連続して1晩7時間の睡眠をとったことが証明できれば、1晩あたり25ドルの報酬を受け取れるのだという。

仏国ではこのほど「つながらない権利」を守る法律が施行され、注目を集めている。この法律により、雇用者はデジタルツールの使用を規制することにより、従業員の休暇期間とプライベートな時間を保護することが求められる。なお、このような規制は、法律に先行して仏国の複数の業界——とりわけIT業界中心に実施されてきたものだという。

デジタルワークプレイスを推進するリーダーへ

以上の「デジタル時代にふさわしい職場環境」を構築するにあたって考慮すべきポイントをまとめると、「バーチャルワークは既に普及しており、全体的な職場環境を設計する上で欠かせない要素となっている。それを理解した上で、物理的および仮想的な職場環境を適切にカスタマイズすることで、『モビリティ』『柔軟性』および『コラボレーション』を促進することができる。さらには、従業員の福祉を守るために、企業は常時稼働の文化を規制することが求められている」ということだ。

企業や経営者、ビジネスリーダーには、是非これを実践していただき、生産性の向上に寄与する職場環境を構築してもらいたい。

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