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日経ビジネスONLINE Special 週刊日経ビジネスオンライン SPECIAL日経ビジネスオンライン

仕事が変わる、未来が変わる VOL.3

現在の警備システムが抱える課題は、「多くの人手が必要なこと」にある。これを解決すべく、センシング技術やAI、ドローンなどを活用した新しい警備システムの開発が進んでいる。実用化されれば、必要な人手は減り、コストを大幅に削減できるようになる。この結果、警備システムの適用できる場面が大きく広がりそうだ。

 データで見れば、日本での犯罪は減っている。だが、不安は増しているようだ。日工組社会安全研究財団が2015年に発表した「犯罪に対する不安感等に関する調査研究」によると、「日本は1年前と比べて治安が良くなったと思いますか、悪くなったと思いますか」という質問に対して52%が「悪くなった」と回答したという。「良くなった」と答えた人は1%だった。半数以上が「最近なにやら物騒になってきた」と感じているということだ。「安心安全」に関する意識が高まっているということが根底にあるのだろう。

 こうした感情を裏付けるかたちで、警備やセキュリティーのサービスに対する需要は急増している。経済産業省がまとめた第3次産業活動指数を見ると、警備業の数値は2010年以降ずっと第3次産業全体を上回る水準で推移している。

 しかし、多くの人が抱く「安心、安全を」の願いは、必ずしも叶えられているとはいえない。最大の理由は警備などに「人手がかかり過ぎる」ことだ。このため、「気軽に利用できるサービス」とは程遠いものになっている。もちろん、監視カメラの導入などで省力化は進められてきた。けれども、「需要の増加に全く追いつけていない」(コニカミノルタ)。

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 警備の現状はこうだ。野球やサッカーの試合、ロックコンサートなどの大型イベントでは、現場に多くのスタッフを配置して監視する。遊園地などの恒久的施設ではカメラを併用する場合が多く、これで監視員の人数は減らせる。しかし、カメラの台数が増えれば映像を監視するスタッフの必要数は増える。そのスタッフが映像で不審人物を見つければ、その場に警備員が駆け付ける。だが、ほとんどの場合は無駄足だ。不審人物か否かの判断を人間の経験や勘に頼っているからだ。ただ、無駄足かどうかは行ってみなければ分からないので、多くの警備員を待機させておく必要がある。このためコストがかさみ、厳重な警備サービスを利用できるのは大型イベントなどだけ、というのが現状なのである。

 こうした問題が近い将来、一気に解決されるかもしれない。カギを握るのは、センシング技術と人工知能(AI)だ。カメラだけでなく、レーダーなど各種センサーを重層的に張り巡らせて詳細なデータを取得、それをAIで解析することで、不審人物か否かの判断の確実性を高める。ドローンや警備ロボットをそこに加えれば、さらに迅速な対応と無駄な駆け付けの大幅削減を同時に実現できる。

 こうした先端技術を導入することで、人手はぐっと減り、コストは大幅に削減できる。この結果、様々な場所や場面で最新の警備システムを導入できるようになる。ビルや商店街、マンションはもちろん、サービス料金が大きく低下することで、個人住宅でも気軽に利用できるようになるはずだ。近い将来、泥棒、ストーカーなどの不審人物は、街から一掃されることになるかもしれない。

先行する3Dレーザーレーダー技術

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 こうした新しい警備システムの実用化を目指して開発を進めているのがコニカミノルタである。同社独自の技術を2つ適用することで実用化を目指す[図]

 1つは、3Dレーザーレーダーだ。赤外線レーザーから出力された光を上下左右に振りながら空間を帯状にスキャンし、人や物体の有無を把握する。検知可能な範囲は視野角が最大120度、上下方向は24ライン、検知距離は、実力値で200mに及ぶため、1台で、広い範囲を監視できる。

 リアルタイムでスキャンできるので、人や物体の動きも把握可能だ。近赤外線を使うので、夜間でも、西日や逆光でも人や物体の動きを検知できる。屋外でも日照や気候、気温の影響を受けない。「当社の3Dレーザーレーダーは、同じ分野の関係者から、世界でダントツの技術レベルにあると評価されている」(同社)。開発できた背景には、カメラや複写機の開発で培った光学技術がある。これを有効活用することで、競合他社を寄せ付けない性能を達成した。

 もう1つは、カメラをインテリジェント化する「VMS(ビデオ・マネジメント・ソフトウエア)」技術を採用したことだ。この技術は独MOBOTIX社が開発したもので、コニカミノルタが2016年5月に同社を傘下に収め、導入した。VMS技術を使えば、端末側で多くのデータ処理を実行する「エッジ・コンピューティング」を実現できる。必要最小限のデータだけをクラウド・サーバーに送るため、通信遅延が発生しにくくなり、サーバーの負荷もぐっと減らせる。クラウド・サーバーにインストールしたAIにデータを学習させることで、警備対応の必要性や最適な対処指示の精度を高めることが可能になる。これにより警備対応の効率化、警備の質やサービス・レベルの向上を実現できる。

自動運転や行動解析にも使える

 こうした技術を導入することで、警備だけでなく、幅広い分野で応用できる使えるシステムを構築できるようになる。

 例えば、自動運転だ。一般的なカメラでは西日やヘッドライトなどの逆光により対向車や歩行者、障害物などの捕捉ができなくなる。3Dレーザーレーダーは徹底した外乱光対策と隙間のない距離計測により遠方の物体の形状や動きを正確に把握することができる。これにより自動運転の安全性をさらに高められる。

 3Dレーザーレーダー技術は、人間の行動解析にも適用できる。例えば、ショッピング・センターなどに、3Dレーザーレーダーやカメラ、各種センサーを設置する。検出したデータをコンピューターに入力し、AI技術でユーザーの移動の様子や店舗での滞在時間などを解析し、マーケティング活動に利用する。

【図】コニカミノルタが実現する、デジタル警備システムのワークフロー
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複写機のポリゴン・ミラーから生まれた3Dレーザーレーダー

 3Dレーザーレーダーには、コニカミノルタが長い年月をかけて培ってきた技術が生かされている。それは、複写機に必要不可欠な「ポリゴン・ミラー」だ。複数のミラーを多角形状に組み合わせた小型の光学部品であり、レーザー光を走査して感光体ドラムの正確な位置に照射する役割を果たす。

 一般的なポリゴン・ミラーでは、レーザー光を物体に正確に照射できず、検知すべき物体を見逃す危険性があった。この課題を解決するため、複写機の開発で培った、高精度な光学技術と精密なスキャン技術からなるポリゴン・ミラーを採用した。この結果、競合他社を上回る性能を持つ3Dレーザーレーダーの開発に成功した。

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