DIGITAL INNOVATORS

■ 完全無料の電子カルテの提供で目指すのは医療分野のプラットフォーマー

―完全無料の電子カルテ「カルテZERO」がターゲットとする市場は?
山口国内には、無床のクリニックが9万件以上あり、ほとんどが電子カルテを導入していないのが現状です。導入を阻む大きな要因の1つがコストです。一般的に大手電子カルテメーカーがオンプレミスで提供する電子カルテシステムは初期費用が300万円~500万円、年間保守料も60万円程かかります。低価格のクラウド型電子カルテシステムも登場していますが、「カルテZERO」はレセプト(診療明細書)を作成するレセコン一体型で初期費用、月額利用料、保守費用がすべて無料です。またクラウド型のためPCとインターネット環境があればすぐに利用できます。
しかし、今まで紙のカルテで診療できていたクリニックが、無料だからといって電子カルテを導入するかというと、そんなに簡単な話ではありません。電子カルテと一緒に提供する付加価値として、予約受付機能はもとより患者さん向けに待ち時間がリアルタイムでわかる予約アプリの無料提供や、診療報酬の当月受取りを可能とし、レセプトチェックソフトや光回線も無料付帯する経営支援サービス「カルテFRM」など、患者満足度向上や経営基盤強化のためのインセンティブづくりにも力を注いでいます。
2016年12月にサービスを開始し2017年10月時点で導入検討中のクリニックも含めると500件以上のクリニックにご利用いただきました。これから本格的なプロモーションを実施し、2020年までに6,000件の導入を目指しています。

きりんカルテシステム株式会社
代表取締役社長山口 太一 氏

「カルテZERO」の画面例。クラウド上のカルテに診療情報を蓄積できる。インターフェースもシンプルでわかりやすい。

電子カルテに加え、診療予約や会計の機能もワンパッケージになっており、診療所・クリニックの経営を大きく効率化。

―異業種参入の理由と、無料で提供しながら収益を上げていくビジネスモデルとは?
永用誰もが経験があると思うのですが、違う病院で治療を受けるたびに、同じ検査をすることにずっと疑問を抱いていました。“カルテを患者のものにしたい”という想いが起業の根っこにありました。電子カルテ市場の参入では最後発組であり、私自身が写真プリント業界という全くの異業種からの参入ということもあって、市場へのインパクトやこれまでにない価値の提供として「完全無料」を掲げました。
以前、しまうまプリントシステム株式会社というネットプリント会社を立ち上げた際、価格破壊によりわずか数年でトップシェアを獲得できた成功モデルを、今回のきりんカルテシステムの起業でも活かしたのです。医療業界をよく知らない“よそ者”だから、ここまで革新的なアプローチができたのでしょう。
電子カルテや患者向けアプリを無料で提供し、プラットフォーム化してビジネスを展開していく。現在検討を進めている「カルテMR」は電子カルテから新薬やジェネリック医薬品などの情報にアクセスできるようにします。電子カルテがある種の広告媒体的価値をもつビジネスモデルは製薬会社のビジネス支援とともに忙しいクリニックの医師に対して最新情報の効率的な入手を可能にします。
様々なサービスがプラットフォーム上で展開できますが、成長戦略で最も重要なのが医療ビッグデータの活用です。医療分野のプラットフォーマーを目指す上でクラウドと AI は必須のキーテクノロジーとなります。

データ・リファイナリー株式会社
代表取締役社長永用 万人 氏
(きりんカルテシステム創業者)

■ 「3省4ガイドライン」の遵守、安定性・信頼性に加え技術力を高く評価

―医療のプラットフォームを支えるクラウドとして Microsoft Azure を選択した理由は?
永用医療機関が電子カルテなどの診療データをパブリッククラウドなどに保存する際には、厚生労働省、経済産業省、総務省が出している「3省4ガイドライン」を遵守することが求められます。例えば、電子カルテのサーバーは国内にあること、電子カルテのデータを外部委託業者以外に外に持ち出してはいけないなどの要求事項があります。Microsoft Azure がガイドライン対応によるセキュリティリファレンスを公開し対応状況を明文化していることは重要なポイントとなりました。また AI を利用するためにさらに別のベンダーに電子カルテのデータを渡すことはできませんが、Microsoft Azure は当社のクラウドの中に AI のエンジンをのせて利用できるため問題が生じない点も採用を後押ししました。
山口ガイドライン遵守に加え、当社が高く評価したのがマイクロソフトさんの技術力です。安定性や信頼性を支える技術に加え、クラウドで提供する AI などの最新技術も魅力です。
開発のスピードにつながるツールや計算リソースの効率的な利用にも期待しています。また必要な分だけ瞬時に追加できるスケーラビリティやデータベースの無停止での増強など、「カルテZERO」の急成長に対し信頼性を担保しながらスピーディに対応できることも大きなメリットです。
Microsoft Azure の良さを最大限に引き出すために、マイクロソフトさんのエンジニアの全面協力のもとPoC(概念実証)を進めています。当社のエンジニアの間でもマイクロソフトさんの技術力と手厚いサポートを評価する声が上がっています。

■ AIを活用し医療ビッグデータを価値あるものに変えていく

―プラットフォームに蓄積された医療ビッグデータをどのように活用していきますか?
山口医療ビッグデータの活用では2つのアプローチを考えています。1つは、2018年に施行が予定される次世代医療基盤法のもと認定匿名加工情報作成事業者に対し、「カルテZERO」を通じて体系的に収集したクリニックのデータを提供できないかということです。こちらは法案や省令の詳細が見えてきたところで改めて当社としての対応を整理したいと考えています。もう1つは、患者さんが患者向けアプリをご利用いただく際に個人情報の提供にご同意いただくことで、当社自身がデータを活用できるようにすることです。例えば「カルテZERO」の機能として AI を活用し診断補助や希少疾患の可能性検討の支援を行い、診断精度の向上や専門医不足の解消など医療分野の課題解決に貢献していきます。
永用医療ビッグデータと AI といった次なる事業成長を見越して、きりんカルテシステムと、医療分野に特化した人材アウトソーシング事業を展開するルフト・メディカルケアを経営統合し、共同持株会社としてデータ・リファイナリーを設立しました。今後、クリニックだけでなく病院向けにも「カルテZERO」を提供し、膨大な医療データを価値あるものに変えていくビジネスを加速させていきます。また電子カルテが病院からクリニックまでシームレスにつながることで地域医療連携もスムーズとなり、治療の質と効率の向上に貢献します。
Microsoft Azure の AI には医療分野のビッグデータ分析の先頭を走っていただきたい。私たちは「カルテZERO」の国内No.1シェアを目指すとともに、医療分野のプラットフォーマーとして確固たるポジションの確立を目指します。
―起業や新規事業の開拓を考えている読者にメッセージをお願いします。
永用「あったらいいな」、「不便だな」と思うことを解決するとイノベーションが起きる。また他人の評価は気にしない。この2点は重要だと思います。最新のITを武器に、既存市場や既成概念、過去の慣習を変えていくことにチャレンジしていただきたいと思います。
山口付け加えるなら“やりきること”が大切だと考えています。既成概念を打ち破るビジネスの構想を自ら実行に移し、何があっても最後まであきらめず、やりきった人だけが、新たな道を拓くのだと思います。

きりんカルテシステム株式会社「カルテZERO」ウェブサイトhttps://xirapha.jp/

きりんカルテシステムへのお問い合わせ092-409-1033(月~金 8:00-19:00 / 土 8:00-16:00)

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日本マイクロソフト株式会社
コーポレート営業統括本部
クラウド事業開発室
ビジネスデベロップメントマネージャー

原 浩二 氏

日本マイクロソフト 担当営業から

「濃いハッカソンは、当社にとっても様々な発見があった」

きりんカルテシステムさんが「プラットフォーマーを目指す」というモチベーションを会社として持っていらっしゃること、そしてその実現のために「完全無料」の電子カルテを提供するといった革新的なビジネスモデルで新しい市場の創造に取り組まれていることに大きなポテンシャルを感じました。医療業界に限らず、大きな展望を描き、大胆な戦略を立て実践していく会社はなかなかありません。
PoC を通じて同社のエンジニアの方に何度もお会いしましたが、技術の高さや仕事への情熱に深く感動しました。風通しが良くて活発に議論するチームも素晴らしく、PoC はまるで部活の合宿のようでした。濃いハッカソンができたことは当社にとっても様々な発見がありました。今後、AI のハッカソンの回数を増やしていきたいと思っています。また様々なマーケティング支援策も一緒に進めるべく協議中です。きりんカルテシステムさんがクラウド型電子カルテ業界のNo.1となり、医療プラットフォーマーとして大きく成長していくことが Microsoft Azure の発展にもつながります。そのために我々も各方面からご支援していきたいと考えております。
マイクロソフトは、きりんカルテシステムさんの事業を IT で支援することにより日本の医療の質と効率の向上に貢献していきます。