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ウエアラブル機器事業の新戦略とは?

連載企画 : 第3回 ウエアラブルイノベーション

 セイコーエプソン(以下、エプソン)は2025年に向けた長期ビジョン「Epson 25」において、4つの領域でのイノベーションを推進力に成長を加速させようとしている。その1つであるウエアラブルイノベーションを具現化するものとして、同社は7月19日、独自ブランドのアナログ腕時計「TRUME(トゥルーム)」を発表。「TRUME」に象徴される新たな価値提供により、ウエアラブル機器事業の売上収益倍増を目指す。ウエアラブルイノベーションへの挑戦の背景には、エプソンならではの狙いと勝算がある。

(図1)新たな価値提供によりウエアラブル機器事業の売上収益倍増を目指す

ウエアラブルイノベーションを⽀える3つの強み

(写真)「TRUME(トゥルーム)」

 エプソンは長期ビジョン「Epson 25」において、4つの領域でイノベーションを起こし、新たな価値を生み出すとしている。「インクジェット」「ビジュアル」「ウエアラブル」「ロボティクス」イノベーションだ。今回はその中の「ウエアラブル」イノベーションについて解説する。

 1942年の創業以来、エプソンは70年以上にわたってウオッチの開発・製造を続けてきた。1969年にはクオーツウオッチを開発。世界に先駆けてGPS機能付きソーラー発電ウオッチを開発したのもエプソンである。そのエプソンが、ウオッチ事業から発展したウエアラブル機器事業で、新たな取り組みをしている。その第1弾が、7月19日に発表したアナログウオッチの新ブランド「TRUME(トゥルーム)」である。

 同社のものづくりの基盤である、エネルギーを省く、ものを小さく、精度を追求するという「省・小・精の技術」は、ウオッチ分野で育まれ、やがては他の製品分野にも適用されて同社の成長を支えた。そして他分野での経験は、「TRUME」を含めたウエアラブル機器事業にフィードバックされている。

 長年にわたって蓄積された「技術」、技術を生み出す「人」、そして「ビジネスモデル」。これら3つの強みを生かして、エプソンはウエアラブルイノベーションに向けたアクセルを踏み込む。そして、2025年にウエアラブル機器事業の売上収益倍増を目指す。技術と人、ビジネスモデルにおける揺るぎない自信は、エプソンが目標達成を確信する理由でもある。

(図2)エプソンのウエアラブルイノベーション
[画像のクリックで拡大表示]

セイコービジネス、ムーブメントビジネスの成長を図りながら
自社ブランドビジネスを本格展開

 世界のウオッチ市場は着実に成長を続けている。この市場の面白いところは、百花繚乱ともいうべき多様性にある。ウオッチ市場のうち、150~1000ドルの価格帯を例にとると、マーケットの約半分を100余りのブランドが占め、残り半分には数え切れないほどのブランドがひしめいている。

(図3)着実に成長を続けるウオッチ市場
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 ウオッチ市場が堅調に推移する一方、隣接するウエアラブル市場も拡大している。健康サポートなどの用途で、センシング技術を活用したウエアラブル機器が次々に生まれている。ウオッチ市場との境界は曖昧になりつつあり、両方の要素を兼ね備えた商品も増えている。そのような市場環境の中で、ウオッチメーカーは自らの強みやスタンスを明確にし、新たな提案をしていく必要がある。

 先にエプソンの3つの強みに触れたが、以下ではそれぞれについて詳しく説明しよう。まずは、技術、エプソンの誇る「省・小・精の技術」である。

 「TRUME」の場合、そのムーブメントは300を超える部品で構成される。直径0.5ミリの歯車が動いているムーブメントもある。このような高い加工精度が求められる部品製造も、これら部品をムーブメントとして組み立てる工程もエプソンは保有している。また、ムーブメントだけではなく、美しさや繊細さといった質感を伝える外装加工の工程も保有し、精密で美しいウオッチづくりを支える技術力は、今も進化し続けている。

 また、先進機能を実現するためには、多くのマイクロデバイスが必要だ。高度な技術が求められる水晶振動子や半導体、センシングデバイス、高精細ディスプレイを自社で開発・製造している。

 こうした技術をベースに、従来エプソンはウオッチ分野でセイコービジネス、ムーブメントビジネスを主軸に成長してきた。この分野を、より注力することはもちろんであるが、さらに今後は自社ブランドビジネスにも注力する。今回発表された「TRUME」には、エプソンのそのような決意が込められている。

 もちろん、「ORIENT STAR」「WristableGPS」「Smart Canvas」など、「TRUME」以外のウエアラブル機器でも自社ブランドビジネスの強化施策に取り組む。多彩なウエアラブル市場での成長を見据えた戦略が、「TRUME」の登場を機に本格的に動き始めた。