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市場をリードするプロジェクターの新戦略

連載企画 : 第4回 ビジュアルイノベーション

 9月26日、セイコーエプソン(以下、エプソン)が新しいプロジェクター製品群を発表した。22年連続で国内市場トップシェア※1、16年連続世界市場トップシェア※2を誇る同社は、既存市場に対してどのような価値を提供し、どのようにして新しい市場を開拓するのか。エプソンの新技術・新製品から、長期ビジョン「Epson 25」で掲げられた4つのイノベーションの1つであるビジュアルイノベーションにおける同社の事業戦略を読み解く。

※1 プロジェクター国内販売台数において('95~’16年実績 富士キメラ総研調べ)
※2 500lm以上のプロジェクター販売台数において(’01~’16年実績 Futuresource Consulting Ltd. 調べ)

プロジェクター市場をリードしてきたエプソン

 プロジェクター市場におけるエプソンの存在感は大きい。企業の会議室に設置されているプロジェクターでは「EPSON」のロゴを見ることが多い。それもそのはず。同社はこの市場の草創期からのパイオニアであり、今もリーダーであり続けている。

 同社のプロジェクター事業は、1989年、世界に先駆けて開発された小型フルカラー液晶ビデオプロジェクター「VPJ-700」から始まった。しかし、当時AV機器としての用途提案では、市場に普及するまでには至らなかった。以降、厳しい事業展開が続く中、プロジェクター事業成長のきっかけとなったのは、1994年に発売された、小型、軽量で持ち運び可能でありながら明るい、データプロジェクター「ELP-3000」だった。それ以降、市場の拡大に合わせて商品ラインアップを充実させ、毎年販売台数を伸ばし、2016年8月には3LCDプロジェクターの世界累積販売台数2000万台を突破している。

(図1)エプソン プロジェクターの販売台数・シェア
[画像のクリックで拡大表示]

 このようにして着実に実績を伸ばしてきた結果、それまでは慣習のなかった大画面によるプレゼンテーション文化に大きな変化をもたらした。企業や学校ではプロジェクターを使ったプレゼンテーションが当たり前になり、その利用シーンは店舗やイベント会場にも広がった。

 同社の製品も進化し続けてきた。90年代前半、解像度は640×480ドットのVGAで300lm(ルーメン)という明るさだったが、現在では、最廉価モデルであっても、800×600ドットのSVGAで3000lmを超えるようになり、さらに4K相当の高画質に対応した2万5000lmの製品まで登場している。

 その製品の進化とともに、プロジェクターの利用シーンはさらに広がりつつある。明るい大画面を投写できる高光束プロジェクターによるデジタルサイネージやプロジェクションマッピングのような空間演出など、これまでのプロジェクターの概念を超えた利用シーンが広がっている。

 それが「Epson 25」で掲げたビジュアルイノベーションの世界であり、それを支えるコア技術がマイクロディスプレイ技術である。そしてその技術を活用したのが、明るく自然で高画質な映像を生み出すことができる同社独自の「3LCD方式」だ。

(図2)エプソン製品 ラインアップカバー領域
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コアデバイスに注力して市場競争力を強化

セイコーエプソン株式会社
執行役員
ビジュアルプロダクツ事業部長
小川 恭範氏

 エプソンの強みは企画、設計、製造、販売までを一貫して行うエプソン流の“垂直統合型ビジネスモデル”にある。プロジェクターも同様、コア技術であるマイクロディスプレイ技術に注力しながら、液晶パネルからプロジェクター本体までのプロセスを一貫体制で行うことにより、ユーザーのニーズを迅速に開発・設計に生かし、独創的な製品を提供できる。

 その中心となるのが、3LCD方式である。光源から発せられる白色光を、赤・緑・青の光の三原色に分解。さらにこの光を、各色専用の計3枚の液晶パネル(LCD)に透過させて無駄なく再合成することにより、明るくかつ、自然色に近く目に優しい映像を生成し、高速動画も滑らかに再生する。同社はこうしたコアデバイスを自社で開発することにこだわってきた。そこに競争優位の源泉があるからだ。

 そのエプソンが今、具体的に強化しようとしているエリアはどこなのか。9月26日に発表した国内向けプロジェクターの新製品から、その戦略を垣間見ることができる。これまでのラインアップをさらに拡充するために発表されたのは、レーザー光源を搭載した「明るい常設モデル」5機種と「超短焦点壁掛け対応モデル」3機種の計8機種だ。

 新製品すべてにレーザー光源が搭載されたエプソンのプロジェクターは、明るいだけでなく、高コントラストの映像を投写でき、さらに無機の素材でできた蛍光体とLCDパネルを組み合わせることで2万時間メンテナンスフリー※3を実現している。レーザー光源なのでランプ切れの心配もない。

 常設モデルで1万5000lmの2機種は、従来のランプ光源機種(EB-Z10005U/EB-Z10000U)と比べて明るさを約50%向上させ、体積を約30%小さくした。高光束モデルでありながら、小型化と高効率化が図られている。また、100ボルト電源での駆動が可能で設置場所などの自由度も広がった。

 超短焦点モデルの特長は4000lmと明るく、41cmの投写距離から70インチの画面を映すことができる。つまり、映したい場所のほぼ真上から投写できるため、投写画面の近くに人が入っても影ができにくく、眩しく感じることもない。

 エプソンの執行役員ビジュアルプロダクツ事業部長の小川恭範氏は「独自開発のLCDパネルは、プロジェクターの性能を左右する最も重要なコアデバイスです。今後もLCDパネルとレーザー技術にリソースを集中投下して、ビジュアルイノベーションを実現していきたい。」と抱負を語る。

※3 製品の使用開始時と比較して明るさが50%低減するまでのおおよその時間。大気中に含まれる粒子状物質が0.04 〜0.20mg/m³の環境下での使用を想定。使用条件や環境によって時間は変動します。

(図3)新超短焦点壁掛けモデル/明るい常設モデル一覧
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「明るい常設モデル(高光束)」と「超短焦点」に集中的に商品を投入(上図は日本市場向けモデル。赤字が新製品のシリーズ)