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小型精密ロボットで攻める。その戦略とは。

連載企画 : 第5回 ロボティクスイノベーション

 小型精密ロボット市場は年率8%というペースで成長が見込まれる有望市場だ。セイコーエプソン(以下、エプソン)では、これまで培ってきた「省・小・精の技術」にセンシング技術を融合したロボティクス技術、ライン構築ノウハウなどを生かしたものづくりの高度化支援、ワールドワイドの製販ネットワークを武器にこの市場での売り上げを拡大し、2025年度に2017年度予想比の4.5倍となる売上収益1000億円を目指すという。小型精密ロボットの市場動向と同社の強みを探った。

急成長する小型精密ロボット市場におけるエプソンのアドバンテージ

 製造業向け組立・搬送系ロボットの市場が急速に拡大している。その中でエプソンがターゲットとしている小型精密ロボットといわれる市場は、2016年の組立・搬送系ロボット市場全体の3分の1にあたる約1400億円の規模になった。今後も売り上げ増加が見込まれる成長市場で、エプソンは存在感を高めつつある。

(図1)エプソンが展開するロボットの市場規模
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セイコーエプソン株式会社
代表取締役社長
碓井 稔氏

 市場が成長してきた背景にあるのは、新興国の所得水準の上昇や、先進国の少子高齢化だ。代表取締役社長の碓井稔氏は「製造現場では作業者やエンジニアの人材が不足しています。加えて人の手では実現できない精度の高いものづくりが求められるケースが増え、それが小型精密ロボットのニーズに結び付いています」と分析する。

 しかし、実際にはロボット導入のためのハードルは高い。活用するための特別なノウハウも必要であり、誰でも、どのような工程においても、簡単に自動化が可能となるようなロボットのスマート化が求められている。そこに、エプソンが強みを発揮できる余地がある。碓井社長は「当社自身がロボットを使って知見を積み重ねてきました。腕時計の組み立てにロボットを導入し、1983年から外販を開始して用途を拡大してきました」と小型精密ロボットにおける同社の取り組みを説明する。

 30年以上にわたるロボットビジネスを通して、エプソンは3つの強みを高めてきた。同社の長期ビジョンである「Epson 25」にも掲げている❶「省・小・精の技術」にセンシング技術を融合したロボティクス技術、❷ライン構築ノウハウや生産技術力を生かしたものづくりの高度化支援、そして❸ワールドワイドに展開する製販ネットワークだ。

(図2)エプソンが培ってきたロボティクスソリューションズの強み
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 技術面でベースとなっているのは、“エネルギーを省く”、“モノを小さくする”、“精度を追求する”という「省・小・精の技術」により、小型・軽量でスリムな独自構造ロボットを実現している。加えて独自のセンシング技術や画像処理技術などを融合し、統合的に制御することで、高速・高精度、低残留振動を可能にしていることだ。水晶や半導体技術などに基づく力覚センサーなどの高度センシング技術を活用することで、指定した軌道を、速く精確に動き、目的の地点でピタッと止まる。

 さらにロボットの機能を強化するさまざまな技術にも強みを持つ。ロボット自身が力を自在に加減し、探ったり、押し付けたりする「力覚センサー」や、製造ラインの生産技術力を高めるなかで培われた画像処理技術により、ロボットに部品の向きや形を正確に認識させることができる「ビジョンシステム」などはその代表例だ。こうした独自のセンシング技術や得意とする画像処理技術などを融合し、さらにロボット全体を制御することができるソフトウェア技術によるスマートさを武器にして小型精密ロボット市場でのシェアを広げてきた。

(図3)エプソンロボットのベース技術
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