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Vol.2 働き方改革と多様化する就業環境のあり方

「働き方改革」だけでなく、「働きがい」のある空間や人間関係づくりを

就業時間の短縮や在宅勤務の推進といった「働き方改革」だけでは、社員のやる気を引き出すには不十分だといわれる。フォーラムの第1部には、「働きがいのある会社」づくりを支援するGreat Place to Work® Institute Japan(以下、GPTW)代表の岡元利奈子氏と、日経BPビジョナリー研究所長の徳永太郎が登壇。“働き方改革”と“働きがい”の関係性や、働きがいをもたらすワークプレイスのあり方などについて語った。

“働き方改革”だけでは社員のモチベーションは高まらない

岡元氏

Great Place to Work® Institute Japan
代表
岡元利奈子

大学卒業後、人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。人事コンサルタントとして、人事制度設計・多面評価制度・採用選考設計・従業員意識調査等を行う。その後、海外現地法人のコンサルティングビジネスの立ち上げ支援、新サーベイ開発のプロジェクトリーダー等を経験し、2014年より現職。

 岡元氏が日本代表を務めるGPTWは、1991年に米国で設立された民間団体。「数多くの会社に対するインタビューを通じて、『働きがいのある会社』に共通する項目を抽出。それを評価基準として、1998年から米国で『働きがいのある会社』ランキングを発表してきた。日本でも2007年から『日経ビジネス』に毎年1回ランキングを発表している」(岡元氏)

 現在、GPTWの調査に参加する企業は世界で7,000社以上、調査実施国は約50カ国に上るという。日本の参加社数も2007年の62社から2017年には379社と急増し、「業種や事業規模も様々。日本においても社員の“働きがい”を重視する考え方が着実に広がっていることを実感する」と岡元氏は語る。

 その背景にあるのは、生産年齢人口の減少や生産性の低さといった日本企業ならではの課題である。「優秀な人材を1人でも多く確保し、その『やる気』を引き出すことでこれらの課題を解決したい。そのためには“働きがい”を高めることが不可欠だというのが、ランキング上位のベストカンパニーに共通する認識」だと岡元氏は指摘する。

 だが、「今日本の多くの企業が進めている“働き方改革”は、必ずしも社員の“働きがい”を促すとは限らない」と岡元氏は警鐘を鳴らす。なぜなら、政府主導で繰り広げられている現在の“働き方改革”は、就業時間の短縮、働ける場所の多様化、生産性向上などを主要テーマとしているが、「それらの取り組みが、社員のやる気やモチベーションの向上に直接的につながるとは言い切れない」(岡元氏)からだ。

 何をすれば社員の“働きがい”が高まるかは、その会社の業態や文化、人員構成などによって大きく異なる。そのことを考慮せず、“働き方改革”をいくら推進しても、社員の“働きがい”は変わらない、あるいは低下してしまったのでは意味がない。

 「“働き方改革”は、あくまでも社員の“働きがい”を引き出す要素の1つにすぎない。働きやすい環境を整えるだけでなく、やる気やモチベーションを高めるための仕掛けが必要だ」と岡元氏は指摘する。

フォーラムの様子

従業員とマネジメントの相互信頼こそが“働きがい”の土台

岡元氏

 では、社員の“働きがい”はどうやって引き出せばよいのか? それを考えるには、まず「働きがいのある会社」とはどのような会社なのかを明確にイメージする必要がある。

 岡元氏は「働きがいのある会社」という捉え方には、従業員から見た場合と、マネジメントから見た場合の2つの側面があると話す。前者は「従業員が会社や経営者、管理者を信頼し、自分の仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感を持てる会社」、後者については「『信頼』に満ちた環境で、ひとつのチームや家族のように働きながら、個人の能力を最大に発揮して、組織目標を達成できる職場」とするGPTWの考えを示した。

 どちらから見た場合も、共通するのは「信頼」というキーワードである。岡元氏は「従業員がどれだけマネジメントを信頼しているのか、またマネジメントが従業員たちを個々人レベルでどれだけ大切に考えているのかということが、“働きがい”の土台となる」と語り、働きやすい制度を整えるにしても「その制度が社員に対する信頼や尊敬に裏打ちされた公正なものであるかどうかを十分検証してから実行するのが望ましい」とアドバイスした。

GPTW「働きがいのある会社」の定義

GPTW「働きがいのある会社」の定義

GPTWによる「働きがいのある会社」の定義。従業員から見た場合と、マネジメントから見た場合の2つの側面があるが、共通するのは「信頼」が重要なキーワードになっている点だ。

“働きがい”をもたらすワークプレイスとは?

徳永所長

日経BPビジョナリー研究所長
徳永太郎

1989年日経BP社に入社。不動産有効活用誌「日経リアルエステート・東京」、建築誌「日経アーキテクチュア」、木造住宅の技術誌「日経ホームビルダー」と不動産・建設関連媒体の編集部を経て、2002年に創刊した「日経不動産マーケット情報」に在籍し、賃貸オフィスビルのマーケット動向、不動産売買の動向などを担当。2007年から同誌編集長を務め2012年10月から現職。

 続いて登壇した日経BPビジョナリー研究所長 徳永太郎は、「働きがいとワークプレイス」と題し、岡元氏が提起した“働きがい”の土台となる従業員とマネジメントの相互信頼を醸成し、チームとして働くことの誇りや連帯感を生み出すオフィス環境のあり方について語った。

 徳永はまず、“働きがい”をもたらすオフィス環境づくりの方向性として、「社内でのコミュニケーションを高める」「職住近接や場所を選ばない働き方を実践する」の2つを提示。

 社内コミュニケーションを誘発する方法としては、「カフェやリラックススペースを設ける、備品置き場を1カ所にするなど、社員が集まりやすい仕掛けを作るのもアリ。また、部署ごとの“壁”を取り払って他部署やほかの社員の動きを感じ取れるように、オフィスレイアウトに工夫を凝らすことも考えたい」とアドバイスした。

 部署間の“壁”を取り払った具体的な事例として徳永が挙げたのは、キユーピーが仙川(東京都調布市)に建設した自社ビルである(下図)。六角形のフロア上に3つの部署の島を三角形に配置し、それぞれの部署がほかの2辺(2つの部署)と必ず接するようにレイアウトした。これによって、隣の部署とも日常的なコミュニケーションが活発になり、連帯感が生まれやすくなるという仕組みだ。

事例:仙川キユーポート(キユーピー自社ビル)

事例:仙川キユーポート(キユーピー自社ビル)

キユーピーが仙川(東京都調布市)に建設した「仙川キユーポート」は、各フロアが六角形で、その中心に3つの部署が各1辺ずつの三角形の島を配置している。これによって隣の部署同士が必ず接点を持つようになり、コミュニケーションが生まれる

 また、職住近接や場所を選ばない働き方を実践するための方法として、徳永は「在宅勤務やコワーキングスペース、サテライトオフィスの活用といったテレワークを推進するほか、オフィスそのものを都心から郊外に移転させて、物理的に従業員の通勤時間を短縮する方法もある」と指摘。

 徳永が都心から郊外への移転を提唱するのは、今後、都心部へのオフィスの集中がさらに進み、交通渋滞や通勤通学時のラッシュなどが深刻化すると、都市機能が麻痺するとの懸念を深める東京都が、都心・副都心から千葉ニュータウンやつくば、柏などの周辺エリアへと都市機能を面的に拡大する「環状メガロポリス」構想を検討しているからだ。

「都心・副都心」からの脱却 「環状メガロポリス」の活用

「都心・副都心」からの脱却 「環状メガロポリス」の活用

東京都の「都市づくりのグランドデザイン」で示された「環状メガロポリス」構想。都市機能を都心・副都心から周辺エリアに広げ、各エリアが競い合いながら新たな価値を創造していく姿を目指している

 徳永は「都市機能が都心・副都心に一極集中する状況では、多様化する価値観への対応やワークライフバランスの実現は困難。今後はそれらに対応すべく、あえて郊外にオフィスを構える企業も増えるのではないか」と述べた。

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