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隈研吾氏の「建築の衣服化」を実現した新素材とは?

 繊維や織物に強い石川県能美市の小松精練が開発した炭素繊維複合材。建物の耐震補強材として使われ、建築のあり方を変える新素材として注目されている。

 「従来の耐震補強は、美学に反するところがある。しかし『ファーボ』では、耐震補強で建物をエレガントに生まれ変わらせることができた。ここまでうまくいくとは思っていませんでした」

 そう語るのは建築家の隈研吾氏。石川県能美市に本社を置くファブリック・メーカー、小松精練の旧本社棟改修プロジェクトで設計を担当し、耐震補強に世界で初めて熱可塑性炭素繊維複合材「カボコーマ(CABKOMA)・ストランドロッド」を採用。1968年に建設された旧本社棟は、先端ファブリックの可能性を引き出すための新たなラボラトリー「ファーボ(fa-bo)」として生まれ変わった。

小松精練の旧本社棟改修プロジェクトで設計を担当した建築家・隈研吾氏。今年9月、東京大学で炭素繊維の最新利用動向を展示・発表するシンポジウムを予定

建物を消したい。「建築の衣服化」を実現するには
新しい素材が必要だ

 隈氏は常々、「これからの建築は材料から見直すべきだ」と語っている。20世紀になって突然、コンクリートがメジャーな建築素材となり、それが永遠に使えるものと多くの人が思っていたが、100年持たせるのも大変な素材だということが分かってきた。そのコンクリートをどう乗り越えていくかが課題だ。

 その一方で、「私は建物を消したいと90年代からずっと言ってきました」と語り、次のように続ける。

 「それは多分、コンクリートで彫刻的につくり上げた大げさな80年代までの建築のあり方を否定したいと思っていたのでしょう。建築は、単に長持ちすればよいのではなく、もっと衣服的なものに変わっていかなければいけない。『建築の衣服化』を実現するには、新しい素材が必要になるわけです」

 そんな時に出合ったのが小松精練の発泡セラミックス基盤材「グリーンビズ」だった。廃棄物を利用して開発した素材で、1000平方メートルで12トン以上の保水力、軽量などの特長がある。

 隈氏は、グリーンビズなら「矛盾すると思っていた『建築を消すこと』と『建築を軽くすること』が両立できる」と考え、自身のプロジェクトで次々と採用。最近では、米国「ポートランド日本庭園」の「Cultural Village」(隈氏監修、2017年4月オープン)の屋上緑化材として採用し、茅葺き屋根風に仕上げた。

 グリーンビズを知った直後、小松精練を訪れた隈氏は、中山賢一会長から「カボコーマ・ストランドロッド」を紹介される。旧本社の耐震改修に使えないかという相談だった。

耐震改修プロジェクトは、
「どこまでエレガントにできるかという挑戦だった」

 「従来の炭素繊維というとゴルフクラブのシャフトのような『棒』という理解でした。それがロールにして持ち運べるし、軽いので、大きな建築にも対応できる。まさに目からウロコ」(隈氏)

 そして旧本社棟の耐震改修プロジェクトは、「どこまでエレガントにできるかという挑戦だった」と振り返る。

建物の屋上から地面へと「カボコーマ・ストランドロッド」が張り巡らされ、耐震補強されて生まれ変わったファブリック・ラボラトリー「ファーボ(fa-bo)」。北陸の冬の風物詩「雪吊り」のようにも見える

 ポイントの一つは、地中にロッドの接合部を埋めたこと。ピンと張った長さ14メートルのロッドは4000本以上。その先端をエポキシ樹脂で接合部に接着し、地中に埋めてすっきりとさせた。

 もう一つは、ロッドの密度。「ロッドを張る間隔を調整してエレガントに見せるのはすごく難しい。今回はオーロラをイメージしましたが、ロッドの太さに助けられ、いい存在感を出せた」

 建物の塗装も工夫した。「少しザラザラしたテクスチャーを与え、そのテクスチャーや色、そしてロッドの色とのバランスを、塗りながら取っていきました」

「カボコーマ・ストランドロッド」は2017年1月、善光寺・経蔵保存改修工事の耐震補強工事でも採用。重要文化財の耐震工法で炭素繊維複合材が用いられたのは初めて〔善光寺・経蔵は宝暦9(1759)年建立。写真提供 善光寺〕

 隈氏は「カボコーマ・ストランドロッド」の可能性についてこう話す。

 「張りっぱなしでも熱で伸び縮みしないのでメンテナンスがいりません。それに木との相性もいい。今までとは全く違った建築の表現ができると思います」

 加賀百万石の城下町として発展した石川県は「繊維王国」といわれる土地柄。その中で小松精練は先端ファブリックを開発し続ける。隈氏は「『建築の衣服化』は大きなトレンド。これからはもっと軽やかな『繊維建築』が出てくるはず。そういう時代に小松精練は主役になれるのではないか」と期待を寄せる。



http://www.komatsuseiren.co.jp/cabkoma/



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