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日経ビジネスONLINE Special 週刊日経ビジネスオンライン SPECIAL日経ビジネスオンライン

日本有数の産業基盤と地域性で進出企業の「志」に応える

明治維新の舞台として知られる山口県は、日本一の工業県でもある。従来の基礎素材型産業、輸送用機械に加えて、近年は環境・エネルギーや医療関連分野の進出が目覚ましい。その産業基盤を活かし、地域活性化に向けて企業誘致を加速する。

 山口県といえば明治維新の長州藩。吉田松陰、高杉晋作、伊藤博文ほか、多くの名だたる人物を輩出した地だ。その歴史の舞台となった萩、下関をはじめ、錦帯橋のかかる岩国、カルスト台地の秋吉台と日本屈指の大鍾乳洞・秋芳洞など、彩り豊かな自然と街並みも全国的に知名度が高い。

 だがその一方で、山口県が日本一の工業県であることはあまり知られていない。

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※タイトルバックの写真は山口県周南市のコンビナート。
全国有数の基礎素材型産業の集積地で、近年は工場夜景のビュースポットとしても人気が高い

「日本一の工業県」産業力の強化で
人口減少に歯止めをかける

 山口県の1事業所当たりの製造品出荷額等は、17年連続全国1位(工業統計調内海沿岸地域は、化学、鉄鋼など重化学工業を中心に石油化学コンビナートが形成されている。西部地域にはセメント・化学・医薬関連工場が立地、東部地域には化学・鉄鋼の企業が集中する。

山口県知事
村岡嗣政
Tsugumasa Muraoka
山口県宇部市出身。1996年東京大学経済学部卒業後、自治省(現総務省)に入省。以降20年近く地方行政に携わり、2014年1月総務省を退官。同年2月に山口県知事に就任した。知事選に出る直前のキャリアは総務省自治財政局財政企画官。当選時には41歳という若さもニュースとなった。

 輸送用機械の製造も盛んで、マツダの防府工場、鉄道車両の日立製作所笠戸事業所、三菱重工業下関造船所などを中心に関連産業が集積。近年は環境・エネルギー分野や医療関連分野に注力し、企業の誘致件数は6年連続で25件を超える。いずれの分野も労働生産性が高く、山口県は製造業の1人当たりの付加価値額も全国1位だ。

 「これには歴史的な背景が大きく影響しています」と村岡嗣政県知事は、県の産業の成り立ちを紐解く。17世紀、既に殖産政策を行っていた長州藩の重要な商品は、米・塩・紙の「防長三白」だった。「江戸時代から暮らしの基礎素材を作っていたのです」(村岡知事)。

 新田・塩田を開拓し、北前船の交易港を整備し、藩外への輸送ルートを発達させ、紙は中山間部で原料の植物を栽培した。長州藩の産業振興は、明治、大正、昭和を経て、今日のものづくりを支える産業基盤につながっている。

 今、その山口県が抱える課題は全国平均より速いペースで進む人口減少、少子高齢化だ。そのための政策の柱の1つとして、県の強みを活かす産業力を強化し、企業誘致を加速して、雇用の確保と地域の活性化を図る。

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工業用水は全国平均の約半額
立地の不安点には「応援団」が助言

 村岡知事が特に挙げる山口県の立地環境が、「交通アクセス」「リスク分散」「工業用水の安定供給」だ。

 県内には2本の高速道路が走り、5つの新幹線の駅がある。空路はソウルへの国際定期便が運航している山口宇部空港と、岩国錦帯橋空港。下関港からは釜山と蘇州へのフェリー便が運航している。首都圏、関西圏、アジア圏へのアクセスに加え、「九州、中国、四国といった広域のエリアをカバーする拠点としても、最適な地理的環境です」(村岡知事)。

 BCPの観点から山口県を選ぶ企業も多い。観測記録が残る1923年以降、震度6弱以上の揺れが一度も発生しておらず、損害保険料率算出機構による地震保険の料率を見ても山口県は最も安い1等地の県だ。そのため近年では、テルモ、小野薬品工業の立地が続いた。

 そして「産業の血液」とも言われる工業用水は、1日に約171万m3という日本一の給水規模を誇る。料金も1m3当たり11.3円と全国平均のほぼ半額。県では浄水設備の設置費用の一部を補助する全国初の制度も設けている。

 もちろん工業用水だけでなく、県の産業団地の取得に際しての80%の補助など、優遇策も全国トップクラスだ。

 また、ソフト面では、村岡知事をトップに県と県内全19市町とが一体となってワンストップで立地を支援する「山口県企業誘致推進連絡協議会」がある。県外には東京営業本部・大阪営業本部にそれぞれ「企業誘致センター」を設置し、東京や大阪に本社を置く企業をサポートするとともに、懇話会を開催して知事自ら立地企業との意見交換を行っている。

 2015年には、立地を検討中の企業の不安や疑問に答えるため、既に県内に進出した企業によるマッチング制度「企業誘致立志応援団」を創設した。同じ業界でなければ分からない専門的な質問も出る。「経験者から率直な話が聞けるのは誘致においてとても有効ですし、ありがたいことに多くの企業が応援団にご協力くださっています」(村岡知事)。実際に、医療、金属加工、自動車、電機など多様な業種による応援団のメンバーからの具体的な助言も参考に、これまで複数の企業が山口県への進出を決めたという。

工業系はじめ豊富な産業人材
2018年には県内初の薬学部も

幕末、長州藩から英国へ密航留学し「長州ファイブ」と呼ばれた5人。日本の近代国家建設において、(左下から時計回りに)井上馨は外交の、遠藤謹助は造幣の、井上勝は鉄道の、伊藤博文は内閣の、山尾庸三は工学の「父」とされる( 所蔵:萩博物館)

 産業人材の育成に力を入れてきた山口県には、工業系の高等専門学校が3つあり、大学も山口大学工学部や山口東京理科大学がある。山口東京理科大学には2018年に県内初の薬学部も開設される。高校や高専の授業を企業がサポートし、大学では長期体験型インターンシップなどを推進して即戦力を養うとともに、県内の企業への関心と地元への愛着につなげ、県内就職に結び付けていく。地域が積極的に人材育成にかかわる体制がしっかりできているのが、山口県の特徴だ。

 来年の2018年は明治改元150年の節目にあたる。「地域で人を育てていくのは山口県の良い伝統だと思っています」。村岡知事は、幕末から明治という日本の近代化の重大な時期に、長州藩は政治家だけでなく、経済人も多く輩出してきたと語る。

 「英国へ密航留学をした『長州ファイブ』の1人で、後に日本の鉄道の父と呼ばれる井上勝をはじめ、日産コンツェルンの鮎川義介、日立銅山の久原房之助。こうした先達の志が、今日の人材育成にも産業にも連綿と引き継がれています。我々はそれを誇りとして、山口県に立地される企業をしっかりサポートします」(村岡知事)

 立地環境、人材、優遇制度、そして「企業誘致立志応援団」に象徴されるサポート体制。明治維新のDNAを受け継ぐ山口県は、現代の企業の「立志」に十分応える特質と利点を備えている。

お問い合わせ
  • 山口県商工労働部企業立地推進課

    〒753-8501 山口県山口市滝町1-1

    TEL:083-933-3145

    FAX:083-933-3178

    URL:http://kigyo-r.pref.yamaguchi.lg.jp/

    メールでのお問い合わせはこちら

  • 山口県東京営業本部 東京企業誘致センター

    TEL:03-3502-3355

  • 山口県大阪営業本部 大阪企業誘致センター

    TEL:06-6341-0755