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「優秀な人財」が評価される佐賀県

抜群の交通利便性や自然災害の少なさが魅力である佐賀県。数々のトップブランド企業が事業を展開しており、その代表格であるトヨタ紡織九州は、第2、第3工場を設立するなど、進出以来、安定成長を続けている。佐賀県に来た企業のビジネスが成長する理由はどこにあるのか。

 来年は明治維新から150年という節目の年を迎える。「薩長土肥」に列された肥前藩(佐賀藩)。第10代藩主鍋島直正の進取の気性とリーダーシップによって、大胆な教育改革による人材育成と最先端の科学技術導入を行い、明治維新の先駆的役割を果たした。

 佐賀藩は、幕末から明治にかけ、西洋の進んだ技術をいち早く取り入れ、鉄製大砲鋳造や蒸気機関製造などの最先端の技術を研究し、日本の「ものづくり」をリード。また、藩校の充実や幕府より4年早く蘭学寮を設置するなど、「ひとづくり」にも積極的に取り組み、その結果、2度の内閣総理大臣を務めた大隈重信や初代司法卿を務めた江藤新平など、人材輩出の面でも近代日本の礎を築いた。

佐賀県を拠点に成長し続ける
代表格のトヨタ紡織九州

トヨタ車のシート製造を手掛ける同社の社名に「紡織」とあるのは、自動織機の発明家であり、トヨタグループの始祖である豊田佐吉が創業した「豊田紡織」の流れをくむためだ

 そして現在でも、「ものづくり」「ひとづくり」の伝統は佐賀県民のDNAに受け継がれている。優秀な人材確保が企業の経営課題とされる中、佐賀県の人財がビジネス成功のカギとなっている。その代表例として挙げられるのがトヨタ紡織九州だ。世界で生産される最高級車「レクサス」のシート生産のうち、約6割はここ、トヨタ紡織九州で作られる。1991年に佐賀県神埼市で創業してから26年。その後第2工場、第3工場と、安定成長を続けている。

 トヨタ紡織九州が佐賀県に拠点を置いた理由・利点について、取締役社長 吉川 靖司氏は、次の3つを挙げる。①整った物流環境 ②優秀な地元人材 ③自治体・地域のサポート体制である。

 まず、物流環境については、九州の北西部にある佐賀県、そして県東部の神埼市の立地はものづくりに適していると言う。自動車のシートは大きいため、運ぶのに労力やコストがかかる。顧客の自動車メーカーへのアクセスがなるべく良く、速く届けられる場所に工場があるのが望ましい。「本社工場から長崎自動車道はすぐ近くなので、東西南北に広がる高速道路網はしっかり活用させていただいています。神埼市は物流の大きな拠点がある鳥栖市にも近く、福岡の北部、南部地域の顧客にジャストインタイムで製品を届けられます。周辺のサプライヤーは国道も使えますし、愛知県からの物流にはJRがあります。シートの資材や材料の本革などは海外からも入荷されます」(吉川氏)。

実直で改善にも意欲的
佐賀県人はものづくり向き

取締役社長 吉川 靖司氏

 次に、トヨタ紡織九州が操業の地を選ぶ上で大切にしたのは地元の人材だ。社の経営理念を、「地域と共に発展していくこと」に置いているからだ。現在、従業員の約9割が通勤圏30分以内の地元に住んでおり、地域密着型の雇用が進んでいる。また、新卒採用者の離職率がこれまでほぼゼロというのも驚きだ。「この地域は大企業が集中する福岡都市圏より、かえって人材確保に適していると感じています。私も神埼に来て1年半ぐらいですが、最初に驚いたのは、従業員の方々が、非常に礼儀正しいことです。教育が良いからなのか、気質なのか…。挨拶もよくしてくれますし、話しかけると、丁寧に答えてくれる。従業員同士の関係がとても友好的なんです。ものづくりには、愚直に決められたことをしっかり行い、改善を重ねるやり方が求められます。決められたことを守り、改善のレスポンスも良いので、佐賀の人はものづくりに向いていると思います」。

 企業立地の理由・利点となったポイントの最後は、自治体や地域からのサポート体制だ。地域と共に発展することを経営理念としているトヨタ紡織九州が、地元から温かいサポートを受けている。その象徴に、同社ハンドボール部「レッドトルネード」がある。もともと神埼市はハンドボールが盛んで、地域の要請もあり、1992年の操業開始と同時にチームが発足。2001年に日本リーグの1部に昇格。2009年に3年ぶり2度目のプレーオフ出場を果たした。2011年には国民体育大会で佐賀県代表として出場し初優勝。日本リーグでの悲願の日本一を目指しているチームだ。

市の職員が応援ウェアを着用
テレビ番組で企業PRも

トヨタ紡織九州ハンドボール部「レッドトルネード」は日本リーグに所属

 神埼市では、職員がレッドトルネードと神埼市とのコラボポロシャツを2015年から着て勤務し、地元チームのPRに一役買っている。その声援に応えるため、チームのメンバーも、地元小学生へのハンドボール教室や植栽活動など、積極的に地域貢献の機会を設けている。本社敷地内にある屋内外のハンドボール場は、チームが練習中は地元のファンが見学に訪れたり、学生や地域に貸し出したりしているそうだ。「2023年には佐賀で国体がありますし、レッドトルネードはさらに注目されます。ハンドボール部を今後も継続するには、当社がしっかり企業力をつけなければなりません。そのためには、働きやすい環境を作り、従業員が誇りを持てるような地域貢献が大切。ビジネスと地域貢献は一体の存在だと思っています」。

 これまでの26年間、トヨタ紡織九州の設立の際から、立地や人材確保などについて、同社は県や神埼市に積極的に相談し、自治体もそれに応じてきた関係がある。同社の100%出資会社でシートカバーの製造・販売をしているTBソーテック九州が2001年に唐津市で操業を開始した際や、同社が今年の8月に工場を拡張した際にも、県や市と相談を重ねたという。「特に今は人材確保の点で、助けていただいています」。県の協力で人材を確保できた例に、県のPR番組『SAGAものスゴ』(サガテレビ)がある。2016年10月にトヨタ紡織九州の事業概要や技術力が番組内で紹介されたところ、今春の定期採用募集でこの番組を見て入社を希望したという学生が応募し、内定に至った経緯もある。

「レッドトルネード」の部員が従業員と共に最寄りの保育園で除草や植栽活動を実施する様子

 昔から、人の営みの歴史を見るのが好きだという吉川氏。自然災害が少ないため、トヨタ紡織グループの生産リスクが分散できることはもちろん、食の環境も豊か。子育てがしやすく、従業員の生活が安定していることが企業としては安心材料という。

 そして見据えるのが4年先の創業30周年だ。吉川氏はグループでダントツのナンバーワンを目指す。「そうなれるポテンシャルが佐賀県に拠点を置く当社にはあると思っています。30周年に向けて、地域と一緒にもっと成長する機会を作りたい」。トヨタ紡織九州はさらに深く、地域に根を張ろうとしている。

Company Profile

トヨタ紡織九州

佐賀県神埼市神埼町鶴1600番地
0952-52-7111(代)

自動車用シート、ドアトリム、エアクリーナー部品等製造。従業員1135名(2017年3月)、売上高772億円(2016年度)。親会社はトヨタ紡織(100%)。1991年8 月にアラコ九州(当時社名)を佐賀県神埼市に設立。1992年8月に本社工場操業開始。2003年8月に本社第2工場完成。2005年4月にトヨタ紡織九州に社名変更。 2015年4月に本社第3工場完成。シートカバー製造の100%子会社TBソーテック九州(唐津市相知町)が2001年に操業開始、2017年8月に工場を拡張

お問い合わせ
  • 佐賀県産業労働部企業立地課

    TEL:0120-218-385/FAX:0952-25-7384

    URL:http://saga.kigyouricchi.jp/

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