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女性の両立支援を支える!企業主導型保育事業の「共同利用」という選択肢

 人口の減少によってマーケットが縮小するだけでなく、人材まで不足している昨今。多様な人材や働き方を認めることで、生産性を上げて経済を活性化する「働き方改革」を成功させるには、様々な事情を抱える人たちの「受け皿」となるインフラ整備が必要不可欠だ。

ニチイ学館
保育事業部 次長
宮田啓太郎 氏

 早急に解決すべき問題として必要とされている受け皿は、保育所だろう。というのも20代後半から30代にかけて女性の有業率が男性に比べて低いのは、主に出産や育児が原因だからだ。厚生労働省によると、待機児童は全国で約2万6000人。出生率を上げる対策も大切だが、喫緊の労働力不足を解消するためには女性への社会復帰支援が必至。つまり、保育所というインフラが不可欠なのだ。

 「待機児童の9割が0~2歳児です。育休中の女性が0歳児を認可保育園に入れようとして、かなわなかったとしましょう。そうなると会社の育休期間が満了したり、育休を延長できなくなったりして、結局復職できない状況が生じてしまいます。その結果として、優秀な女性社員が退職してしまうことは、企業にとって大きな損失のはずです」

 そう語るのはニチイ学館の保育事業部・宮田啓太郎次長だ。ニチイ学館は介護事業や医療事業とともに、15年前から保育事業を展開。全国各地に約200拠点の保育園を運営している。

リスク要因の極めて少ない「企業主導型保育所」というスタイル

 「保育園の受け皿は年々増えていますが、それを上回るスピードで申込者が増加しています。そこで、働き方に応じた多様で柔軟な保育サービスを提供できる“企業主導型保育事業”が注目を集めているのです」(宮田氏)

 企業主導型保育事業は、仕事と子育ての両立に資することを目的に実施されている事業だ。言うなれば「企業主導の保育所」で、宮田氏は「①企業が主体となって運営し、地域住民も利用可能、②設置や利用について市区町村の関与なく行える、③認可保育園並みの保育料で利用できる、④各人のニーズに応じて柔軟なサービスを提供、⑤複数法人での共同利用ができる、といった特徴があります」と解説する。ニチイ学館の企業主導型保育所は現在48カ所、来年度には47都道府県70カ所に展開するという。

 事業所近隣に企業が契約する保育所があれば女性従業員の出産・育児に伴う離職を予防でき、復職者も増えることは想像に難くない。さらに求人で「保育所完備」とうたえるので、育児世代の応募も増加を見込める。一見、「メリットだらけ」だが、企業にとっては、定員規模をどうすればいいか、イニシャルコストやランニングコストはどうすればいいのか、運営開始後の助成金の申請や監査の対応をどうするかなどなど、少なからずハードルがあるのもまた事実だ。

 「そこで当社が推奨するのが、共同利用という選択肢です。従来型の事業所内保育所は一社が設置して、運営・利用するわけですが、そうなるとその企業は園運営のリスクやイニシャルコストを背負うことになります。そうではなく複数企業で共同利用し、さらに地域住民枠も設けることで、リスクを分散させることができる。従来型の自社設置と比較して、共同利用という選択肢は導入ハードルの低減につながります。弊社では各保育所の共同利用企業を募集しており、各社様のニーズに合わせて、初期コスト0円のプランもご用意しております」

 実際にニチイ学館は多くの有力企業と取り組みを始めている。例えば、あるメガバンクとは、ニチイ学館の保育事業の拡大と銀行のスペース活用、地域貢献、福利厚生に資する取組みとして、共同で企業主導型保育事業を実施するという。銀行の一角をニチイ学館へ賃貸し、ニチイ学館が保育所を設置・運営するという。そんな取り組みの具体例を、以下に紹介しよう。

従来は運営のリスクやイニシャルコストなどを理由に、多くの企業が消極的だった「企業主導型保育所」。共同運営という形態をとることで前向きになっている企業も多い。
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「子どもを預けられる」ことが優秀な人材確保に直結

 日本生命保険相互会社は、2017年4月にニチイ学館と企業主導型保育所の全国展開を開始した。

 「日本生命では今年度、ニチイ学館と共同で、企業主導型保育所の展開を進めています。設置している保育所では従業員枠と地域枠を設けており、弊社は従業員枠の一部を購入して従業員に提供しています。弊社が購入している従業員枠は、場所によって自在に設定しており、大阪にある本店事業所のすぐ近くの保育所などは、多くの枠を購入しています。もちろん弊社以外の一般企業の従業員や地域住民も利用できます」

 こう語るのは、同社の人材開発部ダイバーシティ推進部長の浜口知実氏。この仕組みは保育事業者にとっては事業を安定化できるメリットがあり、また企業にとっては必要枠を購入しているので定員割れリスクを抱えにくくなる長所がある。もちろん保護者となる従業員には、認可保育園並の保育料で入所できるメリットが生まれる。

日本生命
人材開発部ダイバーシティ推進部長
浜口知実 氏

 「スタートして半年ですが、早くも効果を実感しています。弊社では保険の営業の女性を採用しているのですが、中途採用で入社するスタッフには育児層も多い。『子供を預ける先があるなら』と、入社の意思を固めていただく方も出てきています。人手不足のなか、優秀な人材の確保につながっています」(浜口氏)

 また、育児中の従業員が認可保育園に入るまでの“つなぎ”として活用することで、復帰の時期を計画的に定めることができるというメリットも実感しているそうだ。

 「共同利用というスキームは、利用する企業側はイニシャルコストの負担がなく、必要数を考慮した枠数の購入が可能なため低コストで運営できます。当社のような全都道府県に事業所を展開する企業として、ブランドイメージが高くなっていることも実感しています」

 利用者からは「勤務先のすぐ側なので何かあったらすぐに駆けつけることができる」「19時まで追加料金がないのでフルタイム勤務ができる(※保育園により異なる)」「小規模なので保育士さんの目が行き届いて、非常に丁寧な保育園」といった好意的な声が多く寄せられているという。

 このようにメリットは大きいが、新たな取り組みということで、不安を持つ人も少なくない。特に多い疑問は「実際に子どもと一緒に通勤できるの?」というもの。これについてニチイ学館の宮田氏は、こう語る。

 「都心の場合、最も通勤ラッシュの時間帯は難しいところがあるかもしれません。ただ、導入に積極的な企業はフレックスや時差通勤などの制度と併用することで運営しております」

 ちなみに、企業主導型保育所は「認可外保育施設」に位置づけられるものの、従来のいわゆる「無認可保育園」とは違うことを強調しておくべきだろう。自治体の認可は受けていないが、内閣府および公益財団法人児童育成協会が定めた基準に基づいて運営しているため、国から保育所の運営費や整備費の助成金も出る。ニチイ学館が展開する企業主導型保育所は今後、仕事と子育ての両立を支える重要なインフラとして機能していきそうだ。

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