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日経ビジネスONLINE Special 週刊日経ビジネスオンライン SPECIAL日経ビジネスオンライン

新たな価値を創出するためのワークスタイル変革&コミュニケーション改革

 国を挙げて叫ばれている「働き方改革」。その実態は「長時間労働」「在宅勤務」ばかりがクローズアップされ、本質を見誤っているケースが少なくない。では「本質」とは何か。それは「従業員の幸せ」と「生産性向上」であり、その先にある「新しい価値の創出」だろう。そこで企業に求められるのは、経営主導で社内の各部門が連携し、勤務体系や人事評価、組織、業務フロー、システムに至るまで、多様な観点から改革に取り組むことだ。この日、登壇した講演者たちは業務効率化やモチベーション向上、チームワーク強化、テレワークなどの視点から、改革を実現するための最新ソリューションを提案してくれた。

日時:2017年10月31日(火) 会場:赤坂インターシティコンファレンス

 かつて流行った枕詞に、「間違いだらけの…」というものがある。昨今、“国民的プロジェクト”と化している感のある「働き方改革」こそ、この枕詞が相応しい。「間違い」が言い過ぎだとしたら、「誤解だらけ」でもいいだろう――。そう感じているビジネスパーソンは、少なくないはずだ。

 判で押したかのように「残業を減らせ」「~時以降の勤務は認めない」などと「規制」だけを押しつけられ、施策については「各自で工夫してやってほしい」――。そう言われ、途方に暮れた経験はないだろうか。こうした例は、本質を見誤った「働かせ方改革」に過ぎない。働き方改革が目指すところは従業員の幸せや生産性向上であり、その先にある新しい価値の創出だ。

 いま、私たちが必要としているのは半ば目的と化してしまった感のある、働き方改革という名の“ノルマ”ではなく、より良い働き方のための具体的な方法論、ソリューションのはず――。

 日経ビジネスオンラインではさる10月31日、東京・赤坂で「経営課題解決シンポジウム Next Working Style Day 新たな価値を創出するためのワークスタイル変革」と題したセミナーを開催した。A、B2会場に分かれ11講演が行われたこのセミナーでは、「業務効率化」「モチベーション向上」「チームワークの強化」「安全なテレワーク」といった視点から、働き方改革を成功させるためのソリューションが提案された。ここではそんな、数々のプレゼンテーションをダイジェストで紹介する。

「AIに仕事が奪われる時代」の到来と働き方改革

 「近い将来、 人工知能(AI)に人類の仕事がどんどん奪われていく。その一方で働き方改革が進むことで今後、さらに困難な課題が立ち上がることになる――」

 開演早々、非常に重い問題提起をしたのはA会場の先陣を切った、百年コンサルティングの代表取締役、鈴木貴博氏。「『仕事消滅・前夜』AI時代の働き方」と題した講演では、いままさに進行している働き方改革における問題点と、AIの進化に伴う仕事の「消滅」が密接に関連していることを示した。

百年コンサルティング
代表取締役
鈴木貴博 氏

 メガバンクでリストラの嵐が吹き荒れる――。今年、報道された大手都市銀行グループでの人員削減計画は、AIの進化による「仕事消滅」の“予告編”のようなものかもしれない。専門性の高い仕事から、次々に奪われていく。そうしてホワイトカラーの仕事が次々にAIに取って代わられた結果、最後に残るのは「肉体労働」なのだという。

 そして興味深いことに、鈴木氏によると現在、働き方改革のなかで叫ばれている「過重労働の解消」は世界的な流れの中では実現に向かいつつあるという。スマホとAIの登場で、誰もがレベルの高い仕事をこなせるようになっているためだ。

 こうした「かつてないほどの生産性で働く時代」の到来が、何をもたらすのか。それは、組織では階層が上に行くほど「現場」がどれだけの生産性で働けているのか、それが合理性のあるものなのかなどが分からなくなっていくというある種の“矛盾”だ。そして鈴木さんによるとこの問題は今後、加速していくという。

「働きやすさ」こそが「生産性」を生む――

 いま、まさに実を結びつつある「多様性への取り組み」。B会場のオープニングはそんな、大和ハウス工業のプレゼンテーションだった。

 同社人事部の山下裕氏によると、同社はこの10年で女性社員数が倍増。営業職にいたっては、6倍という飛躍的な伸びを記録した。勤続年数も大幅に伸ばしているという。そんな大和ハウス工業では現在、自ら掲げた目標である、「3年後に女性管理職2倍増」を射程に捉えている。

大和ハウス工業
人事部・次長
シェアードサービスセンター長山下裕 氏

 「もともとは『3K業界』というイメージも手伝って、女性が極端に少ない業界だった」と山下さんが振り返る同社がなぜ、短期間に大きく変われたのか。それは「増やす(採用拡大)」「続ける(両立支援)」「活かす(能力開発)」の3本柱での取り組みの成果だ。「続ける」「増やす」が功を奏したことで、3本柱がうまく回転。それが現在の結果につながっているといえるだろう。

 例えば開発部門であれば、産休・育休からの復帰後も「配置転換」ではなく、「お母さん目線」での商品開発に取り組ませるなど同社ならではの「働き方改革」は、新たなヒット商品を生むという副産物を生みつつ、女性社員の定着という狙い通りの成果を上げている。

 女性活躍推進だけではない。ここ数年の同社における環境整備と生産性の向上は、目覚ましい成果を上げている。時間外労働3割減、有給休暇取得率3倍増――。これらは職場およびパソコンの「ロックアウト」(定められた時間以降の労働やパソコン使用を禁ずるもの)、残業の多い部署への「イエローカード/レッドカード」発行による警告、計画年休制度といった数々の取り組みの結果だ。

 格段に「働きやすく」なった反面、生産性が1.2倍に成長。これが大和ハウス工業の働き方改革の、「途中経過」だ。

「大人の8割が『40歳以上』」の時代をどう生きるか

 2020年に大人、つまり20歳以上の10人に8人が「40歳以上」になる――。そんな時代の女性活用をどう考えるか。それが健康社会学者、河合薫氏の講演テーマだ。

 少子高齢化時代にあって若い女性たちは、出産への重圧を背負わされつつも、「活躍」を期待されるという状況にある。河合氏はこれを「夢のようなお話」と喝破する。

健康社会学者(Ph. D)
河合薫 氏

 「出産、育休、産休を充実させることも当然重要だが、3年後に50歳以上の女性たちが半数以上に増えるという現実を踏まえたうえで、いかに生き生きと元気で働いてもらって会社の戦力になってもらうのか。そのためには管理職、リーダーという立場に女性を登用するということだけを考えていたのではダメ。むしろ役職につかない女性たちに、いかに活躍してもらえるかが重要」(河合氏)

 では、どうすればいいか。河合氏は健康社会学者としての観点から、女性管理職登用の数値目標である「30%」について言及した。まず、この数値が達成されることでようやく、いわゆる「女性に優しい職場」になる。そして35%前後になると、女性としてのプラス面が生きてくるのだという。「女性たちが積極的に意見を言うようになる一方で、女性を認める男性が増えてくる」という状態だ。そして男女比が6:4になってはじめて、バランスが均衡する。つまり、真の女性活用を進めるためには、職場の男女比をこの比率にすることがベストなのだ。

 そう考えると、女性リーダーが6.6%というのは理想にはほど遠い状態だ。しかし河合氏は「チーム単位で見ると、『男女比6対4』の職場はけっこうあると思います。この、バランスが均衡している状況下で働く女性たちのモチベーションをいかに高めていくか。それが真の女性活躍を考えるうえで、実は非常に大切です」と語った。

働き方改革におけるテレワークは「時代の必然」

 「ワークライフバランスは、人の生き方。ダイバーシティは、社会のあり方。テレワークは、これらを実現する働き方」

 ワイズスタッフ、テレワークマネジメントという2社の代表を務める田澤由利氏は、現在の働き方改革におけるテレワークを、こう位置づける。そしていま、テレワークは「時代の必然」になりつつあるというのが、田澤さんの考えだ。

テレワークマネジメント
代表取締役
田澤由利 氏

 日本の労働市場には、「労働力不足」「東京集中」「(育児や介護などでフルタイムの仕事が難しい)制約社員」という課題がある。これに対し国は、経済成長を目的に「働き方改革」に取り組んでいる。「でも、みなさん『働き方改革』イコール『長時間労働の是正』と思っていませんか?」と田澤氏は会場に問いかける。

 働き方改革において、企業の生産性を高めるには「時間あたりの生産性向上」「制約社員の労働参加率向上」「繁閑対応体制の構築」が必要だというのが田澤氏の主張だ。そして、これらの課題に対応できる有力なソリューションの1つが、テレワークなのだと語る。

 田澤氏は企業におけるテレワーク導入状況が右肩上がりであること、成功事例などを紹介したうえで「まだまだ課題は多い」と振り返った。そのうえで、今後のテレワークの「あるべき姿」を提案。現在、テレワークの主流は「仕事切り分け型」と言われる資料作成や翻訳、データ分析など比較的、「持ち出しやすい」業務に限って行われているものだ。田澤氏はこれに対して「業務改革型」というスタイルを提案。クラウドの活用で「いつでもどこでも、いつもの仕事ができる」のが、目指すべきテレワークの姿だと語った。

 そしてその事例として田澤氏が代表を務めるワイズスタッフとテレワークマネジメントの働き方を紹介。バーチャルなスペースに設けられた「オフィス」で、日本中に「散らばって」勤務しているテレワーカーがリアルタイムで意思疎通をしながら働いている状況の「実況中継」には会場からも感嘆の声が漏れた。

「異質の存在」を面白がれるか否かで改革の成否は決まる?

世代・トレンド評論家
牛窪恵 氏

 セミナーの最後は特別対談。世代・トレンド評論家の牛窪恵氏とクロスリバー代表の越川慎司氏のトークがAB両会場を沸かせた。

 両者によるセッションは冒頭から、この日の全講演を総括するようなコメントが飛び交った。

 「働き方改革が成功するには、『働き方改革を目指さないこと』が重要。働き方改革は手段に過ぎない。目的は企業が長期的に成長する(利益を出す)。一方で社員は働きがいを感じられることを含めて幸せになること」(越川氏)

 「基本的に今後、日本で働く49%の人はAIに仕事を奪われる。まずは役割分担、つまりAIができることと人間ができることを切り分けるとか、『AIができることを人間がやる必要はない』と割り切ることが大事」(牛窪氏)

クロスリバー
代表取締役CEO
越川慎司 氏

 そのうえで両者は「世代」について言及。現在の「会社社会」は少なくとも4つの、異なる価値観を持つ世代が同居しているという。越川氏は「職場内に少なくとも三世代が混在されている状況下では、特定の価値観の人だけで仕事をするのには最早限界がある。イノベーションを起このが働き方改革の目的の1つだとすると、多様な価値観と多様な世代が共存するなかでいかに企業文化と社員意識を変えていくか」と問題を提起。

 これに対し、牛窪氏は「1つは、異質な物事を面白がれるかどうかにかかっている」と指摘。最初は多少、軋轢があっても相乗効果でいろいろなことが言い合えるようになることから、新しい何かが生まれる。これぞダイバーシティ――。そのためにも「習うより慣れろ」の精神が重要。行動に移せるか否か。それこそが鍵なのだ。

 「今日ご参加のみなさんは行動を起こす人でしょうか。それとも行動を起こさない人でしょうか」。そんな越川氏の問いかけで、セミナーは幕を閉じた。