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岐阜の城下町「郡上八幡」でテレワークしてみました。

 「一億総活躍社会」実現に向けた取り組みとして、昨今注目を集めている「働き方改革」。「20時消灯」など、長時間労働の是正に向けて動き出した企業はあるが、単純に時短すればいいという話ではないだろう。厚生労働省のホームページに「女性も男性も、高齢者も若者も、障害や難病のある方も、一人ひとりのニーズにあった、納得のいく働き方を実現するため」と明記されているように、必要に応じて「多様な働き方」が推進されるべきだ。

ブイキューブ
マーケティング本部 本部長
佐藤岳 氏

 そんな多様な働き方のひとつに、「テレワーク」がある。情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を意味し、子育てや介護の不安を抱える人たちの新たな働き方として注目されている。ただ、現実問題として採用に踏み切れない企業は少なくない。「会社以外の場所で集中できるか」「コミュニケーションはとれるのか」「きちんと仕事をしているか評価できない」などが主な心理的“ブレーキ”だ。

 そんなテレワークにまつわる問題解決を試みているのが、株式会社ブイキューブである。「テレワークの課題となっているポイントは“見えない”という点。人間の知覚のなかで視覚が最も重要視されているように、見えないことによる不安や不満が最大の課題と当社はとらえています。その課題を解消するために、ウェブ会議やテレビ会議といったサービスに長年取り組んでいます」と語るのは、同社マーケティング本部・佐藤岳本部長。

 ブイキューブの取り組みは、製品の提供に留まらない。自分たちがユーザーとして製品の使用感や課題を肌で感じて、サービスを日々改良しているのだ。昨年、同社が総務省の「テレワーク先駆者百選・総務大臣賞」に選出されたのも、そういった不断な努力によるところが大きいといえよう。

部下からの相談、営業同行…「上司の仕事」も問題なくできる

 そんなブイキューブは今年、「上級管理職」がテレワークするという試みを行った。実施したのは前出の佐藤氏で、今年2月から6月まで、東京から遠く離れた岐阜県・郡上市でテレワークしたという。

 「古民家を借りて、そこに住みながら、紡績工場をリノベーションしたシェアオフィス『HUB GUJO』に徒歩で通いました。シェアオフィスの自分のテーブルには3台のパソコンが置いており、1台は中目黒の本社とのテレビ会議が常時接続されてあります。私の一日は、そのテレビ会議システムをオンにして始まります。中目黒の本社メンバーも出勤したらテレビ会議の電源を入れるので、双方で朝の挨拶や雑談をしながら仕事をスタートさせます」

佐藤氏はテレワークの結果、通勤などの移動時間が大幅に削減できただけでなく、成立した商談金額が2.6倍になるなど成果にも直結したという。
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 仕事中はずっとテレビ会議が接続されているため、本社の様子がモニターを通じて手に取るようにわかる。

 「相手が忙しくなさそうであれば、マイクのスイッチを入れて『ちょっと今いいですか』と話しかけて、相談する。相手も条件は同じです。実際には300km離れていますが、ちょっと顔を上げればお互いの様子がわかります」

 たしかにこのシステムを使えば、一般社員の仕事は成り立つかもしれない。ただ、気になるのは「管理職」としての仕事が回るのかという点だ。

 「まったく問題ありませんでした。例えば当社は月曜朝9時から経営会議を行っていますが、テレビ会議で参加しました。その他の部門間のミーティングや個別ミーティングもウェブ会議で対応できます」

 取引先や顧客との打ち合わせに対しては、「2つの方法」で対処した。

 「当社の会議室にお越しいただいたお客様には、テレビ会議で対応します。もうひとつは、当社の営業マンが営業先にタブレットを持参して、そこから会議に参加する『遠隔同行』という方法があります。その場にいなくても、お客様や取引先と打ち合わせすることを日常的にやっていました」

 採用面接においても、応募者の都合の良い時間に合わせてウェブ会議をするため、問題はなかったそうだ。

 佐藤氏は実際にテレワークしたことで、通勤時間の短縮以外に気付いたメリットが少なくないと語る。

 「私の場合、一日に8回ほど会議に参加します。東京の本社にいるときは、自分のデスクから会議室までの往復で、1回に5分ほどかかる。8回会議に参加したら、一日に40分近く社内をうろうろしていることになります。しかしテレワークをしていれば会議直前まで仕事をして、始まったらオンライン上の会議室に入ればいい。それはとても楽で効率的でした」

 テレワークした期間を含めた第3四半期に佐藤氏が創出した商談金額は、前年比2.6倍になっている。「テレワークによって業績が上がった」と言っても過言ではないだろう。

人事制度改革で「いつでもどこでも働ける職場」を実現

ブイキューブ
管理本部 人事グループマネージャー
今村亮 氏

 こういった試みは、ブイキューブの人事制度を改定するきっかけにもなった。同社の管理本部人事グループマネージャー今村亮氏が解説する。

 「弊社にはもともと、テレワークをはじめとする多様な働き方に対しては比較的寛容な文化があります。ですからオフィスへの通勤とともに、週1回程度はテレワークしてもいいといった“緩い”規定で運用されてきました。ただ、今後のことを考えたとき、はたしてオフィスに出勤するのが当たり前なのか、よりワークスタイル・ライフスタイルに沿った働き方を選ぶ視点が必要なのではないかということで、自分らしいワークスタイルの選択ができるプラットフォーム作りへと移行しようと考えたのです」

 そうして新たに作られたブイキューブの新しいワークスタイルは「orange」と名付けられた。10月から始まったこの人事制度は、「いつでもどこでも働ける制度」とシンプルだが、奥深い。

 「まず“いつでも”は、スーパーフレックス制度を導入して、6~21時の間で自由に働ける制度を設けました。コアタイムを設けず、例えば、中断して働くこともできます。次に“どこでも”は、場所や回数の制限なしでテレワークできるという規定に変更しました」

 これによって、例えば、育児や介護を抱えた人が朝はオフィス勤務し、昼過ぎからは在宅で仕事をすることが可能に。また子育て世代が地方に移住して、オフィス勤務することなく働くことも可能となっている。

 「制度作りでポイントとなったのは、しなやかさ(フレキシビリティ)と自律性(オートノミー)です。働き方の選択性を高めるには、自由と規律のバランスが必要であると同時に、個人と組織がそれぞれどうあるべきかを考え、対話していく風土が必要でした。会社が上から押し付けるのではなく、従業員が自律性を持って自らの働き方を確立し、自発的にルールを作るわけです」

 詳しい改定のポイントは、11月29日に公開された同社Webセミナーにもまとめられている。

 ブイキューブでは今後、副社長や代表取締役といった上級管理職もテレワークを実践していくという。

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